現代無産階級の不思議

経団連が時々とんでもないことを言う。

サラリーマンの給与カットとか、大企業の法人税を下げさせることとか、正社員を削って派遣社員を使うようにするとか。その気で見ると、いかにも階級闘争華やかりし頃の「資本家」を思わせる政策を要求する。まぁ確かに「資本家」なんだけど。

経団連は強力な政治圧力団体だから、その「提言」はわりとよく政策に反映する。日本では、いわゆる「政治」的な部分は政府がやっているが、「経済政策」に関して言えば、経団連が政府のようなものである。

サラリーマンやらニートやらは、その政策の割を食う。階級闘争華やかりし頃の「無産階級」そのものだ。所得税をちょっと減らした代わりに(それも高給取りの方)、消費税はいくらでも上がる方向になっている。消費税以前の税収と消費税後の税収では、「法人減税分だけ消費税が増えている」ようになっている。どれだけ消費税についての綺麗事を言おうと、「法人減税の財源」となっていることは確かだ。配偶者控除はなくなり、単身者は単身者であることを理由に税率が高い。おまけに残業代のカットだの雇用の流動化と称する派遣社員化だので、いいように搾取されている。

かつてはそうした搾取に対しては、「労働争議」なるものを起こし、資本家に圧力をかけて来た歴史がある。ところが、不思議なことに、「経団連」と「サラリーマンやニート」はどちらも「ほぼ自民党支持」である。個別にはいろいろあるだろうが、少なくとも議員の数を見る限り、その結果が反映されている。

政治家は組織化された政治圧力団体の意向に従う。現代では労働組合なんてものは弱体の限りなので、「組織化」と呼ぶにはあまりに貧弱だ。ニートや派遣労働者に至っては、それ以前である。となると、組織化された政治圧力団体である、「経団連」の意向に従うのは当然のことである。つまり、

自分が票を入れた議員が、自分の首を締めている

状態なのだ。ネットを見れば、ウヨがウヨウヨしている状態で、彼等は当然に「自民党以外のもの」を「悪いもの」と言っている。人口比で見れば、ネットには「経団連」側の人よりは「サラリーマンやニート」の方が圧倒的に多いはずなのだから、つまりは

自分達の権利を奪う人達を歓迎している

と言ってもいい。なんとも不思議なものである。

もっとも、同じ「右傾化」と言っても、「民族主義」は以前にも書いたように、「現代においては当然の方向」である。それはまぁそれで悪いこととは言わないのだが、日本においては「民族主義な人達」の受け皿と「経団連な人達」の受け皿はイコールなのだ。だから、「民族主義」という飴で、搾取されることを認めさせているとも言える。

ということに何も疑問を感じないのが、現代の「無産階級」である。