転職の相談

後輩から、転職したいと相談を受けた。どうアドバイスすべき?

回答者が複数なので複数の意見がある。その意見の違いが興味深い。

基本的には誰もが、「安易に転職してもね」ということをとりあえず答えている。転職してしまうと、今まで築いて来た人間関係的なものはほぼリセットされてしまうから、それは0から作らなければならない。これは単に一般の「人間関係」に留まらず、「あの人は〜という人」という評価も同じ。

技術はリセットされないが、「その会社でだけ意味のある技術」というのも少なくないから、そういったものはリセットされる。つまりは、「今あるもの」の何割かはリセットされてなくなってしまうから、深い考えもなく転職すれば評価(=給料)は下がるのが当たり前。だから、転職するには「リセットされないもの」の価値がどれだけあるかが重要。その辺をはき違えていると、「こんなはずじゃなかった」ということになるので、「安易に転職してもね」という答えになる。この辺はどの回答者も異口同音だ。まー今の時代、転職して給料が上がることは、まずないし。

違うのは、転職というもののとらえ方で、ある人は、

「企業の成長に自分の成長が追いついた時、より上を目指す人は転職を考え始める」

ということで、つまりは、会社のマネージメントの「負け」というとらえ方をしているようだ。これは逆もあって、企業の成長に追いて行けなくなった人も転職を考える。どっちの向きであっても、会社と本人との関係の必然だ。ただ、こうやって言葉にされると納得もしやすいのだが、言われないと気がつきにくい。部下や後輩が転職すると言えば、たいていはウロたえたり無駄に慰留したりするものだ。そういった転職は「必然」なのだから、目先の対応は解決にならない。

面白いのは、これには別のとらえ方をする人がいて、

「この会社では、もう学ぶことがない」と思ったとしたら、それは、今度は「後輩に教えるべき立場=マネジメントできる素養」が備わってきた、ということだ

というとらえ方だ。つまり、今までは会社の中の「メジャー」な位置にいた人が、いよいよ先頭集団に入ろうとした時に転職を考えるというのだ。つまり、会社の成長に追いつくとか追い越すとかとゆー話を越えて、「会社を成長させる人」になったということである。

そうとらえると、いわゆる「卒業」型の転職をされてしまうということは、会社としてかなり損をしているということになる。せっかくの成長の機会を失なってしまっているからだ。とは言え、卒業型転職をする人を何の戦略もなく慰留してしまうということは、お互いに損だ。

この「相談」、後輩や部下だからこうなるが、マネージャや役員となったら問題だ。

大きな会社なら、マネージャや役員と言えども「卒業」したり「脱落」したりする。大きなものは方向や形を変えるのに時間もエネルギーも必要だから、どうしてもフットワークが重くなる。その間に人は変化するから適合しなくなる。

しかし、小さな会社はフットワークの軽さが身上だから、マネージャや役員が「卒業」して行くくらいだったら、会社そのものをそっちの方向に向ける方がいい。それが小さな会社の価値だし、人材の活かし方だ。また、それが会社を成長させるべき方向である。だいたい、小さな会社で「卒業」という形で人材が流出するということは、その会社の成長の機会やエネルギーを失なうということである。「上級社員」がそうなるというのは、なおさらだ。

まー、これとは別に会社には「横切るだけの人」ってのもいて、卒業とも脱落とも違う人もいたりするわけだけど。