A:「時間の奴隷」である限り楽な仕事などない

Q: 残業続きの毎日にうんざり。もっと楽な仕事に就きたい。

開発現場に張り付き、毎日残業に明け暮れています。女性として、こんな生活はもう限界です。もっと格好よくて楽そうな仕事、例えばコンサルタントになりたいと切実に思っています。
(ソフト開発会社、SE/女性・27歳)

後半は別にして、前半はいろいろ理解できる。確かにねぇ〜。この業界それが普通だったりするのだが、その「普通」は確かにおかしい。

後半の言葉。これを「単なる甘え」だととらえるのは、ちょっと早計だろう。こういった言葉を吐く事情を考えてみる必要がある。

彼女はいわゆる「IT屋」を嫌だと言っているわけではなく、「IT土方」が嫌だと言っているわけだ。また、「格好よくて」というところに、「報われたい」という思いがあるようにも思える。そうなると、彼女は単にコンサルになっても、何も解決はしないだろう。彼女に必要なのは「報われた実感」であって、「楽」とか「格好いい」とかというのは、それに対する表現のしかたに過ぎない。そして、彼女自身それがわかってない。

この業界にいる限り、どこに行っても苦しいし、時間に追われる。現在ニート(会社設立前だから)な私だってこの業界から離れたわけじゃないから、時間に追われているのだ。

私のことを言えば、金も時間もないところを「スキルアップ」のために大量の本を買い読む。私を程々に知る人は「何を今さらスキルアップ?」と思うかも知れないが、私にはまだまだ学ぶべきことがある。もちろんするべき仕事もあるわけだから、その時間をぬってやらなければならない。苦しいし時間に追われていることに変わりはない。

おそらく今私が勉強していることのほとんどは、これからやる仕事には結びつかないだろう。「これから」と言うのは「これから引退するまで」で、いろんな仕事をやるであろうことを考えても、「ほとんど仕事に結びつかない」ということに変わりはない。実利だけ考えれば、「今ある仕事をやる」のが一番いいし、「既に得たスキルを生かす」のが効率がいいはずだ。本だって安くないんだし。

じゃあ、今やっていることを虚しく思うかと言えば、全くそんなことはない。なぜなら、それらはみな「自分のため」であり、「自分の成功のため」だからであり、「その成功は自分には見えている」からだ。全ての主体は「自分」であるから、「時間の奴隷」などということはない。だから、何をやっても満足であり、不満と言えば「自分の頭の悪さ」くらいなものだ。

まぁこの業界で一番大切な「要領の良さ」とは、「仕事を自己中心に持って行く要領の良さ」なのだろう。