国保の払いが厳しいので、社会保険に入ってみた。
と言っても、ことさらに安くなるというのではなく、「払いの半分が経費にできる」ということに意味がある。年金なんぞは、むしろ国民年金の方が安いくらいだ。
通常こういったものに入るには、「社会保険労務士」なる人にお願いするものだ。そこにアウトソースしてしまえば、いくらかの支払いで手続きをやってくれる。個々人の掛金の計算はそれなりに厄介なので、「餅は餅屋」でやるのが世間の常識だ。
とは言え、どうせ一人の事務所だし、社会保険事務所はお散歩コースなので、自分でやってみることにした。なーに、間違えたところで命までは取られまい。
まずは、社会保険事務所に行く。上野の社会保険事務所は、税務所の隣り。不忍池のほとりにある。
ここにおずおずと入ると、受付みたいなところがあるので、「新設法人なんで、適用事業所の届けをしたい」という意味のことを告げる。用語が多少間違えていたところで、どうせこっちは素人だし、向こうはそれを補完するのが仕事なんだから恥ずかしがることはない。つか、こんな手続きは、
自分でやる人の方が少ない
のだから、素人であることを恥じる理由もない。
そうすると、書類をくれるので、「これに書いて来い」と言われる。その時についでに「被保険者の届けもしたい」旨を告げると、その書類もくれる。扶養のある人はそのことも言うと、その書類をくれる。
書類をもらうと「書き方は大丈夫か?」と聞かれるのだが、それは「書けるところは書いて来ますから、わからないところを聞きます」と言うと納得してくれる。
だいたい、この手の書類のほとんどの記入事項は、
住所と名前
である。そんなものを一々その場で書いて手間を取らせるのも申し訳ないから、そこだけでも帰って書いて来るといい。
そこで帰ってしまうのだが、ここでもらった紙は使わない。
いや、私は使うつもりでもらって帰ったのだが、途中で書き損じてしまったので、「もしやPDFとかネット上にあるかも?」と思ったら、ちゃんと存在していた。社会保険庁のページに行くと、
というページがあるので、ここで書類は落とし放題だ。これでいくら間違えてもへっちゃらだ。
ここにWordファイルがあるのを発見する。「Wordファイルがあればそれで書けばOKじゃん」と思って開くのだが、このWord腐ってる。どう腐っているかと言えば、
余白を埋めて書くことを全く考慮していない
のである。何か文字を入れようとすると、ズレたり場所がおかしかったりで、とても使いものにならない。要するにこのWordは「印刷して使う」ものであって、編集して使うものではないということだ。
ということなら、いっそPDFの方をいじる方がズレない分安心なので、Acrobatを取って来て、そっちをいじる。
まずは「新規適用届」であるが、一番面倒臭い「所在地」だの「名前」だのを埋める。
あとは当たり前のことを当たり前に埋める。「わからないこと」もあったりするのだが、そういったものには「※」がついていて、「記入しないでください」なんて書いてある。
地図を書くところがあるのだが、ここは適当にネットの地図をコピペしてしまえばいい。
「わからないことは聞けばいい」と思っていたのだが、思いのほかわからないことはない。「社会保険労務士」についての欄があるが、自分でやってりゃそこを書く必要はない。これで事業所としての届出書類は完了。
次は「被保険者資格取得届」である。
これも重要なのは、いわゆる個人情報だ。「性別」が6種類もあるのにびっくりするが、裏にどれに○をするべきか書いてある。どうも社保庁的には「炭坑員」というのは別の生物だと認識されているらしい。料率等も違う。
既に年金手帳を持っていたりすれば、基礎年金番号がわかるから、ここも埋めておき、7の欄は「再」になる。持っているのに書かなかったりすると、例の年金問題みたいなことが起きるわけだ。とは言え、窓口で「持ってるはずだと思うんですが、どうも見当らなくって」とか言えば、ちゃんと調べてくれる。
「報酬」は総支給額を書く。
これで資格取得届は終わり。簡単だ。
扶養とかある人は「健康保険被扶養者(移動)届」なる書類も出す。これもPDFをいじればいいんだが、複写の紙なので手書きすることにした。窓口で聞いたら、これも専用の紙でなくても様式さえ合っていれば印刷でもいいらしい。
この他に、保険料を口座引き落としにしたい場合は「保険料口座振替納付(変更)申出書」なる書類を作る。これも住所やら名称やらが主なのだが、一番大事なのは、
銀行に持って行って確認
をしてもらわないといけない。つまり、引き落し口座のある銀行に持って行き、処理をしてもらうわけだ。なので、必要事項を書いて、まずは銀行に持って行く。今時は銀行でも案内係の人がいるので、「保険料口座振替の確認」とか言えば、適当にやってくれる。
で、どの書類にも言えることだが、わかるところだけ埋めて、無理をしないで窓口に持って行く。これが一番大事なことだ。
これ以上ないくらい当たり前なのだが、こっちは素人だ。素人が無理してわからないことまで埋める必要はない。たいていの事項は受付係の人が親切に教えてくれる。私は頑張ってほぼ完全にして持って言ったつもりなのだが、結局受付係の人の指導を受けろと言われ、若干の修正を受けることになってしまった。でもその時に、あやふやだったことをいっぱい聞くことが出来たので、非常に勉強になった。
とまぁそんなわけで、「社会保険労務士」なる人にアウトソースしないでも、社会保険に加入することは簡単に出来てしまった。だいたい、社会保険労務士を探すという時点で、かなり気分が萎えてしまうものなのだが(*1)、こんなもの
自分でやってもどうってことはない
のだ。だから、フリーランスやら個人事業主やら零細企業やらやってる人は、どしどし自分で届け出てしまうといい。国はそんなことをする人をサポートするために、役人を抱えているのだから、使わなきゃ損だ。
PS.
後にうちの部屋の1フロア下に社保労士事務所があることを発見する。これ以上はないってくらい、灯台下暗し…