「年収1000万」がやけに少なく見えるカラクリ

「後出しジャンケン」と言われる前に、ちょっとだけ種明かしをしておく。

とは言え、趣旨として「年収1000万ってそんなに凄いもんじゃない」ってのは嘘じゃない。累進税率のお陰で絶望的に引かれてしまっているのは確かだ。でも、それにも増して少なそうに見えてるのも事実。じゃあそれはなぜか。

一番大きな要因は「年収1000万」が「幻想」であることだ。

「年収1000万」と言われると、凄くあるように見える。でも、これはあくまでも年収。年収なんてものに実際に触れることって、まずない。もちろん家を建てる時の頭金とかで「年収相当」の金を見ることはあるかも知れないが、「年収」として見ることはない。みんなが普段見ているのは「諸々控除した後の月収」分でしかない。「月収」は当然ながら、年収を12等分したり16等分したりした結果だから、1桁以上小さい。「1桁以上小さい」のもミソで、1桁少なくなるのよりもさらに少ないから、感覚的にアレレと思ってしまう。

でも、こういった「幻想」の時にはなぜだか「年収」だ。「月給80万円」とかだと、最初からあまり大きく見えないから、いっぱい控除された結果の59万円や44万円を見ても、そんなにショックは大きくない。「1000万」からすると、えらく少なそうに見えるんだけどね。だから、イメージ的にはアレレになってしまう。桁数だけ見れば2桁も減るんだし。

多分、件のスイーツ(笑)は、こんな心理なんてわかってないから、「ボク月給83万円です」と言っても「その程度…」とか思うんでないかい。

とは言え、実際にいっぱい控除されているのも確かで、こうやって計算してみた時の感覚で言えば、

年収1000万くらいが一番ワリを食う

のだ。累進的に増える控除の一番上のランクにようやく手がかかるくらいの収入なので、相対的には一番大きくなるあたりの年収なのだ。表を再掲してみると、

年収手取り表
年収 平均月収 健康保険 厚生年金 課税所得 源泉徴収額 住民税給与分 均等手取り ボーナス4ヶ月仮定
¥5,000,000 ¥416,667 ¥16,810 ¥30,742 ¥369,115 ¥13,770 ¥36,911 ¥318,433 ¥238,825
¥8,000,000 ¥666,667 ¥26,650 ¥46,488 ¥593,529 ¥45,050 ¥59,353 ¥489,126 ¥366,844
¥10,000,000 ¥833,333 ¥34,030 ¥46,488 ¥752,815 ¥88,840 ¥75,282 ¥588,694 ¥441,520
¥20,000,000 ¥1,666,667 ¥49,610 ¥46,488 ¥1,570,569 ¥344,446 ¥157,057 ¥1,069,066 ¥801,799
¥30,000,000 ¥2,500,000 ¥49,610 ¥46,488 ¥2,403,902 ¥661,113 ¥240,390 ¥1,502,399 ¥1,126,799

これを見ると、年金は1000万でも3000万でも同額。なぜなら、年金は月収59万円で飽和する。ちなみに保険は121万円で飽和だ。税金は課税所得101万円までは累進的に増えるが、そこから先は超過分に対し一律38%。だから、年収にすると1000万あたりが一番相対的に大きな額を払うことになる。これより上になると、増え方が飽和したり累進が飽和したりするので、相対的に控除額は少なくなる。

そんなわけで、イメージ的ギャップが大きいところに向けて、実際にも一番ワリを食うのが「年収1000万」あたりなわけ。せめて年収1500万くらいあれば、イメージ的ギャップも小さくなるし、「上限の損」からも離脱出来るのだけど。

結局、「年収1000万円」なんてのはセレブ幻想が出来る程の収入じゃないってことを自覚して、「普通の暮らし」をしていればそれなりだって程度だということ。高い外車を3年毎に買い換えるとか、年に1度は家族で海外旅行なんてゆー「セレブらしい生活」は、この年収では無理。中流の上限であって上流じゃない。

「年収1000万」がやけに少なく見えるカラクリ” への2件のコメント

  1. あら、こちらには、コメントないのね。(^^;)

    こういう風に表にしてもらえると、あとどのくらい実入りがあれば楽になるのか?というのが、人目で分かって良いですね。ためになりました。

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