男子3日会わずんば括目してあいまみゆべし

遅ればせながら、西田君の「Googleの技術」を買った。

本の内容はあちこちで紹介されているので、割愛。重要なのはこの本が西田君の手による本だということ。

私が「西田」と書くのは、彼が私の元部下の一人だからだ。そして、この感想もその当時の彼を思いながらのことだ。

彼は元々凄く出来る奴だった。でも、正直なところもて余し気味だった。何しろ

  • 技術は凄くある(ようだ)
  • 移り気でわがまま
  • 進捗報告がタイムリーでない

ということで、典型的な「出来るけど使いにくいバリバリのハッカー」だったわけだ。某社には既にその地位にはmatzがいるわけなので、零細企業にそんな奴何人もいても困るなぁというのが正直なところだった。実は彼のことを知る、「某ハッカー」が彼が入ったことをかぎつけてたんだけど、「よく彼を雇う気になったね」とか言われたもんだった。某ハッカー的にも使いにくい人という評価だったようだ。

何しろ頭いいし手も速いし、当時の彼は「何をしたい」ということあまり主張してなかったから、多少の難しそうな仕事を与えておいても、すぐ片付けてしまっていた。それはそれでいーじゃんという話もあるのだけど、零細ベンチャーに回って来る「難しい仕事」なんてのは適正価格じゃなかったりするから、それで会社が儲かるというものでもなく、ひたすら彼の手の速さゆえに彼の給料が賄えるという状態だった。まぁ別に彼が一人で儲かる必要はないのが正しい経営なわけだけど、「バリバリのハッカー」なんてのは、

おかずになっても飯にはならん

ので、おかずばかり余ってしまうことになる。おかずだけじゃもちろん腹は膨れない。

彼は確かに天才の一種だと思っていたし、大事にしたいと思っていたんだけど、諸伴の事情で辞めてしまった。この辺のことについてはいろいろ思うところがあるんだけど、それは書かないでおくのが大人。個人的には「ああ、もったいない」と思ったものだったけど(いろんな点で私に似てるからなおのこと)、何しろあてがう適当な仕事がなかったし。某社の彼の一番の成果は、

COBOLコンパイラを作る

ということだったりする。

で、その後いろいろあって現在に至り、件の本が出るわけだ。

件の本を読んで思ったのが、表題の言葉だ。三国志に出て来る言い回し。もう掛け値なしでストレートな感想がこれだ。

だって件の本を読めば、「移り気でわがまま」なんてことも、「文書(進捗報告とか)を書かない」なんてことは、ぜんぜん想像がつかないと思う。よくあれだけのことを、「ちょっと情報処理が専門です」程度の学生でも理解出来る程度にまでうまくかみ砕いて書いたもんだと感心する。本なんて多少難しくても1時間程度で読んでしまう私が、4時間くらいかけて読んでしまった。うっとおしい感想かも知れないけど、

あの西田君がここまで成長したんだ

と感激しながら読んだのだ。

で、いつの間にここまで成長したんだろーなーとか思ってたら、

ものを書くというのも面白いよ

なんてことを書いてるわけで、ああやっぱり目覚めるところがあったのだなぁと、納得したところ。件のエントリなんかも往時の彼を知っているから、なおさらびっくり。

ネットにいると、「元部下」とか「後輩」とかに会うことは少なくないと思う。あるいは特に後輩でなくても、コミュニティ的に後から来た奴とか。1対1の立場関係なんて「最初にどう出会ったか」がずっと続いたりして、私なんかだと「松本」に「西田」という把握だったりするんだけど、彼等の「中身」なんてどんどん変化している。「男子3日会わずんば括目してあいまみゆべし」なのだ。今さら呼び方を変えたりするのもおかしいから呼び方はそのままだけど、

敬意

の部分は成長に従って変えなきゃいけない。

「元々の力関係」なんてのは、しばらく会わなかったら無意味になってるものなのよね。「元上司」なんてのは、しょせん「元」に過ぎないからね。

PS.

と書いていたら、お返事エントリが。まぁそう言ってくれるのはありがたいことです。