「泣き」は簡単だけどウケる

ハックルベリーに会いに行くより。

0015「泣きゲー」

この人の他のエントリから想像するに、多分わかって書いてると思うのだけど、「泣き」って簡単だ。

まぁエントリ起こす程たいそうな話じゃないんだけど。

もうだいぶ昔に、松本人志が「人間の感情の中で一番上等なのは笑いだ」みたいなことを言っていた。「だから笑いが一番難しいし、一番価値がある」という論を、まことしやかに唱えていた。

このことは何も松本人志じゃなくても、演出な世界では常識だったと思う。学生時代に演出なサークルに関わっていた時にも「泣かせるのは簡単なんだよ。笑わせるのが難しい」と教えられたものだ。人には「泣き」とか「笑い」とかって感情を表現したい「欲」があるのだけど、「泣き」が一番簡単でTPOを選ばない。だから泣かせるのは簡単と。実際、あるイベントで「感動」という名目で観客をぎゃんぎゃん泣かせて見せていた人がいた。

たとえば、葬式の場で笑えるかと言えば、どんなにおかしいことがあっても笑うことが許されない。つまりタブーがある。でも泣く分には「○○泣き」という「○○」によるエクスキューズがあるので、いつ泣いても許される。「泣き」にタブーはない。笑わせるには、時として存在するTPOの壁を超えさせなきゃいけない。

まぁそんなわけで、人には「泣きたい欲」ってのがあって、それは結構強力だ。おまけにTPOは関係ない。ところが、テレビとかで客を泣かせていいのは「感動ドラマ」くらいなものだから、安心して泣ける場はあまり多くない。人は泣きたい欲の欲求不満状態にあると言ってもいい。だからこそ「泣ける2ちゃんねる」とか「泣けるコピペ」とかウケるのだ。「恋空」なんて読むのダルいだけじゃんって思うのだけど、あれは「泣きたい欲」を刺激してるからウケたわけだ。

演出みたいなことを勉強すると、「泣き」は意外な程簡単だし、失敗も少ないようだ(私は片棒担ぎはしたけど演出したわけじゃないから「ようだ」と書いておく)。それに人には「泣きたい欲」があるし、それは潜在的に欲求不満状態にある。だから件のアイディアも多分うまく行くし、もっともっと泣けるコンテンツってのがあるといいんだろうなと思う。

余分なことをつけ加えると↑で「いいんだろうな」と他人事風味なのは、私はあまり「泣きたい欲」がないせいか、悲劇はあまり好きでないから。「感動」で泣くってのも、私はわりと簡単に泣いてしまうんで、わりと満たされていてこれ以上欲しいと思わないから。私は「世の中こんなに悲劇的で悲しいんだから、演出やらお話の世界くらい無条件で笑わせてくれよ」と思うのよね。多分、他人とズレてる。