使用率が90%を越えると電力供給が不安定になる?

以下の話は、デムパな陰謀論の燃料になりやすい。だから、引用等する際には注意をされたい。

クソ暑い日になると、電力消費が増える。

東京電力の電力使用状況

これが90%を越えると、電力供給が不安定になってヤバいらしい。

猛暑で電力需要急増 東電の想定超す4129万キロワット (あんまりいいリンクがなかった)

これを読むと、ついうっかり「余力が1割切るとヤバいのか」って納得してしまいそうになるが、

んなことあるわけねー

私のこの主張にエビデンスは何もない。だから、「デンパな陰謀論のネタ」と冒頭で言っている。実のところ、この問題について、エビデンスを提示して語ることが出来る人は、どうも日本にはいないようでもある。エビデンスを持っている人は、多分語ったりないだろう。

しかし、技術者として、経済人として、「余力が1割を切るとヤバい」という主張は、それ自体がおかしいと断言する。いや、もしかしたらあるのかも知れないが、だったらその供給力の設定はおかしい。

技術者なら常識だと思うが、こういったものには「定格」と「最大」と「絶対最大」の3つの数字がある。「定格」は、普通の運転。「最大」は頑張れば何とかなるもの、「絶対最大」はこれを越えると壊れるものだ。普通、いろんな設計は「定格」で行うものだ。マージンは取っておくべきだからだ。

物書きには常識だが、「締切」には「表向きの締切」以外に、「実際の締切」「デッドライン」等がある。通常は「表向きの締切」で動くものだ。

プログラマだってわかるだろう。「表向きの納期」と、「実際の納期」と「頑張れば何とかなる納期」と「死ぬ気でやれば何とかなる納期」があることを。「死ぬ気でやれば何とかなる納期」を「納期」にしたりしない。

商売をする人でもわかるだろう。「在庫」はあくまでも「帳簿上の数」であり、それを実際の在庫と合わせるために棚おろしをする。普段は絶対に正しいとは言い切れないから、在庫よりもちょっと少な目な量を「販売可能な量」という扱いにする。数が合ってないと困るし、仮に合っていても何らかの理由で出庫出来なくなったりする。だから、表向きの在庫は、帳簿の上の在庫よりも少な目にしておく。それをしないと、

素人のECへの不信って、そう外れてないよね

みたいなことになる。

これらから考えれば、東電が表向きに「供給可能量」と言っている数値は、あくまでも定格のはずだし、それもやや少な目に言っているはずのものだ。そもそも、100%使ったところで、供給不安定なんてものが起きないはずのものを「供給可能量」と呼ぶべきだし、そうでなければおかしい。仮にそうでなかったら、

設定した奴がアホ

でしかない。

だから、「東電の代弁者」を気取った奴がわかったような顔をして「供給余力が10%切ると供給不安定になる」とか言うのは、間違いのはずであるし、それが本当であったらおかしい。それが「供給可能量」と言うものだ。「最大」が「供給可能量」ではないし、「絶対最大」なんてことは、「絶対」ありえない。100%になっても何事もなく運転出来るものが「供給可能量」のはずである。

もっとも、これを以ってして、「東電は嘘をついている」とかと言うつもりはない。「実際の在庫」は棚おろしするまでわからなくても不思議はないし、仮にわかったところでそれを馬鹿正直に言う必要もない。こういったものは、多少悲観的に言っておくくらいがちょうどいい。ただ、「使用量90%を越えるとヤバい」は多分ありえない話だし、過剰な節電のあまり熱中症で死ぬなんてのは馬鹿げている。

「節電」はすべきだが、「90%を越えると」におびえて、必要な電力までケチる必要はない。

PS.

勘違いしてもらうと困るが、↑は「供給可能量なんて無視してジャンジャン使え」と言っているわけではない。「供給限界」ってのは現実に存在している(はずだ)し、それを越えない範囲で使わなきゃいけないのは当然のことである。その目安とすべき値として、供給可能量があるわけだ。

あくまでもここで主張しているのは、「供給可能量の90%を越えると電力供給が不安定になる」という「電力会社の代弁者の主張」が欺瞞であるということと、それに煽られて「90%を越えないように節電」とか思ってしまうとマズいということだ。

節電のあまり熱中症で死んでも、電力会社は補償してくれない。生産性が低下しても、何の補償もない。何もそこまで節電することはないのだ。

PS2.

↑の話とは別に、余力そのものもまだあるという話。

東電の電力の余力は?

まぁ「在庫」の正確な数字は誰も知らないし、馬鹿正直に答える必要もないわけだけど。

使用率が90%を越えると電力供給が不安定になる?” への8件のコメント

  1. でもほら、上司とか顧客から追い詰められると、つい、「死ぬ気でやれば何とかなる納期」を「納期」として承諾してしまったりしません?

    いろいろ経験されているおごちゃんならともかく、サラリーマンプログラマには、そうやって毎回デスマーチにはまっている人がいっぱいいるような気がします。

    そして東京電力はサラリーマンの集まりであることを考えると、マスコミに追い詰められてうっかり発表してしまった「死ぬ気でやれば何とかなる供給可能量」が一人歩きして分母になっていたりして・・・(笑)

  2. 火力発電所ってのは発電すると熱が出ますわな。発電量を増やせば増やすほど熱の量が増えます。変電設備も大量の電気を流すと熱が出ます。
    はっきりいっておどけでないほどでます。
    周辺設備にも影響がでる可能性があります。

    これらを踏まえると、最大供給量ぎりぎりまで発電すると設備が不安定になる、というのもあり得る話しだと思いますが

  3. だーかーらー。それで不安定になるんだったら、それは最大供給力を越えてるんだってば。そんな量を「供給可能量」に設定する奴は馬鹿。
    100%使っても問題が起きない量が「供給可能量」でなかったら、根本が間違ってるって言ってるわけ。

  4. おそらく考え方が逆なんだと思います
    最大供給量というのは「停電せんためにこれだけ供給せにゃならん量(社会が必要としている量)」かと

    それを絞り出すために、発電所や変電所の設備に設定されている通常の予備率を切り詰めて稼働させているのでしょう。
    当然、故障設備がでると予備率もドンドン厳しくなっていきます。

    10%を切ると安定供給が難しくなる、というのはおそらくこういう意味でしょうね

  5. もしそれが本当であれば、その設定は間違ってます。「納期」を先に決めて、「達成のためには死んでもどうしてもいい」とかやってるのと同じですから。
    ところで、そうやって「東電の代弁」して、なんかいいことがあるの?

  6. 供給可能とわざわざ書いてるんだから、供給出来なきゃおかしいですよね。不安定になるのならそれはちゃんと供給出来たことにならない気がします。90%を上回ったところで不安定になる可能性が有るんなら、供給可能ラインは90%のところに設定しなきゃおかしいですよね。東電にも供給規定が有るでしょうから、それを外れればだめだと思います。

  7. 電力会社って電力事業法で電力の安定供給を義務づけられている特殊な会社なんですけど・・・
    NTTと似たような感じですかね。
    http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S39/S39HO170.html#1000000000002000000002000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

    つまり納期が先に決まっているようなもんですわ。達成するために死んでもいい、ほどじゃないですけど。

    それと、俺は自分と意見の違う人と交流しているだけで電力会社を擁護している訳じゃありませんよ。

  8. 意味通じてないし、→に書いてることを読んで下さい。
    議論する気は1ミリもないので、あれこれ言いたかったらはてブでもfacebookでも、適当な「よそ」でやって下さい。

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