おっさんハッカー

twitterでチマチマ書くと話が見えなくなるので、まとめ。

私はストレートな意味での「おっさんハッカー」はあまり肯定的に思ってない。

もちろん、ハッカーでありたい人がそう努力することを否定するわけじゃない。和田先生みたいな人は素直に凄いと思うし、自分もそうありたいと思う。だけど、「軸」としてどうかと言うと、ちょっと違うんじゃないかと思う。

以下の話には逆説と正論がゴチャ混ぜになっている。読む人はその辺を留意されたし。「整理してから書け」という声もあるだろうが、たかが個人の雑文に「結論」を求める方がおかしい。むしろ、そういった諸々を「raw」な形で晒すことにより、問題意識を共有出来る方がいいと思う。

「ハッカーの幸せ」については、ゴチャゴチャ書く必要はないから書かない。自分もそうありたいと思う。

でも、そうであるが故に、「ハッカーでいたい」ということを第一に考えるのは違うんじゃないかなと。いや、「ハッカー」はハッカーでいいんだけど、ハックするべき対象が違うんじゃないかと。

まず前提として私が思うのは、

若者は凄い

ということ。私なんかとても歯が立たないくらい優れたソフトウェアを、恐しい速度で書いている奴等はいっぱいいる。仮に「ハッカー」というものに「定員」があるとするなら、技術的に劣る自分がその中に入るのは、傍迷惑なことだろう。「ハッカーでありたい」と思うのは個人の勝手だけど、ハッカーであることが「既得権」の一種だったりするなら、とっととその既得権を放棄した方が「未来」のためだ。

「おっさん」とて無駄に歳を食ったわけじゃない。経験を積んで来たわけだから、単なる「馬力」や「若気」を超える能力があることも事実だ。でも、そうであるが故に生き残りやすい。当面はそれでいいし自分中心に考えるんだったらそれでもいいんだけど、そうやって生き残っている限り若者に席が回って来ない。若者の補充の少ない世界は、いずれ硬直化してしまう。硬直化したハッカー社会なんて、シャレにもならん。

「いや、ハッカーに定員なんてないよ」という声もあるだろうけど、ハッカーとて食えなきゃ困るわけで、食えるためには市場というものがあって… とか考えると、「専業ハッカー」はどう考えても事実上の定員がある。また、それと比べれば「ハッカー志願者」の数はずっと多い。「兼業ハッカーでもいいよ」という人は別にそれで構わないし、それなら定員問題も起きないだろうけど、それは「大多数のハッカーの求める幸せなハック環境」とは違うと思う。まぁ晴耕雨読的なハック生活も悪くはないと思うし、それはそれでとても幸せだと思うけど。

ところでここで説明なしに「おっさん」と言ってしまってるけど、一応おっさんについての定義をしておこうと思う。いろいろ考えたのだけど、

本人の能力 < 本人の社会的位置

となったらおっさんではないかと思う。たとえば、「高給とってるダメな上司」なんてぴったりこの式にあてはまるし、「評論家」なんてのもその評論対象の世界ではそうだし(そうでなかったら評論家なんかならなくて現役のはずだ)、「35歳」過ぎて単価と原価が逆転してしまったプログラマなんかもあてはまる。つまり、

他人の稼ぎで給料が作られるようになったら「おっさん」

ではないかと思うわけだ。だから、要員派遣だけで歳なりの給料はもらえないし、プログラム書くだけで歳なりの給料はもらえない。何らかの形で他人の稼ぎを回さなきゃいけないわけで、それが「管理」であったり「企画」であったり他のものであったりする。「おっさん」の置かれている位置をうまく表現している式じゃないかな?

で、これをさっきの話と組み合わせると、「おっさんハッカー」がするべきことってのは、いわゆる「楽しいプログラム書き」と言うよりは、そういったハッカーの

定員を増やす

ことが最初にあるんじゃないだろうか。つまり、自分がハッカーの一員でいたいと思うのだったら、自分をハッカーの一員に出来る程度まで定員を増やすことが、「おっさんハッカー」の役目じゃないかと。それが出来ないならハッカーを引退しろと。

この「定員」の増やし方はいろいろあると思う。

たとえば自分が管理職たる身分であることを認めてしまって、「兼業ハッカー」になってしまうのも方法だろう。自分の「環境負荷」を下げるというアプローチだ。これはこれで一つのケリのつけ方だ。つまり、自分の人生をハックするということだ。

あるいはハッカーが食うための法人を作るのもいいだろう。食えるためのシステムを作れば、それを育てることによって食える人が増える。つまり、「定員」が増える。会社の経営なんてやったらハックする時間が減ってしまうけど、それは工夫次第で一時的なものに出来る。儲かるようになれば、生粋の経営者に任せちゃえばいいんだから。つまり、経営をハックするということだ。

あるいは私がよく言うように、ハッカーが食える社会を作るということだっていい。ハッカーが食えるように社会のニーズをいじるなり、ハッカーのためのエコシステムを作るなりする。つまり、社会をハックするということだ。

何にせよ、「おっさん」というのは自分以外のものを面倒見なきゃ、存在そのものが否定されてしまうのだ。その代わり、自分以外のものの面倒を見るスキルも持っているはずだ。つか持ってなきゃダメだ。そうなると、「幸せなハッカー人生」を歩もうと思ったら、少なくともしばらくはハックの対象を変えなきゃいけない。

なーに、やってりゃきっとそれなりに楽しいさ。だってハックだもん。

PS.

ひがさんが「プログラマ老いやすくハッカー成り難し」というエントリで言及してらっしゃる。

実は当初あそこで書かれている定義を考えていたんだけど、実は元ネタとの整合も考えてやめていた。なぜなら、件のエントリの定義だと

ムダにあがいているおっさん

を排除出来ないから。本エントリでは、「むだなあがきになってしまいそうなおっさんは他のことを考えろよ」という趣旨なので。あがいてなくても自分がハッカーになれるように「パイを拡げろ」と言いたいわけ。

おっさんハッカー” への2件のコメント

  1. 比嘉さんは、違う所にパイを広げる人になれるんじゃないですかねぇ?ISIDの席は、誰かに譲って。。ISIDで、あの位置が、沢山増えるようには思えないんですが。。

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