煮しめ

よく考えたらもう4月になっているので、新生活を始めている人もいることだろう。

お料理系のエントリはあちこちにあると思うのだが、今回は料理に不慣れな人でも簡単に作れる煮しめの紹介をしとこうと思う。1つ覚えておくと、応用範囲はとても広い。

煮しめの本質は、

一口サイズの食材を味の濃い汁で煮たもの

である。この原則に従えば、煮しめは簡単だ。

入門編

一番簡単な作り方では、「厚揚げを麺汁で煮る」ことだ。

厚揚げを適当なサイズに切る。一口で食えるサイズがいい。厚揚げは結構固いものなので、マナ板がなくても切れるし、果物ナイフでもいい。これを適当に鍋に並べて、ひたひたになる程度の「麺汁」を入れて弱火で煮る。これだけだ。

麺汁は濃縮2倍くらいのだと、2倍よりもちょっと濃い目に薄めるといい。1.7倍とかそんな感じ。まぁ2倍にしても長く煮れば煮詰まるので同じことなんだが。量は具材が完全に沈まなくても、煮てる間に吹いて程々になってくれる。具材の8割が漬かってるくらいでいい。なお、時々「濃縮3倍」ってのがあって、そっちの方が経済的に見えたりするのだが、3倍のはどうも薄めた時の味がイマイチだ。3倍の奴が手元にあるのだったら、「冷奴」の醤油の代わりに使うのがいい。煮物にはお勧めはしない。

煮物は火を止めてから味が染みるものだ。なので、しばらに煮たら火を止めて放置。冷めたら冷蔵庫でもいいし、煮直してもいい。1回くらい煮直した方が、味がよく染みていていい。

「美味しんぼ」の最初の方の巻には、この煮汁について小難しいことが書いてあったりするのだが、そんなのを気にしてもしょうがない。適当に麺汁を使えばいい。ただ、具材との関係を考えると、

動物系の出汁

を使ったものがいい。カツオとかそういったものだ。

初級編

これで慣れたら、次のステップに進む。

次に試すといいのは、

厚揚げを焼いてから入れる

ことだ。こうすることで、味が染みやすくなるし、焼く時に胡麻油を使うと、風味が増す。

フライパンなり鍋なりに胡麻油を敷き、程々熱くなったら、厚揚げを入れる。と言えば、厚揚げは厚揚げ単体じゃなくて、「おでんセット」みたいな雁擬きも一緒に入ったのを使うと、雁擬き入りになる。雁擬きも小さいのは半分に切ったり、大きいのはいくつかに切って、1口サイズにしておくと扱いやすい。よく焼けたところに、出汁(と言っても麺汁)を入れて煮ると出来上がりだ。後は「入門編」と同じ。

雁擬きはたいてい「昆布」が入っている。煮るとこれが結構味に出て来る。つまり、出汁に昆布を入れたのと同じわけだ。でも、昆布を煮ると独特のクセが出るので、出汁にはこれと喧嘩しないように「動物系の出汁」を使うことをお勧めする。こういった手抜き料理でも、そういったことは気をつけると一味違う。

中級編

豆腐ものばかりで飽きて来たら、他の具材も試してみよう。

次に試すといいのは、

冷凍里芋

あたりだ。冷凍里芋を鍋に並べて、それが十分漬かるような量の出汁を入れて煮始める。同時に「初級編」でやった「油で焼いたの」を作って、その上に入れる。後は同じ。

同じように、他の根菜とかニンジンとか入れてみるのもいい。ニンジンや大根を煮物に使う時にはアク抜きをするとかって話があるのだけど、いろいろ試した結果、

下手にアクを抜かない方が旨い

ことに気がついた。アクを抜くと上品になるのだけど、その分ワイルドさがなくなる。なんとゆーか、具材の個性がなくなる。それに、アクがあったところでそんなに汁が苦くなるわけでもないので、気にしなくていいと思う。切る時に面取りとかしてあると格好いいし煮崩れもしにくいんだが、こんな手抜き料理にそこまで頑張る必要はないと思う。

上級編

上級編となると、もうちょっとマシなものを作ることを考えよう。

まず手を入れるのは、「出汁」だ。ここで一丁カツオを削って… なんて必要はない。まずするのは、

味醂を加える

ことだ。また醤油を加えるのもいいが、まずは味醂だ。

比率としたら、2倍希釈の麺汁を100ccとすると、味醂と醤油を合わせて50cc加えて、それを100ccの水で薄めるという感じ。味醂のいいのを選ぶと、手抜き煮しめとは思えないものになる。

応用編

次は具材の改良。野菜っ気ばかりで寂しいなと思えば、サツマ揚げとか、チクワとか入れてもいいし、肉類も種類を選ぶといい。この時のポイントは、

味が喧嘩しないもの

ということと、

煮崩れないもの

ということだ。味をよく出すと言われている、魚介類をいろいろ入れたり、さらに肉まで入れたりすると、「なんだかわからないゴチャゴチャした味」になってしまって、どうもおいしくない。具材の傾向は揃えた方がいい。魯山人は「貝に気をつけろ」と言っているのだが、確かに貝はいろいろヤバい。味を苦くしてしまう度は野菜のアク以上だ。

煮崩れないってのも大事で、簡単に煮崩れるものを入れると、味がうまく染みる前に汁がドロドロになってしまう。それなりの時間煮るので、それに耐えるものを入れるように。魚とか簡単に煮崩れてしまうので、煮崩れないように加工(焼くといい)して、煮るのもそっと… とか考えることになる。

まぁ文章では長く難しげに見えるのだが、やってみると案外簡単だし、結構おいしい。鍋の数がいらないので、ミニキッチンしかないワンルームマンションでも、簡単に作れる。コンビニ弁当に飽きたらお試しあれ。