嘆く大前研一

大前研一はアメリカ信仰さえ出て来なければマトモなことを言う人だと思っている。

大前研一:買収・売却であぶり出された日本企業の姿

前4ページは、「ああ、そうなのね」という話でしかなく、特に面白いとは思わないが、最後のページが面白い。

1つは、日立がとんでもなく赤字を出しているという話から、

21世紀は「従来型の優秀な人材をたくさん集めても駄目だ」ということにほかならない。
なぜ日立がこんな体たらくなのか。それは優秀な社員はたくさんいても優れた経営者がいないからだ。

と言っていること。さすがに大前研一はわかってるねというところ。「技術系企業」の陥りやすい罠についてつっこんでいる。

現代は技術は遍在している。金さえあれば買って来れる。もちろんキーとなる技術を握らずして「技術系企業」とは言えないが、逆に言えばキーとなる技術以外の技術は、なくてもそんなに困らないとも言える。

真に「技術に強い」会社になるためには、技術への投資のメリハリが必要と言える。なんとなくあれもこれもとやっていては、投資効率も悪いし「ウリ」も作りにくい。その判断をするのが「経営」というものだ。つまり、「どの技術をキーとするか」「どの技術が買えばすむか」ということを判断して、投資を考える。それなくして「技術系企業」は存在しえず、いずれ潰れてしまう。「技術系企業」とは「技術の/に強い企業」であって、「技術が豊富にある会社」とは違うのである。

2つ目に面白いのは、どうやら日立の対応に大前研一が怒っているらしいこと。

わたしは最近、日立から講演会の依頼を受けた。当然、講演費を伝えたのだが、「それは高くて出せない。でも、話はしてほしい。OBのよしみでひとつ」などと言うのだ。(中略)なぜ現金だけでも1兆 6000億円も持っている日立が出せないのか。そのセコさが駄目だと思うのだ。この会社の潜在的価値はどのようにしたら引き出すことができるのか、それを聞き出せたら無限の価値があるはずだ。その機会をわずかな講演料をケチってあきらめるというところがすごいと思う。

この手のことをやる会社や団体は少なくない。私も「有料講演会」で講演して、もらったギャラが受講料より安かったこともあるし、普通に工賃として計算したギャラを請求したら「それは高いので」と、他の(程度の低い)講演者に替えられたこともある。

昨日、会社設立の書類を持って「ドン」に会った時も同じような話になって、「自分がちょっと話したことで大金を儲けたり損しなかったりした人はいっぱいいるが、コンサル料を払う奴はロクにいない」という話で盛り上がった(「だからちゃんと金取れよ」という話なのだが)。私の一言でとんでもないメリットを得た人は結構いたのだが、その人達は「その一言のお陰のメリット」よりも「たった一言」しか見ない。感謝されることもまずない。感謝してくれたのは、元RHKK(現Suse)の平野さんくらいなもんだ。

話されたことに価値があったかどうかどうかは、結果でわかる。結果を出すのは聞いた人の責任でもあるが、現に結果が出たということは話されたことに価値があったからでもある。それを全部どっちかの手柄にしてしまう人もどうかと思うし、価値が引き出せそうにないからと値切る人もどうかと思う。

大前研一ほどの人も、なんか似たようなことが起こり、似たようなところでアレな思いをするのだなと思うと、ちょっとほほえましくも思う。