下手な小説よりも

「ケータイ小説」が云々という話をよく見掛ける。

「ケータイ小説」がどんなものか、読んだこともないのに批評してもナンセンスだし、そうは思いつつも読む気もしないというところでアレだというのも確かだろう。

とは言え、あれこれ批評する前に、文学の新しい潮流というのは、それ以前の文学界からすると異端であり、くだらないものと評価されて来たという歴史くらいは知っておいた方がいいと思う。また、それ自体が「それだけ」で終わるものであっても、それの与える影響が大きかったものも過去にはあるので、今は「良い悪い」よりは「好き嫌い」で評価しておいた方が無難なように思う。「批評」する前に、

ケータイ小説をなめてはいけない──日本近代文学と「女学生」

くらい見ておくと良いかも。まー、これを鵜呑みにしろとは言わんけど。

ということを前置きしつつ、それでもそういった「わざわざ」手に取らないと読むことが出来ない「ケータイ小説」なるものに手間をかけるくらいだったら、

2ちゃんのまとめサイトを読んでる方が面白いような気がする

それが釣りであれ、実話であれ、読んでいて面白いと感じるのだ。

世の中、「blog本」なるものも多いのだけど、それら(とゆーかそれらの元blog)よりも面白い。「ニコ動」やら「2ちゃん文学(?)」と言った、「匿名創作」の方が純粋なエネルギーを感じる。

もちろん以前「初音ミク」の話で書いたように、そういったものには膨大な「ティッシュの山」があって、真に面白いものを発見するためには、そういったティッシュの山をかき分ける手間が必要だ。そういった手間をかける暇がない者にとっては、手に触れることすら出来ないのではあるが、幸いなことに「2ちゃんまとめサイト」は、記者が選んでくれている。

こちらの欲しいのは、「作品の満足」であるから、「この作者は他に何を書いているか」というようなことを意識しなくて済むのもいい。純粋に一つ一つの話を楽しめる。私のように

作者が誰であるかよりも、個々の作品がどうであるか

に関心がある者にとっては、非常にありがたい。まぁ「誰が作ったか」という情報も「好みの作品に触れるための情報」として意味があることもあるのだが、そうとも限らんことも少なくないわけだし。

と言えば、以前小飼さんが

ニコニ考 – オープンソースプログラマーとニコ厨の違い

という話を書いていて、「なんで名前を売ろうとしないのだろう」という意味のことを言っていたのだが(端折り過ぎなので詳しくはリンク先を読みましょう)、私はニコ厨の方の気持ちも良くわかる。「消費者」にとっては「作者」よりも「作品」に価値があるわけだし、「生産者としてのニコ厨」は同時に消費者でもあるわけで、そうなると「作品」だけを認識できる方が楽でもあるから、そっちに流れるんだろう。

「オープンソースプログラマ」なる分類には、私も混ぜて欲しいところではあるんだけど、私が混ざっているという前提で話をするなら、私自身の「名前」なんてのは実はどうでもいい。「djb嫌いだからqmail使わない」なんて人は少なからずいるわけで、「生越嫌いだから○○は使わない」なんて人もいるだろう。でも、「作者たる私」からすれば、「私への好き嫌いよりも○○の方を評価してよ」って思うわけ。実際、某プログラムは私のことを嫌いな人達が使ってくれていたんだけど、多分あれは私が作ったということを知らなかったからじゃないかと思う。だから、今さら「あれは俺の作品」とか言うつもりもない。当時としては結構手間も金もかけて作ったものなんだけど。

ということを思えば、「2ちゃん文学」やら「ニコ動」といった「匿名創作」の作者達が匿名であり続けるというのは、

作品本意主義

としてアリなんじゃないかなということで、私は理解出来る。また、作品本意主義であるがゆえに「無私」な創作になるから、その分ストレートに伝わって来て「面白い」と感じるのではないかなと思う。「○○を作ったあの××さんの作品」とかって妙に期待されてると、作る方としても余分なプレッシャーだろうし。

とか言いながら、私が自分の書いたプログラムに名前を入れてGPLくらいのライセンスで公開するのは、あくまでも知財戦略上の話であって、

名前を売るためじゃない

のだ。名前を書くのは、表現に於いても意味に於いても、「宅配便の受け取りのサイン」くらいの意味でしかない。実は「ニコ動」には私が手伝って作ったものがいくつか上がってるのだけど、あそこでは「知財戦略」の必要がないから、クレジットさえも入れてもらってない(「友人に手伝ってもらいました」の類もない)。自己満足的には立派な「元プロの技」だと思うけど、そんなことが元で叩かれたくもないし。

PS.

肝心なことを書き忘れてた。これとっても面白い。

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない

下手な小説よりも” への3件のコメント

  1. リンク先の

    > 「ばかやろう。定時なんてものは都市伝説だ。フィクションっての知らんのか?」

    経絡秘孔を突かれました。

  2. 気のせいではなく、2ちゃんのまとめサイトのほうがはるかに面白いです。
    なによりも、どこかのスイーツ(笑)と違って、はるかに「実話」ですからね。
    どこかのスイーツも実話とさえ言わなければ、あんなにたたかれずにすんだと思うんですけどね。
    ただ単にヘタクソな文章モドキの羅列だけにすんだものを。おまけに盗作騒ぎまで出ているし。

  3. > 定時なんてものは都市伝説だ

    「定時に帰ったりしたら、することがなくて死ぬ」とか言ってたのがいたなぁ。

    > はるかに「実話」

    ネタでも上手いんだよなぁ。同人創作のレベルは軽く超えてるような気がする。少なくとも不愉快にならずに十分楽しめるし。

    でも、あれは普通に「出版」しちゃうと死んじゃうんだろうな。

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