「ヨウ素剤デマ」の厄介

自分も加担してしまったので自戒としてエントリ。ただ、「言い訳」はそれなりにあるので、それを考察すると「デマ」の防ぎ方としてプラスになるだろうと。

原発事故のせいで、ヨウ素剤が有効だということで、いろいろ話が流れている。たいていは「イソジン飲め」の類だ。結論から言えば、これは「ほぼデマ」と思っていい。

「安定ヨウ素剤予防服用の考え方と実際」

この情報に到達出来れば、「デマ」だとわかるのだが、そうでなければむしろ肯定的な材料が集まってしまう。

「ヨウ素が有効」というのは、放射性のヨウ素を摂取してしまうと甲状腺障害(主に癌)になるのだけど、身体に飽和状態でヨウ素があると摂取されにくいので大丈夫とゆー原理[要出典]。ここまでは基礎知識。そのため、原発立地地帯では自治体にヨウ素剤用意されていて、必要な時に配布されて飲むようになっている。先に各戸配布になっていないのは、タイミングの問題があるからだ。

この原理については、原発立地地帯の人は、たいてい何らかの形で知っているはず。そして、それと共に流布している「都市伝説」が「イソジン飲んどけば大丈夫」というものだ。

それとは別に、日本人はヨウ素の摂取は多過ぎだという事実がある。これは栄養にちょっと興味のある人、またダイエットとか考えたことのある人はわりとよく知っていることではないかと思う。断食とかしてる時に「昆布」を食うといろいろ良いのだけど、昆布はちょっと食べ過ぎただけでヨウ素の摂取過多になる。いや、それ以前に平均的日本人はヨウ素の摂取過多なのだ。気になる人は自分でぐぐるべし。

また、冬にイソジンが原因のヨウ素過多になる人が出るというのも、そーゆー業界の人にはよく知られている。喉がかれた時にイソジンのスプレーを喉に… ってやってると、過剰摂取になってしまうらしい。これも気になる人は自分でぐぐるべし。

まー、そんなわけで、「身体にヨウ素をいっぱい入れておく」方法はいくつかあるし、またそれによる障害についての情報も結構豊富に見つけられるし… ということで、「イソジン飲んどけ」はなんとなく肯定的に見てしまう。

でもまぁ、冒頭に挙げたような事情で、これは「デマ」なのだ。

ある情報が「デマかどうか?」を知るには、

  • 冷静になって
  • 「事実」を収集し
  • 論理的に考える

ことが大事だ。

ところが、この「ヨウ素剤デマ」に関して、これは無力と言っていい。既に書いたように、これが正しいと結論づけさせる「事実」が大量にあるのだ。ちゃんと調べれば、むしろ

否定する方が難しい

と言っても良いくらいだ。

別の方法として、

  • 信頼出来る筋の
  • 信頼出来る事実と共に説明

された情報を入手するという方法がある。

ところが、これは「信頼出来る」というところがネックで、うっかりすると「デマ」をそのまま信用しているのと大差ないことになってしまう。「権威の盲信」との違いは何かと言えば、「うーん」と言うしかない。「情報リテラシ」的にはあまり好ましい態度は言えないとも言える。

どっちの戦略を取るべきか、それはケースバイケースだし、残念なことにその判断力を全ての人に期待するのは難しい。つまり、「個人のリテラシ」の問題にしては解決はないということだ。

このようなデマを防ぐ有効な方法は、

正しい情報を増やす

に尽きる。つまり、情報を出す側が頑張らなきゃいけない。いわゆる「啓蒙」活動だ。過去に何度か書いたように、「専門家」はその知識か活動を広報する義務がある。

まぁ、この問題に限らず、「デマ」は情報の欠乏(=情報が伝達されやすい環境)に、正しくない情報が投じられることによって生まれ、人々が正しそうに思う情報(=必ずしも正しくない)で成長し、情報の欠乏を何とかしなきゃいけないという善意の人(法律用語で「善意」とは無知を意味する)が広める。だから、「正しい情報」を十分広めることによって、デマは予防出来る。だから、今は「専門家」は積極的に情報を広めるようにして欲しい。

最初の話に戻れば、「ヨウ素剤」は必要な地域では自治体が適当なタイミングでくれるものなので、東京あたりであわててる人には「あー、イソジンでうがいしときゃいいよ。うがい薬だから飲むと死ぬけど」とか言っておけば、それはそれで話は丸く収まるとも言えるけどね。うがいくらいじゃ死なないし、イソジンはなけりゃないで済む薬だし。「昆布食っとけ」ならもっと害がないね。

「ヨウ素剤デマ」の厄介” への3件のコメント

  1. マジでイソジン飲んだ人居るのかな
    経口用じゃないのに信じられない~
    口内は体外だけど飲み込んじゃったら体内やん
    どこからそんな話が出たんだろうね。

  2. 都市伝説とは言い切れない模様です。
    ヨウ素剤が入手出来ない場合の緊急措置
    として認識すべきでしょう。

  3. 僕は飲んだよ。

    「チェルノブイリの祈り」って本の中で、みんながデマに踊らされてウォッカ飲んでる中、所長の娘だけは、研究所の教授から電話で指示を受けて、「コップに数滴のうがい薬を溶かした水を飲ませ、すぐ避難する様に」って指示を受けてたのが書かれてたからさ。

    そいつは自分の娘だけ助けて、この話を人にしなかったんだよ。
    酷い話さ。
    でも、同じことがこの日本で国家単位で起こったのかと思うと、ソ連を軽蔑できないな。

    周りの人達にも話したけど、TVやネットの力は強力だね。最も、本の情報が必ずしも真実とは限らないけどさ。

    だって、行政に電話しても病院に電話してもヨウ素剤ないって言うんだもん。次善の策だったんだよ。

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