素朴な疑問「スクラッチ」

レコードの頭出しをする時に、板に針を載せた状態で強制的に手でターンテーブルを動かす行為を「スクラッチ」と呼ぶ。

そういったものを扱う人達にしてみれば、ごく日常の作業でしかない。昔は私もいっぱいやったもんだ。今ならデジタル素材の頭出しなんてどうとでもなると思うのだが、アナログ素材の時にはこうするしかない。テープの時も似たような方法で頭出しをする。

もちろん今時はそんなことをしなくても頭は出るし、そうやって苦労しなくても曲はつなげる。でもなぜか世間ではあれは、「かっこういいこと」とされている。

放送屋のセンスで言えば、あの「ぎこぎこ」って音を出してしまうのは、とってもダサい行為だ。あの音は「舞台裏」のことであって、皆様にお聞かせするものは、「ぴったり頭の出た音」であって、そのための「準備」をバラしてしまうような行為は、ダサいのだ。

正しくはピッタリと音頭に合わせるのではなく、回転が安定するまでの時間を考慮していくらか前に戻しておく。まぁピッタリ合わせてから、「だいたいこんなもの」だけ前に戻すだけなんだけど。だから「ぎこぎこ」という音も、回転が安定するまでの「うぉ〜ん」も外には聞こえない。それが「普通」だった。

なんであんなものが「かっこういいこと」になっているのだろう。しかも、わざわざCDでああいった頭出しをするようなメカがあったりする。私の目には「お化粧途中で出掛けた」ようにしか見えないんで、「かっこういいこと」とは程遠いように見えるんだけど。