刀削麺(2)

この前、刀削麺を作った時から、かなりの高頻度で作っている。

道具作ってしまったからというのもあるが、慣れてしまえば手間は知れているし、工夫次第で保存も利く。非常に手軽な食べ物なのだ。ほぼ毎日のように作っていると言っても過言ではない。

最初はかなり試行錯誤的な要素があり、失敗も結構やった。まぁ失敗と言っても食えない程のものができるわけじゃないが、「これは麺じゃない」的なものも何度か作ってしまった。文献の少ないものなので、水加減からして試行錯誤になってしまっていた。

しかし、情報もその気になって集め、何度もやっていると、いわゆる「ノウハウ」だったり「感覚」だったことも、マニュアル化できるようになって来る。「自分でやるのにマニュアル化はいらない」という声もあるが、マニュアル化できるようにするということは、単に技術の継承のためだけではなく、再現性を上げるのに役に立つ。たまに作るものは「たまたまうまく行く」くらいで十分なのだが、いつも作るものに関しては基本的な部分をマニュアル化して再現性を上げるというのは、後の工夫を楽しむために必要だ。

そんなわけ、現状の「マニュアル」

  • 粉1kgに対して水は400〜450g。保存も考えると、420g。これは保存している間に水が回るため。「黄金伝説」でやってた時は420gと言っていた
  • 水には塩を小匙1杯くらい入れる。塩は小麦粉を練る時に必須なものだが、粉に混ぜるよりは水に混ぜた方が混ざりがいい
  • 水は少しづつ加える。ちょっと加えては均一になるまで混ぜる… というのを繰り返すのがいい。この時は箸のようなもので混ぜる方が楽で均一になりやすいし、手も無駄に汚れない。全部の水を加えた後も、練り始めは「水を均一にする」ことを主眼にする
  • 練るのはパンのように「こねる」のではなくて、ウドンのように「踏む」のがいい。踏めない場合は、圧力をかけて延ばすことを考える。私は手で体重をかけて延ばしている。延びたら折り、また延ばす
  • 適当にまとまったらしばらく(1時間くらいか)寝かせておいて、また練る。こうすると、水が十分に行きわたり、粉っぽさがないので練りやすい。むしろここでの練りが本番なので、その前での練りは「まとめる」ことが主眼でいい
  • 練った後は最低半日は寝かせる。寝かせが少なくても食えないことはないが、あまりおいしくない上に削り難い
  • 寝かせた後は冷蔵庫に保存。腐ったり妙な発酵をしたりするのを避けるため。多少発酵しても食えないことはないが、練り直す必要がある(パン生地みたいに気泡だらけになってる)
  • 使う1時間くらい前には冷蔵庫から出して常温に戻す。冷たいままだとボロボロと堅く削り難い
  • 生地は台に載せたら、ひっくり返してまな板等に押しつけて、平らにする。こうすると削り易くなるし、長い麺に削ることができる。削っている途中でも、削り難い形になってしまったら、遠慮なく整形するといい
  • 削る「台」は生地が貼りつきやすいものがいいので、プラスチックのまな板はやめた方がいい
  • 削る時間、茹でる時間には神経質にならないで、落ちついてやる。一見どんどん茹でられて行くように見えるし、ゆっくり削っていると時差があるので茹でムラができるような気がするが、多少長めに茹でても平気だし、茹で時間は意外にシビアではない。そもそも、麺の太さ自体に激しいバラツキがあるわけだから、時間にばかり神経質になってもしょうがない。落ちついて削れば綺麗に削れる。ちゃんと削れるようになってから茹で加減を心配すればいい
  • 「刀」は必ず用意する。これがちゃんとしていれば、技術なんてなくても平気なくらいだ。ちなみに、店で使っているものの形状を見ると、

手手曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲刃
手手曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲刃
手手曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲刃
手手曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲刃
手手曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲曲刃
手平平平平平平平平平平平平平平平平刃
手手平平平平平平平平平平平平平平刃
手手平平平平平平平平平平平平平刃
手手平平平平平平平平平平平平刃
手手平平平平平平平平平平平刃
手手平平平平平平平平平平刃
手手平平平平平平平平平平

という感じになっている。これは例えば空き缶を斜めに切り開いて歯をつけるという感じで作ることができる。お店のも、適当にステンレスの板をこういった形状に加工しているだけに見える。

これらをきっちり守って2,3回も作れば、もう自宅でお店にあるのと遜色のない刀削麺が作れるはずだ。一見凄そうに見える麺削りだが、「家で食う」程度のものなら、技術でも何でもない。単なる「方法」に過ぎない。