「技術者として満足出来る」ということ

ある人の日記のコメントのために。

いろんな問題を混ぜこぜにすると面倒なので、まずは「技術者としての満足」という点で。なぜなら、「会社で働く満足」を求めるためには、「職業人としての満足」がない限り、「待遇の満足」ということはないと思うからだ。

もちろん前にも書いたように、「上司に認めてもらえないエンジニアは“社内”を捨てOSSに行く」ということを否定するわけではないが、それは話を無用に複雑化するので、ここでは置いておく。

極端な例を持ち出せばすぐわかると思う。「たいていの人がやりたくない度が高い仕事」ってのは、それなりに給料がいい。貸金の取り立てとかガンガンやれると、いい給料らしい。あるいは大企業に勤めている人なら、「管理職」になれば給料がいい。つまり、そういったことをやれば「待遇の満足」だけは得られる(*1)。じゃあ、「技術者」がそれで「会社で働く満足」が得られるかと言えばそうじゃない。もちろん、そんな仕事が合った人はそれでいいし、そういった転換ができるスキルも大事だが、それは今回の話とは別なのでまた別の機会に。ここでは単純化して「技術者」が技術者として満足することが出来るかという話をする。

「生活に満足の出来る仕事と報酬があればいい」「数ある職業の中からたまたま技術者を選んだ」という人も、今回は除外。これも考えると話がややこしくなる。この辺の人の話も、機会があればまたいつか。

ということで、ここでは

「技術者」として働きたい「技術者」のための満足

ということについて考えたいと思う。まぁいくつか文字列を変換すれば、他の職業にも使えるかも知れないが、それについてはあまり私の方からは考慮しないで「技術者」として考えてみたい。

何が満足につながるかと考える時に、例によって3つ要点を先に挙げると、

  • 仕事の内容
  • 職場環境
  • 成果物や評価

あたりが、「満足」に関係が深いのではないかと思う。

まず「仕事の内容」だが、「技術者としての満足」を考えると、仕事はちょっとチャレンジングなくらいがいい。腕の立つ人なら

ふっ。この仕事、他の奴には出来ないぜ

なんて思いながらやるのは気分いいだろう。そうでない人でも、「スキルアップ」につながる仕事は嬉しいはずだ。「いや、楽なのが一番です」という人は、この世界に向いてないと思うから、転職を考えた方がいい。多少苦しくても、それが楽しみにつながると思えれば、そんなに苦でないと思う人はガンガン行くべきだ。まぁそれをあまり利用されても困るのだが、そこのところは今回はとりあえず忘れておく。

「ちょっとチャレンジング」じゃない仕事だと、何となく退屈する。そんな時は「給料のための仕事」と割り切ってみるのもスキルのうちなんだが、本音としてはもっと「面白い」仕事がしたくなるし、それはたいていチャレンジングだ。てか、私個人は「チャレンジングじゃないけど面白い仕事」なんてのに遭遇したことがない。まぁそれは私が「面白い」の要件の中に「チャレンジング」を入れてるからかも知れないが。

「職場環境」ももちろん大事だ。いい仲間、いい上司。あるいはいい顧客。これも本当は多少「チャレンジング」くらいな方が身になるのかも知れない(私は客がDQNだと燃える)が、「技術者の仕事」をベースに考えると「チャレンジング」なのは勘弁だ。

その時に大事なのは、

周囲との温度差がない

ことではないかと思う。自分ばかりが頑張ってるのでは、孤独感にさいなまれる。また、それでいい成果が出ていたとしても、仕事の客観的評価はそのチームに与えられるものだから、「頑張った」ことの評価がされにくい(頑張った人だけが評価されるわけではない)。また、無駄に頑張って倒れられても困るから、「お前休め」と言われたりもする。言われた方は「せっかく頑張ってるのにぃ」とモチベーション下げてしまうことだってある。

もちろん「このまま行くとデスマよーーー」な時に誰もが楽観的になってしまっていたら、「せめて自分が頑張って」とか思ったりこともあるだろうが、たいていそれは空回りだ。逆に頑張り過ぎて自分が倒れ、その結果みんなに迷惑をかけないとも限らない。

その時、問題意識の共有が出来ていれば、温度差は減るかも知れない。そうすれば、自分だけ頑張る必要もなくなる。逆に自分ばかり熱ければ、自分ばかりに負荷がかかることにしかならない。よく「頑張ってるのに不遇だ」という人は、そういったことへの考慮が欠けているのではないかと思う。オレモナー。

そして良い成果物、良い結果、良い評価。

「別に評価なんていらないよ」と言う人もいるのだが(待遇に関係なければ私はかなりそうだ)、そんな人であっても自分の成果物が他人のプラスになることを願わないことはないだろう。今はあるかどうか知らないが、「予算消化のためのプロジェクト」とかってのは、いくらチャレンジングで良いチームでやっても、満足度は低い。直接的に自分が褒められるという評価はいらなくても、利用者の喜ぶ姿は想像したいだろうし、その「喜んだ姿」は評価以外の何物でもない。

そういった諸々の快感があるからこそ、「仕事で満足していれば、待遇は二の次でいい」という気持ちにもなるものだ。金にならないOSSでの満足とか、「スカンクワーク」での満足とかってのは、まさしくそういったものだ。

とこれは当然のことを整理しただけに過ぎないのだけど、こういったことは冷静な時に考えないと、ついうっかり忘れてしまう。油断していると考えるべき対象がどんどん増えたり、肝心なことを落としたりする。また、例によって「現実」は全てを満たしたものはあまりないから、優先度つけたりバランス考えたりしなきゃいけないけれど、「理想」が提示出来なきゃ「良い現実」は出て来ない。

で、これらのことを一言でまとめてしまったら、

技術者として完全燃焼

出来ることではないかと思う(*2)。そう考えたら、「待遇」というものの価値も見えて来る。「安心して仕事出来る待遇」は最低でも必要だということね。

「技術者」なんてゆー働きのわりには経済的にあまり恵まれない仕事を選んだという時点で、「報酬よりも仕事の満足」というのが心の底にはあるわけで、そういった人が一番不満に思うことを一言で言えば、「もっと頑張りたいのに頑張らせてくれない」ということなんじゃないかと思う。

頑張ってしまうのは技術者の性

なのだ。いや、本音を言っちゃえば、私だって「待遇なんてどーでもいーから、いい仕事をしたい」のだ。

もちろん、「企業人としての技術者」を考えた時には、「かけがえのない仕事」をしているかどうかが重要なのは既に述べた通り。でも、実は「技術者としての満足」はそれだけじゃない。いくら「かけがえのない仕事」でも、「雑用」では満足出来ない。もちろん「それが身の丈」と思う技術者ってのはそれはそれで尊いと思いはするけど、技術者で「身の丈」を意識してる人って、「向上心のなさ」の言い訳だったりすることも多いから要注意だ。やっぱり「上」を目指したい。

「上を目指す」と言っても、「満足出来なきゃどんどん転職すればいい」とは私は思わない。それよりも前にやれることはいっぱいあるし、「何で満足するか」ということに絶対的なものはない。バランスの取り方だって大事だ。だけど、労働をしているのは長い時間なのだ。そこで満足出来ることを目指さないことには、それ「以外の満足」がいくらあっても、

QOLが低い

んじゃないかと思う。

PS.

*1 「無茶な組合せだ」的なつっこみがあったけど、「技術者がやりたがらないけど、普通の技術者よりは報酬はいい」という意味では大差ない。

PS.2

*2 小飼さんの

私自信が知らずに取っていた燃えつき対策

も併せて読むといいと思う。ただ、勘違いして欲しくないのは、小飼さんの話は前提として「完全燃焼」がある。「完全燃焼」しないでくすぶり続ければ、燃え尽きることはないのは確かだが、それではあっちのエントリの意味がない。

「技術者として満足出来る」ということ” への1件のコメント

  1. 酔っ払い気味です。という言い訳をしつつ、ちょっと書いてみる。
    私は、1技術者です。

    よく人事面談で「あなたの5年後どうなりたいですか?キャリアビジョン
    を持っていますか?」だとか、言われることがあるのだけれども、
    思うにこの面談で、「同じ職場の、何々さんのようになりたい!」
    といえるような、職場であればそもそも人事はそんな質問はしない
    のだろうと思う。その会社で、5年後の年齢の人が、どういう仕事を
    しててどういう待遇を受けているかを見れば、自分のその会社での
    将来も容易に想像がつく。

    成果主義というのが、経費削減にしかなっていないという現実を
    理解せずに「俺、もっと成果主義を徹底すべきだと思いますよ!」
    という若者。外注管理のみに精を出す会社員。どこか根本がおか
    しいと思う。

    ビジネススキルは重要だと思う。だけれどもビジネススキルが
    仕事である人は技術者の俺が、思いも及ばないようなビジネス
    スキルを持っていてしかるべきだ(経営者も含め)。

    実際の社内の企画はどうか。技術者でももっとましな提案ができる
    ような内容しか提案できない。自称技術者の技術レベルはヒドイもんだし。
    なにかがおかしい。ジェネラリストを育てようとする風潮がおかしいのか?

    ビジネスのスペシャリスト、技術のスペシャリストの両輪が
    会社にいて、若造がおよびもつかないような蓄積をその人たちが
    つみあげていれば、5年後の将来の心配なぞする必要ないだろう。

    ビジネスも技術も両方ともスペシャリストになれるというのは、
    ごく一部の人にしか出来ないのではないかと私は思う。だから、
    会社としては両方のスペシャリストを育てつつ、それぞれの
    分野のスペシャリストは優遇し、時には交流させる。そういうのが
    理想なんじゃないかなと思ったりします。

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