ビッグイシューを買ってみた

前々から気になっていたのだが、ちょっと前に「ビッグイシュー」を買ってみた。

何しろこの辺では「販売員」には困らない。御徒町の駅周辺でもどれだけいるか。しかし、今時「R25」みたいな本がタダであるんだから、何も好き好んでホームレスから200円(買った号は300円)で買うこともねーだろーとも思ってた。

それに「ホームレス支援」なんつーのも、胡散臭い。その辺の胡散臭さは「真性引き籠り」のblogにまとめられているのだが、私もだいたい同じようなことを感じている。

とは言え、雑誌としてのビッグイシューは、「R25」なんかよりもずっと面白い。R25が「電車の中で読んで捨てて帰る」ものなら、ビッグイシューは家でゆっくり読んでもいいものだ。記事の長さや雰囲気も「飛行機の中の機内誌」のような感じでさえある。この手のサイズの本(冊子)としての十分の濃さがある。

「支援」なんてものにありがちの「プロ市民臭さ」みたいなものも、ほとんどない。私の買った号には環境保護云々の話も出ているのだが、「破れたジーンズでギターで歌ってる」ような空気もなければ、「パンツスーツのおばさんが叫んでる」ような空気もない。「週刊プレイボーイの扱う社会派記事」に近いものがある。

いろいろ調べてみると、「それでなくても胡散臭そうな販売員が売る本なんだから、面白くないと誰も買ってくれない」ということが背景にあるらしく、確かに頑張って作っているようだ。「支援」みたいな言葉も、表紙以外には奥付あたりにちょろっと出ているだけ。「買ってくれたあなたは善意の人」みたいな表現すらない。そういった意味ではすっきりと気持ちのいい雑誌だ。

ということで、普通の人が暇潰ししつつホームレスのために何かするには、非常に良い本だと感じた。怪しさに躊躇してる人は買ってみると見直すと思う。

というのは良いのだが、あまりに「いい雑誌」になり過ぎていて、それが「ホームレス」と乖離しすぎだというのが、ちょっとつまらない。ホームレスに関する記事が皆無ではないのだが、あまりに少ない。「ホームレス人生相談」なる連載があって、多分ホームレスの人が答えてたりするんだろうけど、「ホームレスならでは」と思えるのはそれだけだ。

ホームレスのような「底辺の人」にしか見えない世の中があると思うのだけど、そういったものについての記事はまるでない。そればかりでも食傷してしまうし、おそらく今までの「この手のもの」はそればかりをやって失敗したのではないかと想像するのだが、販売している「ホームレス」と、この雑誌の記事との乖離があまりに大き過ぎて、そっちに違和感を覚える。それくらい「おしゃれ」な雑誌なのだ。

悪い本じゃないし、多分役に立ってるだろうし、ビジネスとしても上手くやっていると思うんだけど、「ラーメン屋に行ったら特上の蕎麦が出た」みたいな感じがする。