モトウケの品格

例の「払ってくれない」エムテックの、エンドユーザから呼び出されて会う。

私に金が払われないのは、結局はエンドユーザが払わないというのが原因ではある。が、私は彼には同情こそすれ、文句は一言も言わなかった。なぜなら、エンドユーザが払わないのは当然だからだ。

私がどれだけ頑張ろうと、エンドユーザが満足しないシステムをエンドユーザが金を払おうはずはない。エンドユーザとしてはそれは当然の理屈だ。

彼等が元請けにどのような要求仕様を出したのか、私は知らない。しかし、「元請け」であるからには、その辺のことは当然何らかの「まとめたもの」があるはずであり、私(達)に発注するためには、それなりの「整理」がされたものであるはずだ。その仕様に従ってこちらは仕事をするし、元請けは検収をする。これが、エンドユーザ、元請け、下請けの正常な構図である。

と同時に、下請けがまともに納品できなかったことのリスク、エンドユーザが受領しなかったり支払いをしなかったことのリスクは、元請けが負わなければならない。それが「元請け」というものが存在する意味であり、そうでなければ「中間搾取」する権利はない。

なので、件の「払ってくれない元請け」が「エンドユーザが満足しないので」みたいな理由で支払わないのは、「寝言」でしかない。私は「元請け」が要求した仕様の中でものを作り、納品しているわけだから、私の仕事はそれで完了だ。仮にそれがエンドユーザの要求する仕様と合致していなければ、その対応は「元請け」のエンジニアがやるなり、「追加発注」なりして対応しなければならない。「元請け」になるからには、それなりの「技術」と「体力」が必要なのである。

「払ってくれない問題」は、要するに「元請けとしての品格を備えずして元請けをしてしまった」というところが最大の問題であって、エンドユーザには何の責任もない。

大きなビルは「ゼネコン」が作る。実際に作業するのは下請けであり、中身はほぼ丸投げであることも少なくない。だから、実際に仕事にタッチしているのは数人だ。じゃあ、数人いれば「街の工務店」が下請けを集めさえすれば元請けになれるかと言えばそうではない。今時のシステムは、ハードウェアもソフトウェアも「小さい」ように見える。しかし、かかるコストを考えれば、「街の工務店」の手に負えるようなシロモノではない。その辺をわきまえてこその「元請け」である。