パスタを茹でるのに塩は必要です

disエントリばかり書いて申し訳ないのだが。

最近ロケットニュース経由で、

スパゲティをゆでるときは塩なしでOKです

ってのが話題になっていたので、試してみた。

実際にやってみるといい。「塩なしでOK」とかって結論には間違ってもならないから。件の記事は「デマ」と断罪しても良いレベル。

うちではもちろん普段は塩を入れる。どれくらい入れるかと言えば、

海水くらいの塩分濃度

を目標に、バサバサと塩を入れる。ちなみに、海水の塩分濃度は3.5%内外。スパゲティは1人分が100gが基本で、大盛りが150gくらい。お湯はその10倍くらいあると良いらしいので、1人分で1Lくらいの水になる。だから、なんと塩は35g。計ってみるとわかるが、結構な量だ。私はビビりなので、水は2人分で1Lくらい。塩は20gくらいにしちゃうことが多いんだけど。

で、塩を入れないと何が起きるか。比較の対象は、↑の「海水を目標にしてちょっと挫折してるくらい塩を加えた」ものだ。

  • 麺に塩味がないものだから、ソースの味が薄くなる。これはソースの塩気を増せば良いとかって問題ではないし、そうしたら件の記事にある「塩分過多になるのでやめましょう」にならない
  • 麺がふやけるし、腰がない。全体に麺が緩い感じになるし、茹でた時の締まりがない。茹で上がりのタイミングをつかみにくい

ということが起きる。並べて比較とか、何人も集めて二重盲検とかいらないくらい、一口食って「うわっ」って思うくらい顕著に違う。もう話にならない。試してみて、

ここ何年かで最悪

みたいなシロモノになってしまった。俺の晩飯返せ。

件の話をした人達、「うまいスパゲティ」とか知らずに言ってんじゃないの? だって、塩辛いソース使ってりゃ、塩気のないことはそれ程は気にならないだろうし、いつもふやけたような麺食ってりゃ、ふやけた感じの麺は気にならんだろうし。つまり、

失敗したスパゲティとの比較

だと思えば、「塩なしでOKです」という結論に違和感はない。うちでやってみた結果とツジツマを合わせるには、そういったことになるのではないか。

あるいは、私の知らない、ここに書かれてない技巧があって、それを使っていれば旨くなるのかも知れない。でも、ここに書いてあるように単に塩なしで茹でても、茹で上がりは失敗気味になるし、味も薄くて困るレベルだ。

実はこの実験してみたのは、別の「塩いらないかも」の記事の方の影響だったりする。

ゆで汁に塩を入れないでパスタを茹でるとどうなるか

こっちは「別途塩味をつければいらないよ」ということがあったので、むしろこっちを検証したかったのだ。私としても「塩が必要」というのは単なる先入観かも知れないなーとか思ってたし。

ただ、この記事で大変残念なのは、お湯に入れる塩は「1%」だということ。

昔、何かで読んだのは、「日本はスパゲティを茹でる時に入れる塩が少な過ぎる。だいたい海水くらいの濃度で茹でろ」ということ。「ショージ君の料理大好き」には「1%くらい」とか言いながら、「でもテレビで専門家が入れているのを見ると、もっとバサバサ入れてる」とか書いてあったりする。

「1%の塩分」って、作って舐めてみると良いけど、たいそう薄味だ。これくらい薄いと、ソースと合わさった時にはソースの味を薄くする方になってしまう。つまり、「塩なし」とは程度の違いでしかないから、そりゃ差はないだろう。

ソースの味を薄めないためには、ソースと同じ程度の塩分でなければならない。全部がそうなっていると、海水を飲むようなことになってしまうのだが、水が塩辛いからと言って、茹でた麺が同じように辛くなるわけじゃないし、その味は麺の外側についていれば十分だ。

「外側に必要な塩分があれば良い」ということであれば、後から塩をつけても味としては違いはなくなる。あくまでも、味としてはだけど。工程としては「別途塩味」というのは、一番タイミングでシビアなところに、余分な作業を1つ増やすことになるので、あまり嬉しくない。結果が同じであれば、工程は少ない方がいい。つまり、最初から塩を入れておいた方が、楽だし間違いがない。

まー、そんなわけで、マトモに作ったスパゲティと比較していれば、「塩なしでOK」なんて結論は出るはずがない。おそらくは、出来損いのスパゲティばかり食ってる人が、同じようなものが出来たので、「なしでOK」という結論を出してしまったのではないかと思う。

確かに先入観で物事を見るのは良くない。しかし、先入観に反したものが、いつも正しいとは限らない。

PS.

「海水くらい」ってのは今時は流行らないらしい。私がやってる「挫折した」くらいが今時の濃度なのだと。まー、普通の日本人が思ってるよりは、ずっと多いことは確か。