企業にとって0を1にするってのは

小飼さんのblogより。

地頭力?石頭力!

まぁ読んでてネタを思いついただけで、そんなに深く関係があるわけじゃないんだけど、この中の

「0を1に」とか言っている会社は重要な勘違いをしている。0を1にできる人を、言葉は悪いが足軽扱いするとは何様、である。

でちょっと思い出した。

いろいろな考え方があるだろうけど、企業での商売の単位は「口」ではないかと思う。つまり、「何人の口を養えるか」ということ。つまり、何人分の給与が支払えるかということ。「人前」と言ってもいいのかな。この単位は評判の悪い「人月」との整合性がいい。「だからダメ」という意見もあるかも知れないけど、逆にこれと整合性がいいから私は「人月」を否定しないのだ。

もちろん「口」にはデカ口もおちょぼ口もある。そういった「個」はあるけれど、それはそれぞれの口の大きさの違いだけであって、「口の数」という大雑把な見積りをする時には、口の大きさの違いは考えない。マスで考える時は個性よりは平均値だ。

そう考えると、SIerはせつない。なんだかんだ言っても、結局1人が1つ口しか養えない。もちろん能力やら営業力やらの違いはあるけど、稼ぎのいい奴にはいっぱい給料を払うし、悪い奴には払わないということでかなり平均化されてしまって、結局のところ1人が1つ口だ。その平均から外れる部分が「利益」とか「損失」になるわけだけど、原則1人が1つ口分。

これを超えるには、「パッケージ」のような「一々生産しなくていい商品」を作るか、あるいは営業が商品を右から左に動かす体制を作るか。何にせよ、基本的に「労働力の販売」である請け負い仕事ばかりやる限り、1人は1つ口の原則から外れることはないし、外すべきでもない。

ところがそうなると「フェロー」なんて言って「ぼくちんは稼がなくていいんだヨ」みたいなことを言っているのは

単なる穀潰し

としか評価出来なくなってしまう。そして、そのフェロー様に払う報酬だって、「上前をかき集め」たものでしかないから、たかが知れたものになってしまう。上前ハネられてしまうきちんと1人口稼いでる奴も面白くなければ、偉い人なのに「穀潰しの程のいい奴」でしかない奴も面白くない。請け負いでない収益スキームを構築した上でなければ、1人が1つ口の原則を外れてはいけないのだ。でも、「1人が1つ口」なんて、結局「自転車操業」であって、規模がデカくなっても自転車がデカくなるだけ。「弊社は余力で凄いオープンソースやるんだぜ」とかって経営者が考えても、その余力がそもそも作りようがない。

# まぁそんなことがあるものだから、二度とSIerをやる気はないんだけど

SIerの事情はさて置き、企業では荒利も労働力も単位が「口」だということにしておくと、「0を1にする」というのは「口」のことだということになる。だから、いくら「俺(弊社)SUGEEEEEE」なプロダクトが出来たとしても、「1人口」分の稼ぎ(多分荒利だ)がなければ、「0を1にする」なんてことは言えない。

「0を1にした」とか言うには、技術だけでは金にならんのだから、技術者がうまく営業力も身につけて、企画〜販売までするか、営業をうまくそそのかすか、上司に認めてもらってそこそこのプロジェクトにするか… といったことにして、「1人口」分の金が作れる見通しが立たないと、「0を1にした」とは言えない。

そう考えたら「0を1にする人材」というのが、いかばかりのものかということがわかる。

単なる技術馬鹿じゃダメ

なのだ。そりゃーそんな奴を「足軽」扱いしちゃいかんだろーということで、小飼さんの話につながる。

一般的な意味での「0を1にする」ってのは、要するに「不可能を可能にする」ことなんだけど、企業にあっては単にそれだけじゃ許されないわけ。

また、そう考えたら「0を1にする」奴の価値ってのは、実はそんなに高くないとも言える。「口」ということで考えたら、「1を10や100にする」奴の方がいいということだ。「0を1にする」奴は、その時点ではせいぜい1人口しか稼いでないけど、「1を10にする」奴は10人口稼いでいるということになる。もちろん「0を1にする」奴がいなけりゃ「1を10にする」奴も価値がないんで、どっちが偉いということはないんだけど。

だから、「0を1にする」という凄いクリエイティブな奴がいっぱいいたって、実は会社はそんなに嬉しくない。そいつらせいぜい自分の口を養って終わっちゃう。だいたい、「0を1にする」奴って、「1を10にする」のは苦手だったり嫌いだったりする。だから、それよりもずっと多い「1を1.2くらいにする」奴とか、たまに「1を10にする」奴とかがいないと、会社は立ち行かない。

そう考えたら、何もみんなが「0を1にする」奴である必要もないし、1人1人は無理してそんなことに頑張る必要はないし、会社もそんな人ばかりを集めることを考えちゃいけない。「一級建築士」だけじゃ家は建たんのと同じこと。まぁいわゆる「技術志向」な会社って、そんな勘違いしてるところ多いけど。

PS.

ひがさんにつっこまれている… 「フェロー」でも、ちゃんとペイラインに乗ってしまえば「穀潰し」にはならないと思うので、無問題。そういったのも含めて「1人が1人口」で。

問題はその会社が、そういったサイクルに乗せることが出来るかどうかであって、なっちゃった人には元より罪はない。他の社員や株主から見た時に、「働かなくていい」がどう見えるかということが大事なのですよ。

企業にとって0を1にするってのは” への2件のコメント

  1. 「OSS開発」だけで食っていける人が日本に何人いるだろうかと考えてみると,意外に少ないというかやっぱり少ないというかそんな気がしますね。
    産業としては成り立っていかない。

コメントは受け付けていません。