「プロジェクトX」をもっと称えよ!

これも「お題読み」だ。

プロジェクトXが日本の技術立国を神話にした。

ここで述べられている主題には特に異論はない。でも、「プロジェクトX」はもっと称えられるべきだ。「技術者」の地位のために。

「プロジェクトX」が技術者に人気がないなーな話は、大昔に書いた。

プロジェクトX

まぁ嫌う人達、あれは良くないと言う人達の言っていることは、基本的には正しいと思う。わいのわいのとtweetするだけの人達は、単なる嫉妬の類にしか見えないけれど。

正直なところ、私も

ものづくり

という言葉に漂う欺瞞とか、飽き飽きしている。てか、個人的にはNGワードにしたいくらいだ。

しかし、それであるがゆえに、「プロジェクトX」や「ものづくり」はもっと称えられなければならないと思っている。それは「ものづくり」を欺瞞に満ちた言葉に終わらせないためだ。

日本で強いと言われた「ものづくり」は簡単に言ってしまえば、焼け跡世代や団塊世代が、気合いと数に任せて無茶して来た成果だ。そういった意味では、最初に挙げたリンク先にある主張は正しい。同じ理由で、「ものづくり」に漂う欺瞞については、いろいろ思うことがある。つまるところ、日本の「ものづくり」ってのは、

ブラック

なのがほとんどだ。今でこそ「中国パクリwwwワロスwww」とか言っているけれど、日本は中国が笑えない。それは、ネット上にある産業歴史的なまとめサイトを見ればよくわかる。もちろん「かつてのSONY」のような素晴しいものもあるが、丸パクりの中小企業の製品とか、大量に出て来る。たとえば、

日本ラジオ博物館

あたりを見ると、穴があったら入れたい入りたいくらい恥ずかしい歴史が出て来る。日本の典型的な「ものづくり」はむしろこっちの方だと言ってもいい。

そういった情けない歴史と、円高になった途端に借金地獄になってしまう「安いが取り柄」みたいな零細中小企業が支えて来たのが、日本の「ものづくり」だ。同じようなことをやる新興国が出て来たら負けるなんてのは、太陽が東から昇るくらい当然のことなのだ。

とは言え、そういった「泥田」にも「蓮」はある。もちろん、そういった「蓮」なものであっても、技術者が無茶をして来た成果物だったりする。でも、そういった「蓮」をピックアップして、正当な評価をしなかったら、日本の産業は、

パクりとブラックばかり

という評価しか出来なくなってしまう。つまり、奴隷として社畜としてよく頑張りましたね、でも大阪城を造ったのは豊臣秀吉だよで終わってしまう。

「頑張った人達」は別に奴隷としてとか社畜としてやっていたつもりはないはずだし、その仕事は評価されるべきだ。「頑張った人達」を正当に評価しないということは、そういった人達、ひいてはその末裔である我々技術者を、奴隷の地位に貶めることでしかないのだ。

今のような「ものづくり」の称え方は、「とりあえず奴隷にも感謝しとけ」「なんでもヨイショしとけばいい気分で働いてくれるだろう」的なものを感じずにはいられない。口では称えながら、地位や待遇が改善されるわけじゃないんだから、

単なるリップサービス

でしかない。あるいは産業政策に対するポジショントークでしかない。でも、本当に価値のあるもの、これから先も日本の強みとなるかも知れないものであれば、まずピックアップして褒め称えるべきだし、それと共に地位改善があるべきだ。だから、「プロジェクトX」のようなものでスポットライトを当てて、

スター化

することは悪いことじゃない。

また、後に続く者にとっても、そういった目指すべき「スター」や「ロールモデル」があるのはいいことだ。本当にやってるかどうかは知らないけど、GREEやDeNAがものすごい年収でエンジニアを釣り上げているのは、プロスポーツのそれに似て大変いい傾向だと思う。いっそ「○○社の××さんは、年俸△億円で☆☆社に移籍」とかってニュースになってくれてもいいくらいだ。

それに対してわかったような理屈を並べて、あれこれ言うのは、

単なる嫉妬

でしかないから、ブログなんぞで言わないで、ガード下の飲み屋ででもやっていればいい。ガード下での話題も増えていいだろ?

優秀な技術者、成果を上げた技術者はもっと称えられるべきだ。むしろ高々「プロジェクトX」くらいでは足りないと言ってもいい。頂点が高い程、裾野は拡がる。裾野が広いからこそ、頂点も高くなる。自分達の地位を上げたい、もっと社会的に認められたいとか思うのであれば、「プロジェクトX」的なものの悪口は言わないことだ。いや、否定するのは構わないが、

もっといいもの

を提案してからにして欲しい。