半可通にならない方法(2)

(1)」での話は要するに、

謙虚になる

ということにまとめられてしまう。

ひたすら教えを受ける時には、それでいい。知識の流量は「態度」の差に比例するようなので、ひたすら謙虚に教えを受けていれば、それに合わせるように知識は流れ込んで来る。それはそれで結構なことなのだが、それでは仕事にならない。知識が不十分であっても、仕事はしなければならない。不十分ながらも知識をふり回さなければならない時だってあるのだ。

そこで大事なのは、知識をふり回しつつも、半可通と見破られないことだ。ところが、「わかってる人」から見れば、こいつはわかってて知識をふり回しているのか、それとも半可通でふり回しているのかは、すぐわかってしまう。だから、「見破られない」ということは、半可通なるふまいをしないで知識をふり回すということである。

そこで私の心掛けの第一は、

早く自分の土俵に持ち込む

ことだ。相手の専門をベースに話が進む限り、どこまで行っても「アウェイ戦」になってしまう。凄い実力があればアウェイでも勝てるかも知れないが、何しろこっちの中身は半可通でしかない。となれば、いつまでもグズグズとアウェイをしていては勝負にならない(別に勝負じゃないけど)。早く自分の土俵の持ち込んでしまわなければ、勝ち目はない(別に勝負じゃないけど)。

こっちは別に相手の世界のエキスパートになる必要はない。相手の話が理解出来て、こちらの仕事が出来るように昇華できればいい。もちろんそこに至る知識を持つこともそんなに簡単ではないのだが、グズグズと相手の専門分野の中にいるよりは、早くそこから脱出して自分の土俵に持ち込んだ方が、相手も喜ぶはずだ。

自分の土俵の持ち込む時、自分だけの力を頼りにする必要はない。まだ相手の土俵にいる時は相手の力を頼る方がいい。そこでやはり「質問」という形で、こちらの提案をして行く。「〜と考えましたが、いかがでしょうか?」という調子だ。もちろん相手はこちらの専門については素人のはずだから、「提案」の中身は相手にわかりやすいようにしなければならない。とは言え、こちらと話しようという相手なのだから、全くの素人でもないはずだ。それを頼りに提案をする。相手が難しくて理解出来ないようであれば、さらにわかりやすくするように努力して、とにかく相手にわかってもらう。そーっとそーっと相手の土俵からおびき出して、こっちの土俵の持ち込む。そんな感じでいい。相手には「無理やり引き込まれた」と感じさせないで、「自分から入った」と思わせる… というのは高度な技なので、難しいけど。

こっちの土俵に持ち込んでしまえば、もうこっちのものだ。

第二に心掛けていることは、

お互いの知らない領域に持ち込む

ことだ。お互いが知らない領域なら、誰の土俵でもない。そこの勝負に持ち込む。具体的には「これから」の話に展開して行くとか、隣接領域の話に展開するとかだ。

ある専門家が、別の世界の専門家に仕事を依頼する時は、自分の専門領域だけでは問題が解決しない時である。つまり、相手にもわからないから仕事になっているわけだ。相手のやりたいことは、素人相手に講釈垂れることではなく、問題を解決することだ。そして、その「問題」は、相手も答えを知らない。

問題解決の一歩手前までは、相手だけでも行ける。だから、そこまでは連れて行ってもらえる。その先には相手だけでは行けないのだから、「その先」については相手も素人なはずだ。その一点に絞れば、頑張れば何とかなる。「その先」は既に自分の土俵の一部でもあるはずだ(でないと仕事は来ない)。その領域まで行けば、「要するに何をどうしたいのですか?」という身も蓋もない質問だって許されるし、その質問の答えは出せるはずだ。

第三に取る戦略は、

相手より詳しくなってしまう

ことだ。いや、もちろんそれが出来れば誰も苦労しないのはそうなのだけど、それもちょっとした「トリック」を使えばそんなに難しくないこともある。

もちろんこれは相手のレベルにもよるわけで、相手がとんでもなく偉い人なら、この戦略は諦めた方がいい。しかし、普通のレベルならやってやれないことはない。たとえば、

  • 最新動向
  • 海外動向
  • 周辺動向

あたりは、案外知らない人が多い。特に実務経験が長い人ほど、こういったものへのヲチは怠ってしまっていることが多い。また、こういった「エッジ」な部分は、いろいろな情報にあふれているため、うまく整理されていないことが少なくない。だから、こういった領域をうまく整理すれば、その領域に限っては相手よりも詳しくなることは可能だ。また、そういった領域をうまく調べていれば、相手からは「そこまでこちらの領域のことを勉強してくれているのか」と歓迎される。

相手の専門領域で相手の知っていることについて知識をふり回してしまうから、「半可通」になってしまうわけで、相手の専門領域であっても相手の知らない領域であれば、その知識を発揮させても半可通だとは思われない。それどころか喜ばれるのだ。

とは言え、どこの世界にも「銀メッキされた鉛の弾丸」というものはあるので、銀メッキに騙されて講釈垂れてしまえば、結局半可通の謗りは免れない。そこは相手に「質問」をすることで、うまく察知することだ。たいていの人は「ダメだったもの」については詳しいものだ。

あらためて整理すると、

  • 謙虚にかわいく、疑問点は素直に質問
  • 早めに相手の土俵から出る。出来れば早く自分の土俵に持ち込む
  • 自分の得た知識の効果の最大化をはかる

ということだろうか。そうすれば、足りない知識をふり回さなければならない局面であっても、半可通にならないで済むはず。

PS.

肝心なことを1つ忘れていた。それもかなりコストが低く、わりと簡単で誰にでも実行出来るはずのことだ。それは、

他の専門家の手を貸りる

ということ。直接の相手ではない、それでいて相手と同じ専門を持っている人に助けてもらうのだ。自分の頭だけでは足りない時には、他人の力を貸りれば良い。

まぁそんな時も正直に「○○さんにも助言をもらいました」と白状してしまえば、受け売りの知識をふり回しても「かわいい奴」と思ってもらえる。もちろんハッタリをかまし通すことが出来ればそんなことを白状する必要はないが、たいていは失敗する。やっぱり「かわいさ」は残しておいた方がいい。どうせこっちは、せいぜい半可通だ。

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This entry was posted on10月 16th, 2007 at 22:30:01. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0. Both comments and pings are currently closed.

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