全力で非ノマドワークを目指してます

ノマドワークがお題らしい。

ノマドワーキングを目的にすると不幸になるのでは?

ノマドとかライフスタイルをテンプレで語ること自体の陳腐化と正社員とノマドの中間解

どうやら元は酒井さんのエントリか。

パブリック・マン宣言

ノマド的なワークスタイルを長いことやっているけど、個人的にはあまりお勧め出来ない。それゆえ、個人的にも全力で非ノマドワークを目指している。

前の会社を創った時、ちょうどフルフレックスなるものが制度的に可能になったということもあって、いち早くフルフレックス制を導入した。某社は今でこそ凄い技術者がいっぱいいる会社だけど、その当時はまぁ田舎の中小企業に若干名の「花形エンジニア」がいるだけの会社だった。その「花形」の逆差別的待遇のために、フルフレックスの導入を主張したわけだ(当時の私は役員ではない)。定時とかダルかったし。

そーゆー緩い会社だったので、在職中のかなり長い間、ロクに会社に行かずにコーディングしてた時期があったり、他の会社に人質になったりとかしていた。人質になってる時も定時だの出勤だのまるでスルーしていた。1ヶ月くらい会社に行かないとかザラだった。

それでも「実用的」にはたいして困ることもなかった。田舎の会社にしてはかなり早い時期からインターネットを使うのが当然だったので、なんでもかんでもネットで連絡がついた。てか、当時はメールだったんだけど。リアルタイムの必要がある時は「携帯電話」だった。やることが決まっていて、そのアウトプットを目指している時は、労務管理的にもだらだらしてて全く問題がない。「結果」を追求することが第一だし。

東京に事務所を出した時も、その当時は事務所は狭かったので席がないこともあって、打合せとか事務作業の時にしか会社に行かず、基本的には在宅だった。今の場所に事務所が移ってから、通勤するようになったけど。

今の会社ではどうかと言えば、本店登記が自宅になっているので、「出勤」してると言えばそうなんだけど、昼間洗濯をしたりとかする程度には緩い。一応、事務所としても使えるように、それなりの広さの場所を別に借りているのだけど、サーバと工作台があるだけで、たまに人に会う時に行く程度だ。社内の打合せはSkypeで済むし、社外は出掛けて行けばいい。

そんなわけで、もうかなり長いこと「ほとんどノマド」な生活を送っている。前の会社でのことについては、

在宅勤務

に詳しく書いてある。メリットデメリットについてもそこにいろいろ書いた。繰り返して書くこともないだろうが、あらためてポイントだけ書けば、こういったワークスタイルは、

楽だけどしんどい

のである。「通勤」とか「定時」とかとゆー面倒臭いものを省いていることは「楽」なのだけど、仕事をする上でいろいろ「しんどい」のだ。労務的なことについてはリンク先のエントリを見てもらえばいいのだが、それ以外に

コミュニケーションコストが高くつく

のだ。

今時はネットが便利になったので、フォーマルな通信はほとんどコストがかからない。昔だと「携帯電話」だったものがSkypeで済む。急ぎでない要件はチャット的なものを使えばいいし、整理されたものが欲しければ、グループウェアやバグトラックシステムを駆使すれば済む。コストも質も、昔よりずっと良くなった。共有もしやすい。

ただしそれは、フォーマルなコミュニケーションに限る。逆の言い方をすれば、

世間話が出来ない

のだ。いや、世間話もやればいいじゃないかと思うし、実際やらないでもないのだけど、世間話をするには、

空気の共有

が必要になる。ノマド的に働いている時は、それぞれがマジメに働いているという前提でいるので、いきなり世間話を振ることは難しい(邪魔しちゃ悪い)。何か用のあるついでにちょっと世間話をする程度だ。

「出勤」している場合、なんとなく「空気」が共有されている。あまり粘っこい「空気」はうっとおしいし、それを感じる人達がノマドに憧れたりするのだろうけど、その「空気」で伝わるものはたくさんある。みんなが連れだって煙草部屋とか飯に行くとかは、なんとなく時間の同期がされるし、夕方ソワソワしている人がいれば、いくら我関せずと仕事していても、「夕方の区切りつけなきゃ」と思ったりもする。ある種の「リズム」も「空気」で伝わる。

気軽な世間話からいろいろなヒントを得ることもあれば、学びの機会になることもある。会社に勤めることを「自己研鑽」の類だと思っている人、凄い人達と一緒に仕事をしたいとか思っている人が求めなければいけないものは、そういった

世間話や空気

ではないだろうか。

また、「組織」が評価する時には、「結果」しか評価出来ない。「上手に部下を育てている先輩」がいたにしても、そのノウハウは伝わりにくい。「背中を見て育つ」の類も難しい。

そういった、インフォーマルなコミュニケーションまで円滑にしようと思うと、ノマド的なワークスタイルでは、コミュニケーションコストがかかり過ぎる。「ためになること」とわかっているものは文書化しろとか言えば良いのだけど、何が「ためになること」なのかよくわかってない時点でそれは難しいし、そういった海のものとも山のものともつかないものに、文書化のコストをかけるのも馬鹿げている。ところが、そういったものを簡単にやってしまうのが、

空間の共有による空気の共有

なのだ。

そんなこともあるので、早くそこそこの規模になって、「出勤」というのが普通な環境にしたいなと思っているところだ。もちろん、集中して何かをしたいとか、気乗りしないとかで出て来ないのは、いっこうに構わないのだけど。

PS.

あきみちさんのエントリ、

そもそもノマドは定員が少ない

を見て、私(に限らず多くの人)が想定しているのは「一匹狼」的なものだということに気がついた。文字通りの「ノマド(遊牧民)」であれば、ちょっと前のゲーム開発や本の編集でよく見掛けた「チームやプロデューサの渡り歩き」の方が原語のイメージに近いのかも知れない。

そういった「チーム」が組めるのであれば、ここで書いてるネガティブな部分はかなり否定出来るので、あるいはアリなのかも知れない。でも、それはおそらく私に限らず多くの人が期待している「ノマドワーク」とは違ったものになるだろう。

何にせよ私は、「職場」を持つことである程度空間的な拘束が出来てしまうことにより、気楽にコミュニケーションが取れるということに、大きなメリットを感じていることに変わりはない。