教会御飯(番外) 手軽な糠漬っぽい味のもの

(2)で書いたように、私が教会の御飯作る時に漬物をつけている。

ああいったところの御飯の「漬物」ってのは重要で、塩分の調整が楽になる。

いくら万人に合うような味付けを目指したところで、そこはやっぱりしっくり来ないとまずい。かと言って、塩分に求めるものは、人それぞれ違うので、味付けはやや薄目に作っておいて、足りない部分は漬物で補ってもらう。

ということで、漬物をつけるのだけど、買って来る漬物はいろいろとビミョーだ。

もちろん「良い漬物」ってのも世の中にあるのだけど、スーパーで安く売ってる漬物は、原料が酷かったり、添加物が酷かったりするので、あまり嬉しくない。てか、そんなにおいしくもない。

かと言って、自分で漬けるとなるとなかなか大変で、月に1度30人が食う程度の漬物を常時生産するのは、それはなかなかに大変なことだ。

ということで、手軽に漬けられる漬物を考案した。って、(2)でチラっと書いたのだけど、漬物だけ整理してあらためて書いておく。

野菜はまぁ何でもいい。扱いやすさから言えば、キュウリとか大根とかのように、糠漬に使うものが良い。白菜とかも悪くはないと思うのだけど、あれは前処理が必要になって「手軽」ではない。ほどほどに密度があって、塊状のものが扱いやすい。

まず、野菜を洗って切る。大根だと銀杏切りがかわいらしくて良いし、キュウリだと輪切りとかその半分とか、そういった感じにする。

これに塩をまぶす。分量はまぁ適当だけど、だいたい料理の塩分は2~5%の範囲だと思っておけば良い。5%は相当に辛いし、2%はおかずとしては物足りないので、どのあたりにするかはお好みで。ちなみに、海水は3~4%だ。

特に水とか入れず、他に何も入れず、ただ野菜に塩をよくまぶして、器に入れる。器は鍋でも良いし、よくキムチとか入れて売ってるプラスチックの容器でもいい。これを「涼し目の常温」に置いておく。もちろん蓋はしておくように。

1日くらいすると、しなっとなっている。それから先は日を追う毎に柔らかになる(限度あるけど)。ただし、この段階では「単なる野菜の塩漬」である。だから、あまりしっかり漬けても歯切れが悪くなるだけなので、数日で食ってしまった方がいい。

ここで液体が残っているはずなので、これを元に次の野菜を投じる。液体の味や漬けた野菜の味をみて、塩分をさらに調整すると良い。

これを常温で置いておくと、だんだんに乳酸発酵して来る。単なる「野菜の汁に塩味がついたもの」から、「酸味を持った漬物の液」に変化する。ここに至ることが出来れば、後はこの液体が腐らないように、発酵しすぎないように維持して行けばいい。野菜を入れて食うだけだ。2,3日もすると、立派な漬物を生産してくれる、魔法の液体が出来る。

私が「起動」した時は、(2)の段階で既に酸味があったので、1ヶ月ほど冷蔵庫に入れておいた。この辺は何分にも天然物を頼りにしているので、いろいろあるだろう。カビとか生えたら、遠慮なく捨ててやり直せばいい。元が塩と野菜の水気だけなので、いろいろ考える必要がない。早く酸っぱくした方が勝ちだ。

乳酸発酵は嫌気性発酵なので、糠床のように「かき混ぜる」という必要はない。野菜を放り込むだけだ。また、乳酸発酵すると、他の雑菌は育ちにくくなるので、うまく起動してしまえば、あまりカビとかに神経質になることもない。ただ、液から出ているところがあると、そこにカビが生えたりするので、時々器ごと振ってやるとかして、液からあまり出ないようにしてやるといい。何か工夫して沈めてしまうのも良いかも知れない。

当然、やっているうちに野菜から出て来た水分だけ液体が増えて行くので、適当なところで捨てる。ただ捨てるのがもったいないと思えば、何か料理に使えば良い。この漬物は要するに「水キムチ」の一種なので、冷麺(ネミョン)の汁に使えばちょうどいい。発酵しすぎも困るので、野菜入れる度に減らすようにするといい。

この液体は、野菜を入れて2日もすればちゃんとした漬物になっているので、なかなか便利だ。当然ながら、材料とか工程はオープンになっているから、漬物を買って来た時のようなビミョーな思いをしなくていい。

PS.

安全確実に起動させたければ、最初に少量の酒粕を入れると良い。

この酒粕は「バラ粕」とか「板粕」とか言われる、薄くてバラバラした奴。油ねんどみたいなのは「練り粕」と言って奈良漬作る用だと思っていいが、これは乳酸菌の活性に問題があるので、失敗するかも知れない。バラ粕や板粕はだいたい乳酸菌が生きている(ついてに酵母も生きている)ので、問題なく起動すると思う。