入社時の「スキル」って?

優秀なエンジニアは「入社時のスキルを問わない会社」には就職してはいけない

というのは正解かも知れないし、そうでないかも知れないとしか言えない。入社時にスキルがあろうとなかろうと、平均化してしか見ない会社には、あるいは入る価値はないかも知れない。でも、それもそうとも言えない。

平均化されてしか見られなくて、それに埋没してしまうのであれば、そこまでの話だ。確かに平均化してしまう会社はクソかも知れない。「俺がせっかく身につけたスキルを評価されないなんて!」と思うなら、「そんな会社クソくらえ」でもいいかも知れない。

しかし、そもそも

スキルって何よ?

と考えたら、そういった会社でもやって行けることだってスキルのうちだ。エンジニアはつい「技術スキル」をスキルだと考えがちであるが、ことシステムエンジニアに関して言えば、「社会スキル」もスキルのうちだし、仕事をして行けばそっちの方がずっと重要な局面は少なくない。「仕事」という観点で言えば、「1000行プログラムを書く」ということと、「1000行プログラムを書かないで済ませる」ということは、

等価

なのだ。さらに、後者を選択すると「1000行分のバグ」を避けることが出来るというオマケつきだから、後者の方がスキルが高いとも言える。そこも含めて「スキルが高い」のであればそりゃ評価の価値があるのだが、往々にして「スキルが高い」と言われる人は、どっちか片方だったりする。まぁどっちが嬉しいかと言えば、前者の方が嬉しいけど。

「スキルを正当に評価してくれる会社」だって注意が必要だ。

これは私の経験が悪いのかも知れないが、「スキルを正当に評価する」ということと、「こき使われる」あるいは「教育されない」ということはイコールで結ばれることが多かった。給料はいくらか良くなるのだが、その分仕事がキツかったり、教育を受ける機会がなかったり。結局、それ以上のスキルアップをするには、自分で頑張るしかなかった。かと言ってスキルアップをさぼると、「それなり」の扱いになってしまう。

もちろんそんな会社ばかりではないかも知れないが、「スキルを正当に評価」すると言っても、その内容がどうであるかによって、その先がどうなるか決まるのだ。油断すれば埋没ということでは、平均化して見る会社との違いは大きくない。

実は今の会社はそうだし、前の会社もそうだったが、「入社時のスキル」は重視していない。もちろんいかなる種類のスキルでも、ないよりはあった方がずっと良いし、あればあったで優遇もされるのだが、教育可能年齢であれば、「初期値としてのスキル」はそんなに重視していない。なぜなら、

必要なスキルは教育すれば良い

からだ。特に情報処理に関することはそれでいい。そのためには、教育に耐える「頭の良さ」は大事だし、それを後押しする「モチベーション」も大事だが、逆にそれさえあれば、あとは

基本的なリテラシー

があれば十分だ。初期値なんて低くて良い。それよりは「教育効果」の方がずっと大事だ。

まぁそんなわけで、会社が良いの悪いのってのは、結局のところ「自分がどこに行きたいか」と「会社がどこに行くのか」の折り合いで考えるべきであって、「スキルの評価」なんてものはその中の一つの要素に過ぎないし、その要素の解釈も人それぞれあるということ。万人に向けての正解なんぞありはしない。上司に認めてもらえないエンジニアは“社内”を捨てOSSに行くという手だってあるし、それもまた生き方だし、それが出来る環境はそれはそれで悪くない。