著作権延長論者は「惑星」を聞け

iPod touchはiTunesが内蔵されている。

これがなかなか危険物で、暇潰しにWi-FiつないでiTMSを視聴していると、つい購入してしまう。DRMがついててコピー回数制限があるとゆー扱いの面倒臭さのことも忘れて「つい」買ってしまうのだ。

iTMSの「クラッシック」のところを見ると、「惑星」がいくつかある。また「ジュピター」という名前で「木星」だけの抜粋があったりする。

かつて、冨田勲の「惑星」が出た時、「惑星」はまだ原著作者であるホルストの著作権が残っていた。「惑星」というのは厄介な曲で、一切のアレンジが禁止されていた。それどころか、オーケストラ編成まできっちり決まっているし、「海王星」にコーラスがあるのだが、それを省略することも出来ないし、「木星だけ」という抜粋演奏も出来なかった。ホルストはそういう制限を設けていたのだ。

冨田勲はシンセサイザーであの演奏をする時、遺族にかけあって許諾をもらったらしい。この辺の話はLPの「惑星」の解説に出ている(ライナーノートは糸川英夫)。

それからしばらくして、ホルストの著作権が切れ(ホルストは1934年没)、このような制約が取れた。その後は様々なアレンジや抜粋演奏が大手を振って行われるようになった。特に「木星」は人気が高く、オーケストラだけではなく、オルガン、ブラスバンド、バイオリンソロ… 歌謡曲にまで拡がり親しまれている。

ホルストは別に意地悪でそういった厳しい条件をつけていたのではないらしい。自分の他の作品との「コントラスト」を意識していたり、あまりのスケールの大きい題材であるが故に、過大評価を受けるのを嫌ったとか、そういった理由らしい。ホルストの没した1934年は、まだ「宇宙」どころか、飛行機もやっと実用になった時代である。

それから冨田勲の時まで、ホルストの遺志は守られ、編曲も抜粋演奏もされなかった。時代は、アポロ計画が終わり、「宇宙計画」が実用化の時代になっていたから、そういったイメージにぴったりのこの曲なのだが、ホルストの生きた「宇宙=あの世」のイメージに留まっていた。

冨田勲はそういった「現代〜未来のイメージ」でアレンジして成功を納めた。この時、ホルストの遺族がそういったことを理解せず、「ホルストの遺志」にこだわっていたなら、その成功はなかっただろう。「冨田の惑星」はそういった意味では非常にラッキーであった。

50年という時間は、「時代の変化」という目で見れば十分長い。ホルストのイメージの中の「惑星」と、50年後のイメージの「惑星」はまるで違う。50年たってやっと著作権が切れ、そういった「新しいイメージ」での演奏が自由になった。その「自由」によって、「惑星」はより親しまれ、ますます名曲となったのだ。

これが「70年」とか「100年」であったらどうだったであろうか? 新しい時代に乗り損ねて、再評価のタイミングを逸してしまっていたかも知れない。

たまたま、「惑星」の場合は遺族に理解があった(娘も音楽家である)から良かったのだが、そうでなかったらどうなったであろうか?

そういったことを思うと、「遺族のために」といたずらに著作権の有効期間を延長するのは、「作品(=作者)のために」ならないのではないだろうか?

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This entry was posted on9月 25th, 2007 at 17:42:25. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0. Both comments and pings are currently closed.

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