実のところ、ダウンロード厳罰化をあまり悲観してない

あちこちで議論になっている話。

私は正直なところ、ダウンロード厳罰化にあまり悲観的なものは感じてない。そもそも、個人的にはダウンロードが問題になるものをダウンロードしてない。する気も起きないものが多いし、音楽は買うし、映画は見に行く。これは以前書いた。ダウンロードは「ダウンロード販売」すらあまり使ってない。だから個人的には合法な範囲でそんなに困る予定はない。

とは言え、「悲観してない」のは別の理由だ。

私がダウンロードしないのは簡単な理由で、パッケージメディアはそれ自体がバックアップだからだ。金払おうが払うまいが、大事なコンテンツがディスククラッシュで消えてしまうと残念。その点、パッケージメディアだと、「しゃーねーなー」とか言いながら、また読み込ませればいい。動画だと、一番コストかかるのは

自分の視聴時間

だし、まーたいてい一度視聴すれば十分なものが多いから、レンタルなりiTunesなりで済ませるか、映画を見に行く(二度見がまずない)。そんなわけで、ダウンロードへの依存度は低い。

もちろん多くの人達が心配しているようなことは、起きるかも知れない。見せしめ的な逮捕が行われるかも知れないし、小倉先生が心配しているようなことも起きるかも知れない。

小倉弁護士も大激怒!もう邦楽CDは買わない DL刑事罰化の問題点-いつでも、違法DL容疑で、PCを押収される危険あり

それでもなお、あまり悲観的ではない。なぜなら、それが起きてしまったら、その次のフェーズが始まるからだ。

ダウンロードが出来なくなれば、私のように、本当に好きなCDだけを買い、映画も映画館以外では見ない人が増えて来る。そうなったら、もっとコンテンツ業界は細る。前に書いたけど、

古いタイプの著作権ビジネスはもうダメかも知れない

権利者の権利を過度に保護してしまったら、興味が拡がる余地がなくなる。昔なら、テレビやラジオとゆー「垂れ流し一方通行メディア」を通じて知る機会があったのだけど、今どきのコンテンツ購買層の主力メディアはネットであり、ネットは
「タコ壺メディア」だ。

また、「いいものが売れる」のは当然だけど、これはもっと正確に言えば、「いいものしか売れない」のだ。「好みのタコ壺」に入ってしまった人達に、「駄作」が届く余地はなくなる。「何度か聞いているうちにいいなと思った」ようなものが来る余地もない。

「いいもの」の陰には、膨大な「駄作」があって、そういったものでもある程度売れているから、経済は回る。クリエーターは「駄作」が売れないとなると、必死になって「良作」を作るだろう。その結果「良作」は増えるかも知れない。それは視聴者にとっては一方的に得だ。「駄作」を買う義理なんてないから、消費者は買わない。これ当然。だから、

ダウンロード厳罰化によってコンテンツの質は上がる

とか言えなくもない。

でも、今までは「何度か聞いているうちにいいなと思った」ものも売れていた(実は大ヒットはそーゆー中から生まれたものが多い)。でも、そんな機会は当然に減るから、「何度か聞いているうちにいいなと思う」ようなコンテンツは、「駄作」に分類されてしまう。つまり、売れない。売れなきゃ広まりもしない。

他方「音楽業界が宣伝に力を入れるようになるから、広告業界が潤う」とゆー見方もあるかも知れない。死にかけた地上波テレビが、とっくの昔に死んだも同然のラジオのような番組作りをして… とか、ないわけじゃないだろう。でも、既に地上波テレビはコンテンツ購買層のメディアではなくなりつつある。いくら宣伝しても、期待する消費者の元には届かない。

とか考えると、「ダウンロード厳罰化」はもっとコンテンツ業界を厳しいものにしてしまうだけだ。潰れる会社、引退する歌手、新人の入る余地のない業界… 「明るい未来」はちょっと想像が出来ない。

でも、その先に何が起きるだろう? 「その先」のことを思うと、ちょっとワクワクして来る。それはいずれ来るものだったかも知れないけれど、これでさらに加速される。つまり、

未来が来るのがちょっと加速しただけ

だ。絶望? それは今のギョーカイの人達にはそうかも知れないけれど、別にギョーカイがなくなったって、音楽は存在するし、映像も存在するよ。

PS.

とは言え、お流れになったのはめでたい。

海賊版ダウンロード罰則化、民主党が結論先送り

あわてて「ネタバレ」することもないわけで。もうちょっとゆっくり「今」を楽しんでもいい。