「エンジニア2.0」を考えてみる

もうタイトルからこっぱずかしくなるようなネタなんだが、先日のエントリ

「初音ミク版やらないか」とweb 2.0

「ITスキル」を問わない理由

の続き。あれからいろいろと考えてみて、「こいつらの続き」ということになった。

「web 2.0」とは素材ありきだ。あらゆるものが素材に見えることが、「web 2.0」に生産者として乗れる第一条件じゃないかと考える。それについては「やらないか」のエントリも見て欲しい。

既に素材がある状態なら、素材を入手したり作る能力はいらない。現代の「料理人」に必要なのは、素材を選ぶ能力や加工する能力であって、「素材を作る」能力ではない。寿司職人がマグロ漁船に乗る必要はないのだ。

じゃあ、素材のことを何も知らないで良いかと言えばそうじゃない。「どんなネタがうまいか」なんてことは知らなきゃいけないし、「加工のしかた」がわからなきゃ仕事にならない。「料理人」は客じゃないから、うまいものを知っているだけではダメで、「どうやるとうまく食えるか」を知らなきゃ意味がない。「マグロ漁船に乗る能力」や「米を作る能力」はいらないが、かと言って単純な消費者ではない。

実はほとんどの「ITスキル」の類は、

「マグロ漁船に乗る能力」や「米を作る能力」

だ。「情報系学科」と呼ばれる学科で習うほとんどのことは、「料理を作る」ことよりも「マグロ漁船に乗る」とか「米を作る」方に分類されることだ。と言うか、学校で教えてくれることは、自分の専門分野に関して言えば、みんなそうだ。社会にとってどんな意味があるとか、どう使われているかについては教えてくれない。

生産者尺度で物事を見れば、生産の能力が高いものが偉いことになる。「マグロの漁師」ならいいマグロを採ること、「米農家」であればいい米を作ることだ。また、「料理人」であればいい料理を作ること。

ところが、社会で真に求められるのは、実はそういった「生産者尺度」じゃない。消費者には消費者の尺度がある。消費者にとっては「良い消費財を得る」ことが重要ではなく、一番求められることは

消費による満足

なのだ。「良い消費財」はそれに近いがそのものじゃない。また、「寿司が食いたい人」に対して「マグロそのもの」を出しても喜ばない。食いたいのは寿司だからだ。

「エンジニア」の感覚と「消費者」の感覚がマッチしないのは、実はこの辺が原因だ。エンジニアの思う「いいもの」と消費者が欲しいものは、必ずしも一致しない。いや、技術が進めば進むほど、乖離すら起きる。まー、何にせよ、「エンジニア」と「消費者」の間にはこれだけの開きがある。そして不幸なことに、技術の延長上に解決はないのだ。

学校で教えてくれたり、エンジニア自身が求め続けたりする「技術」は、「マグロ漁船」やら「米農家」のそれである。ところが、消費者が欲しいのは、かつてはそんな「素材」だったのだが、今は「料理そのもの」になりつつある。自分で料理を作れる人なら「素材」で十分だが、そんな人ばかりじゃない。これが世の中の現実だ。

かつては「SIer」なるものがその間を補間したものだ。SIそのものにはいろんな限界があることは、いろんな人達が吠えているから、ここには書かない。だけど、

料理人

にあたる立場の人が必要であることはわかるはずだ。

「料理人」は消費者じゃない。でも素材生産者でもない。消費者のように製品にブースカ文句を垂れるだけじゃなくって、「こう料理したらうまい」ということを知って「加工」が出来なきゃいけない。「素材」のことをよく知っている必要はあるし、どう作られたかとかわかるといいけど、それが技術の全てではない。「技術」はあるけど、どっちかと言えば、

消費者目線

がないといけない。

そういった「料理人」みたいなのが「エンジニア 2.0」なんでないかと。とか書くと、

それってSIer

なんてことになるかも知れないけど、それはちょっと短絡しすぎなんじゃねーのという話は、また今度。