「10年間は泥のように働け」

恒例となったIPAのIT業界ネガティブキャンペーン大会があったらしい(前回)。

「10年は泥のように働け」「無理です」——今年も学生と経営者が討論

「IT技術者はやりがいがある仕事か」—学生とIT産業のトップが公開対談

テラスイーツな学生とテラスイーツな重鎮のお笑いバトルは、水戸黄門並の予定調和。まぁ学生さんが世間を知らないのは当然だし、夢と希望を持って来てくれるんだから、あまり悪く言うべきじゃない。

表題は件のイベントでの「重鎮」の発言らしい。文脈的には大笑いなんだけど、この言葉そのものは意味がある。

どうせ文脈的には「10年間は滅私奉公して会社人間になってくれ」ってことを、オブラート5枚くらいに包んで言ったのだろう。その辺はこういった「体のいい奴隷の親方」の偽らざる気持ちのはずだ。何せ客先に出せるエンジニアをまともに育てようと思ったら、普通の教育なら3年かかるのだ。教育 -> 回収 -> 儲けというサイクルを考えれば、10年はいて欲しいところ。まぁそういったサイクルに頼っていると「10年たったら消えてね」ってことになるのだけど。普通の「IT企業」なんてのは「体のいい奴隷商人」と大差ないので、こうなるのはしょうがない。奴隷としてペイする年齢を超えちゃったら、「奴隷頭」になってくれないと困る。まぁここで間違えちゃいけないのは、

奴隷頭になるのは一握りのエリート

だけだということ。つまり、「10年」かけて会社人間になったところで、それなりのものになってなかったら、ほぼゴミ扱いなのだ。うまくすれば奴隷頭になれるけど、しょせん「奴隷頭」に過ぎない。私やSE系業界人がIT商売の要だと言っている「マネージャ」になる者も少ない。

ではあるのだけど、発言者の意図から離れて、「10年間は泥のように働け」というのは、キャリアを考えるために意味がある。

私は学校を出てまず、奴隷系IT会社に勤めた。奴隷としては上々で、残業を全部つけられた。お陰で月給は倍あった。当時は最年長の「奴隷」は25歳。つまり、学校を出て3年も勤めていれば長い方だったのだ。

そこを辞めてテレビ局に入った。数ヶ月テレビ部署にいたんだけど、子会社に出向して、通算12年くらい子会社のIT会社に勤めていた。その後、またテレビ関係の子会社に出向になり、そこを2年くらい勤めてから辞めて、前の会社を作った。

自分語りをあまりしてもしょうがないけれど、「社内転職」みたいなことを何度か経験して、それぞれの部署に身体を合わせて来たんだけど、そこで思ったことは

20代の頃の下積み生活

が、結局のところその後の人生やらスキルやらを決めてしまうということだ。場所はいろいろだったけど、「10年泥のように」働いて来た仕事の延長に今の仕事がある。

どんな仕事をするにしても、下積みは必要だ。それにどれくらい時間がかかるかとか、それで何をどう得るかというのは人それぞれなんだけど、全くいらないということは凡そない。また、若いうちは下積みは「若いから」と納得することが出来るけど、歳を取ってからそれは厳しい。若いうちの修行は「いずれ実になる」と思うことは難しくないが、歳を取ってからだと自分の「余命」を考えてしまうから辛い。だから、下積みは若いうちだからこそ出来るのだ。

もちろん下積みだからと言って、完全に日々を流すようなことをしていては、経験は身につかない。下積みには下積みにふさわしく、スキルアップの努力はしなきゃいけない。そういった意味では本当に「泥のように」働いていてはダメで、それなりに自分のキャリアを考えつつスキルアップをしなきゃいけない。また、特定の会社に依存しきったような技術を身につけてしまうのも、程々にしておかないといけない。

でも、そういったことを意識しながらであれば、妙にいろんなことに色気を出すよりは「10年間は泥のように働く」ということをまっとうした方が、その後の糧になる。その期間にどれだけのものを身につけたかで、その後のキャリアは変わるのだ。特にこの業界が好きで、40代50代になっても楽しく働いて行くだけのスキルや発想力を身につけたいと思ったら、20代はトレーニング期間だと割り切ってもいいくらいだ。もちろん「ダービー馬」みたいに若いうちから能力を発揮する人もいるだろうけど、そういった人はそういった人で上手にスキルアップしておかないと後が続かなくなる。

だから私はあえて、件の重鎮達とは違う意味で、「10年間は泥のように働け」と言う。ただし、

キャリアプランを考えながら

だけどね。

PS.

実は昨夜、ITProの方の記事を書いた高橋記者と飲んでいた。まぁ私と高橋さんの会話だから、FOSS界隈か件のネタ界隈なるわけで。連載の話になった時に「たまにはOSS離れて業界ネタでもいいですよ」ということだったので、これは件のネタで書けという暗示か?!

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This entry was posted on5月 29th, 2008 at 13:43:59. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0. Both comments and pings are currently closed.

3 Responses

Comments(1)Trackbacks(2)

  1. kumakuma1967

    20年前は泥のように働けば給料(残業手当)は出す、だったけど、今は泥のようにタダで働けなんだよね。
    自分の将来のためにサービス残業する奴がいたとしても、「それは仕事じゃない」んだからそれについてうだうだ口出しすんなよなー>重鎮。

     20年前は労基法に引っかかるのをなんとか誤摩化して全部金に換えて渡すのが重鎮の仕事だった気がする。

    2008/5/29 木曜日 21:09:44 | #1
  1. tueda's diary より:

    10年は泥のように働け…

    経営者側も学生側も「どっちもどっち」やなあ,とは思いました.…

  2. 起業ポルノ より:

    「泥のように働け」の経営者に学ぶ人事雇用術/人事雇用【6】…

    学生に対して「まず10年間は泥のように働け」という経営者たち。彼らから、もし起業した場合に経営者として求められることが、4つばかり学べたので、順に書いてみようと思う。 …

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    ただのプログラマです、ハッカーではありません。

    秋葉で暮し秋葉で仕事してますが、秋葉系は嫌いです。物事を冷静に分析することは好きですが、ニヒリストは嫌いです。

    秋葉でちっこい会社をやってます。 こーゆーことがお仕事です。

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