移動体放送をフェルミってみる

NOTTVが面白いらしい。

【終わりがおっぱじまった】あまりにもひどいNOTTVの惨状まとめ

いわゆる「アナログテレビの跡地利用」でのデジタルストリーミング放送なのだけど、そもそもこれは必要なのか?

近頃、iPhoneのTuneInが便利なので、車の中ではそればかりを聞いている。まぁ、乗って1時間なので、そんなに長い時間ではないのだけど。

これはよく考えるとこれは贅沢な話で、携帯電話とゆー貴重なインフラを、ラジオとゆーマルチキャストでも十分なアプリケーションのために、ユニキャストで使っているということだ。これが随分と贅沢な使い方であるということは、都内(15号線)を走っていても、時々切れてしまうとゆーことで気がつく。まぁSBMだしw

じゃー、それは本当に贅沢なことで、ラジオ用のインフラを用意して、マルチキャストでやれば効率が良いのか。つまりは、NOTTVみたいなものが本当に必要なのか、ちょっとフェルミってみる。

私はカーラジオ感覚でTuneInを使うので、車道がカバーされれば良いものとする。

車がラジオを使うのに必要な帯域を考えると、狭く見積って48Kbpsくらい。広く見積って1Mbpsくらいだ。AMラジオ音質であれば前者でいいし、CD音質を無圧縮だと1.5Mbpsくらいだ。今時ケチケチしてもしょうがないから、1Mbpsくらい取ろう。

そうして無線LANの帯域を考えると、50チャネル(11a, 11g)はすぐ取れるし、今時のであれば600チャネル(11n)くらい取れる。

車の長さはとりあえず5mくらいにする。まぁびっしり並ぶわけじゃない。とすると、100mで20台。6車線で120台だ。

つまり、ハンドオーバーを考えて、100m間隔で置局すると、1つの基地局は240台カバーすれば良いことになるので、結局無線LANくらいの帯域が確保出来れば良いことになる。大雑把な話、無線LANの基地局をPHSの基地局のように配置して、光ファイバーでつなげば、ハードウェア的には解決がつく。ちなみに、ウィルコムの基地局数は16万あるらしい。

また、これは大きい方の見積りで100%の利用率とゆー条件だから、実際にはもっと小規模でもいい。

とか考えると、汎用移動体IP網を用意すれば、移動体放送にユニキャストな通信方法を使うことは、殊更に贅沢なものではないことがわかる。もちろん無線LANの帯域がそのまま使えるわけではないけれど、適当な周波数帯を用意してやればいい。たとえば、WiMAXをマイクロセルで使えばいいのかも知れない。ハンドオーバーのこととかは、いろいろ考える必要があるだろうけど。

「マイクロセル」でひっかかる向きもあろうけど、どうせある程度帯域の取れる周波数帯はそんなに飛ぶわけではないし、端末側の消費電力のことを考えれば、そんなに出力が出せるわけでもない。また、マイクロセルの方が帯域の利用効率もいい。「アナログ跡地」みたいなところで大きい送信所を作るのは、帯域の利用効率としては低い。

これで良いのは、あらゆることが現状のインターネット設備で足りるということだ。つまり、「移動体放送局」といったものは全く必要がなくて、単なるストリーミング放送局でいい。つまり、YouTubeやニコ動やUstreamでいいし、個人が勝手に作ることも可能だ。つまり、コンテンツについて悩む必要がない。タイムシフトとかも、自分の都合でやれる。

さらに、これは「汎用移動体IP網」でもある。電話も音声も交通情報も、なんでもかんでも一緒に載せられるし、設備的に特殊なことは何もないし、最初から双方向だ。「移動体放送」として特殊かも知れないことは、せいぜいコンテンツ制作での配慮が必要なだってことくらいだ。

とか考えると、NOTTVのような「移動体放送局」を、わざわざインフラ込みで作るなんてのは全く馬鹿らしい話で、そういった金や帯域があるのであれば、汎用移動体IP網を充実させる方が、ずっとお得だということになる。てか、IPでやるってことにすれば、最初からインフラ整備もいらなきゃ、それ用の帯域(アナログ跡地)もいらない。「○年後に×加入」みたいな悠長な見積りしなくても、明日からでも、それに必要なインフラは手に入るし、専用の端末もいらない。

「放送にはユニキャストを使うのは、帯域の点で不利だよ」というのは、有線の比較的細いところでは真理でも、電波利用に関しては実は勘違いだってことがわかる。むしろいろんな専用チャネルを用意するより、単一のインフラを共用することを考えつつ接続性に注力する方が効率が良いということでもある。

まぁそんなわけで、TuneInでネットラジオを聞くのに、「もったいない」とか言う必要はない。むしろ、NOTTVのような使い方の方こそ「もったいない」わけだ。

PS.

ラジオでもやるらしい。

デジタルラジオ、14年度開始 民放連正式決定へ
設備投資1000億円

ラジオは番組制作的にもっと悲惨だとゆーことに気がつくべき。今や民放ラジオ程度であれば、ネトラジだのニコ生だのの方が、ずっとリーチがいい。それでもなお「ラジオ」とゆーものが存在している意義がどこにあるか、考えてみるのがいい。てか、既にラジオはインターネット放送やってるんだから、今から「デジタルラジオ」の設備なんて、買うわけねーじゃん。