日経Linuxの暴走 — 頑張れ森側さん

献本で送ってもらっている日経Linuxの最新号(6月号)が来た。

いつも通り読んでいると、今月はちょっと異様な感じだった。何が異様かと言えば、「エンタープライズ」な特集が1つあること。多分これは日経コンピュータ編集部から移って来た森側さんの影響かなとちょっと思ったのだが、個人的にはなかなかいい。

かつていくつもあった「Linux雑誌」は、とうとう日経Linuxだけになってしまった。似たような本をゴチャゴチャ買わなくて済むのは結構なことなのだが、紙メディアによる情報源が1つになってしまうというのは、全ての情報がその情報源次第ということになってしまう。もちろんFOSSの情報はネットが一番速いのはあるけれど、速報性があまりいらない解説記事は、いまだに紙の方がわかりやすい。

ところが、しばらく前から日経Linuxは

Linuxをおもちゃにしたい初心者向け雑誌

になっていた。「日経」とついていながら、あまりビジネス色はないし、そういった方面の情報はあまりなかった。SoftwareDesignも技術情報については充実しているのだけど、どうも技術ベタベタ過ぎて「その領域ならネットの方がいいよ」という、ちょっと居場所間違えてる感があった。

そんなわけで、購買意欲をそそるような雑誌があまりなくて、「特集が面白かったら買うか」という程度になっていた。元より紙メディアが不況にあるわけなので、「読むべきものがないなぁ」というのはみんな共通のことではなかったかと思う。

でまぁ今月の日経Linuxはそういった「今までの」ものとはまるで違う、「異様」とさえ思えるくらい場違いな特集だった。でも、これが私の目には非常に良い方向転換に見える。なぜなら、他にはあまり「エンタープライズ」な記事がなくて、せいぜい「日経コンピュータ」くらいなものだったからだ。

もちろん今見ると、周囲の記事から浮き過ぎていて「異様」な感じさえする。だけど、もしこの方向にも舵が切れるなら、単なる「Linuxをおもちゃにしたい初心者向け雑誌」から「ビジネスを志向した雑誌」に変化することが出来る。

実はこれは「日経Linux」が創刊した時に期待していたことだ。何しろせっかく「日経」とついているのだから、やはりそういった方向を期待していた。それをどう「間違った」か初心者雑誌になってしまっていて、他の雑誌との差がなかった。結果的に最後まで残ったのだけど、他が生き延びていたら没個性なままだったと思う。それが「日経」らしい雑誌になろうとしていることで、評価したいと思う。