Googleの問題点

夕刊フジより。

大前研一の「IT時評」検索広告は頭打ち?

大前研一はネットではすっかり「電波おじさん」的な扱いを受けているけれど、時々鋭いことを言う。件の記事も大筋的外れながら、実に鋭いことをつっこんでいる。

的外れなのは、ビジネスウィークの「検索広告という収益モデルは頭打ちなのではないか」という点。私も確かにこのモデルに未来はないと思っているけど、少なくとも現状の「事実」としてはそれを裏付けるものはない。実際Googleもそれなりに業績伸ばしているから、「頭打ちなのではないか」と言われれば、「否」と答えるべきだ。

このモデルに正直なところ「未来」は感じない。なぜなら、

広告とはの体いいspam

ということから脱していないから。とは言え、「spamなる広告」が無意味になることはないだろうし、「spam」に勝る「未知との遭遇」もない。そうすると、「頭打ち」が来るとすればコストパフォーマンスによる部分があるだけだ。だから、ビジネスウィークの言うのもおかしいし、それを肯定的に言う大前研一も同じ間違いをしている。

ではどこが「鋭い」かと言えば、

私は、今のグーグルにはあまりにもたくさんのアイデアがありすぎるのではないかと思います。それによって焦点が絞れず、あぶはち取らずになっているのではないでしょうか。

という点だ。これだけ見ると当たり前のことにしか思えないかも知れないが、実に広い範囲のことを言及している。例によって3つ要点を挙げれば、

  • 技術先行、アイディア先行なサービスが多過ぎる
  • 技術やアイディアに対するマネージメント不足
  • 「金」にする部分の不足

ということ。いずれも金があるから許されているだけで、金のないところが同じことをやれば指弾されるはずのことだ。

確かに、技術やアイディアが満ち満ちていることそれ自体は悪くない。しかし、それらがマネージされていなければ、「商品」にならない。また、「商品」があってもそれを売らなければ「金」にならない。この、経営としてごく当たり前のサイクルが切れ切れになってしまっているのが今のGoogleの問題点。それが引用した文章の後半にある「焦点が絞れず、あぶはち取らずになっている」ということだろう。

これはGoogleに限らず、いわゆる「技術先行」の会社が同様に陥る問題でもある。

技術やアイディアなんてのは、車で言えば「エンジン」みたいなものだ。方針が1つで真直行くだけであれば、エンジンは馬力があればある程いい。でも、車は真直進むだけじゃだめだ。カーブもあれば坂もある。そういったところを速く駆け抜けるためには、ハンドルやブレーキ、またそれを操る「人」が重要になる。

つまり、技術やアイディアに優れる会社ほど、マネージメントや営業、またそれをつなぐ経営が大事になって来る。そういったものがうまくバランスしてなければ、単なる「じゃじゃ馬」になってしまうだけだ。ハンドルやブレーキがpoorでエンジンばかりが強力な車なんて、恐くて乗れない。

Googleの便利そうなサービスはたくさんあって、使うと便利そうなんだけど、どうもorkut以後のものは信用出来ないでいた。それは自分が単にアンチグーグルなだけだと思っていたんだけど、件の文章で納得出来た。「不安な車」は恐くて乗れないという、ごくあたりまえの話。