教会御飯(0) 総説

教会のお昼御飯を作る当番になりました。実のところ教会の人達は私のことをよく知らないので、最初は「え?」って感じだったらしいのですが、第一回でとりあえず納得してもらいましたw

と言うことで、当番の任期は1年、回って来る周期は1ヶ月なので、これから毎回どんなものを作ったか、レシピを紹介して行こうと思います。

「教会御飯」とは

多くのプロテスタント系の教会では、「愛餐会」と言ってお昼はみんなで食べます。この時の御飯です。

実はこの「教会の御飯」。単に大勢で御飯を食べるだけですから、簡単なようですが、案外に難しいものです。何が難しいかと言えば、この「みんなで食べる」というところです。

ここでは「教会の話」として書いていますが、同じような性質の「御飯」は他にもあります。同じような御飯とは、

  • 町内会のイベント
  • 親戚の集まるイベント
  • 職場等の家族サービスのイベント

といったものの御飯です。これらに共通するのは、

老若男女入り混っている

という点です。また、同時に大勢集まること、そんなに手間がかけられないということ。技術的にも大したことない人がやるという点も同じです。

この「老若男女が入り混じっている」というのがどういう点で難しいかと言えば、

おいしいものは作れない

ということです。出来ることは、「まずいものを作らない」ということだけなのです。

「まずくなけりゃおいしいんじゃん」って思うでしょうけど、実のところ「おいしい」と「まずい」ってのは、逆ではありません。たとえば、「まずうま」というものがあるでしょ。まずくてもおいしいものって、案外あるものです。

魯山人の本を持ち出すまでもなく、「おいしい」というのは、食べる人に合わせることが必要です。ですから、「ある人にとってはおいしいけど、他の人にとってはそうでもない」というものも珍しくありません。わかりやすい例で言えば、辛いものが好きな人には辛くすれば良いのですが、それを辛いものが嫌いな人に食べさせても、おいしいと思ってはくれないでしょう。このように「おいしい」と言うのは、「誰が食べるか」ということと、深い関係があるわけです。

ところが、「老若男女入り混っている」と、そういった嗜好がバラバラになります。老人にとっておいしいものが、子供にとっておいしいかと言えば、必ずしもそうではないでしょう。そればかりか、特定のものが食えない人もいるでしょうし、体調が良くない人もいます。そういったいろいろな嗜好を持っている人達に等しく「おいしい」と言わせることは、実質的に不可能です。

ではいい加減なものを作っておけば良いかと言えば、そういうわけにも行きません。せっかくみんなで食べる御飯ですから、できる限りおいしく食べたいものです。でも、おいしいものを作ることは出来ないのです。

そこで

まずいものを作らない

という方針を立てるわけです。おいしいことを目指すのではなく、まずくないことを目指す。ちょっと消極的ですが、教会に凄く旨いものを期待されているわけでもないですから、とにかくみんなにとってまずいもの、食べられないものじゃないことを目指して作る。満足度の上を上げることではなく、下を上げることを目指すわけです。

また、手間もそんなにかけられません。

私の教会のスケジュールだと、11時から礼拝で、その後12時半くらいから食事です。礼拝をやっている1時間半くらいの間は自分も礼拝に出ていますから、この時間に支度は出来ません。11時までのところで準備をしてしまって、その後はせいぜい御飯を炊くことが出来るだけです。また、11時までに準備していても、そこで火を止めると、当然冷めます。でも、食べる時にはなるべく暖かいものが出したい。ですから、加熱のスケジューリングも考える必要があります。当然人数はそれなり(うちだと30人)ですから、O(n)つまり人数で手間が増えるようなことは出来ません。O(1)でなければなりません。それでいて、作業者は実質一人。一人で全てをやらなきゃいけない。

作ることに手間がかけられないだけではなくて、出すことや食べることに手間がかけられません。出す時にはいろいろ手伝ってくれる人も増えますが、みんながテクニックを持っているわけではありません。せいぜい、「あるものを食器に載せる」ことが出来るだけだと思っておいた方が良いです。「綺麗に盛って」というようなことは、あまり期待出来ません(「ご馳走」として作った時は別でしょうけど)。食器の種類も知れていますから、基本的には「盛り切り」です。「プレート」みたいなのがせいぜいでしょう(うちはお皿1つだけ)。大皿で出して、めいめいで取り分けということも、ちょっと避けたいところです。

さらに、、これはうちの教会の特殊事情になるかも知れませんが、食材は手で運べる量でないといけません。時間足りないこともあって、家で準備をして運ぶことになります。「秋葉原~中野」と言うと、距離はありますが電車としてはそんなに長時間ではありません。とは言え、うちから駅、駅から教会は結構な距離があります。ここを手で運ぶわけなので、そんなに重くすることは出来ません。さらに、電車ですから、あまり臭いものを運ぶわけにも行きません。

当然ながら、コストダウン圧力は高いです。教会で徴収している「御飯代」は、1人250円です。材料費はこの中に納める必要があります。男料理にありがちの、「腕を食材でごまかす」という類のことは出来ません。

方針

このようにいろいろな制約条件があるところで、なるべく大勢に喜んでもらうためには、それなりの方針を立てる必要があります。ここで私が考えた方針を書いてみます。

  • 刺激物を使わない。具体的には、スパイスを多用しない
  • 全体が濃い味付けにならないものにする
  • 焼きものは諦める
  • 「盛り切り」が可能なものにする
  • 「水」「空気」「ゴミ」は運ばない。特に水は極力運ばない
  • 再現性を重視する。いつもやっているような「適当に」をしない

このような方針であれば、かなり良い感じにやれるのではないかと考えました。

さて、実はこれを簡単に解決する方法があります。それは、

インスタント食品を使う

ことです。インスタント食品と言うのは実にうまく出来ていて、味つけは無難ですし、妙に刺激物もありません。また、運ぶ食材もかなり少なくて済みます。ここに挙げた要件を満たすためには、非常に具合が良いです。

とは言え、インスタント食品は

  • そんなに低コストではない
  • 添加物とか原材料のことが微妙。てか、味の素苦手…
  • そもそも、作ってて楽しくない

という問題があります。ですから、今回はインスタント食品を使うことはしません。とは言え、全く無視するのももったいないので、

インスタント食品はメニューのヒント

として活用させてもらおうと思います。インスタント食品の無難な味のまとめ方とか、結構参考になるものです。

さて、このような背景と方針でレシピを紹介して行きます。なお、私は毎月第一日曜日が当番ですから、どんなものを作っているか興味のある人は、毎月第一日曜日に私の教会まで礼拝に来て戴ければ、食べられますよ。ちなみに、毎月第一日曜日は「ウェルカムサンデー」ということで、新来者歓迎の日です。