「それはもうやった」

大前研一が、あいかわらずピントの外れたシステム批判をしている。

日本のお役所システムは無駄だらけ

とは言え、勘違いしているのは「システムが悪い」ということだけなので、それ程害はない。半可通以上のものになってない田原総一朗とか池田信夫とはちょっと違う。

この中で提案された「解決案」が、

まず年俸を1500万円から2000万円程度用意して、システムの分かった人間を50人、中央に集める。この優秀な50人は、日本一の設計部隊といって間違いない。しかし、世界中から最優秀な人間を集めるので、メンバーは日本人ばかりとは限らない。そしてこの設計部隊に、年金、選挙、納税、戸籍、パスポート申請などの、あらゆる公的システムを設計してもらうのだ。

こうしてシステムの具体的な絵、作業ステップまで作った上で、ITベンダー(日本のスーパーゼネコンだけでなく、文字通り世界中から募集)に仕事を発注すればいい。そうすれば、優秀なシステムが出来上がることは確実だ。このようにして作られた優秀なシステムは、パッケージ化して、ASPとして簡単に他の市町村などでも使えるようにすれば、導入費用は格段に安く済むはずである。

年俸とかエンジニアのレベルの問題は別にして、似たようなことをやったのが、私も関わっている「日本医師会」のレセコンシステムだ。開発開始から7年経過して、まぁ当初の目標に近いものが出来上がっている。

とは言え、このシステムがそこそこの市民権を得るまでには、ここでヤリ玉に上げられている「ITゼネコン」達からの妨害工作はかなりあった。そりゃそうだろう。今まで自分たちが結構な金額で受注していたシステムを、「タダで好きなだけ使って下さい」ってやろうと言うのだから、妨害したくもなる。実績を軽く計算しても、年間100億単位でメーカの身入りが減ったのだ。シェア自体は数%に過ぎないのだが、それでも業界に値崩れを起こさせた分、メーカの身入りは減ってしまったのだ。

もっとも、実際に世に出てしまったら、それ程のものではなかったということが幸いして、メーカは「なんだあの程度か」と侮ってくれた。お陰で妨害の類はなくなった。とは言え、システムの恐いところはだんだん成長して行くこと。おまけにあらゆることが共有されているから、どんどんシステムは良くなった。その点ではうまい具合にソフトランディングしたとも言える。

とは言え、高々レセコン程度でああだったのだから、「あらゆる公的システム」がそうなるとなると、並の妨害ではなかろう。おそらくは「第8層」以上のところでいろいろなことが起きる。

それだけじゃなく、全国2300のユーザ(今はもっと減ったか)はあれこれ自分勝手な要求仕様を上げて来るだろう。その調停も担当者レベルだけではなく、やはり「第8層」の問題になるはずだ。

まー、それでも膨大なノウハウはここにあるぞ。次も成功するとは限らないがな。

大前「わたしだったら…」
生越「それはもうやった」