豚肉の脂身は旨い。
身体に良いとか悪いとか、いろいろ言われるのだけど、旨いことには間違いがない。あまり沢山食うと気持ち悪くなったりするんだけど、そうならないように適度に脂を落とす調理をすれば、脂身のおいしさを堪能しつつ、気持ち悪くならなようにすることも可能。脂身の旨さに気がついたら、赤身なんてクソだね。
ってのはいいんだが、この「脂を落とす」ことをすると、大量の脂が出て来る。
脂身の旨さは、実は脂だけの味じゃない。脂身は脂身特有の蛋白質(多分コラーゲン)の旨味でもある。これはよく煮るとトロトロになるし、よく焼くとサクサクになる。これに脂が加わった味が、脂身の味だ。
豚の脂は、動物性の脂の中では身体に良い方らしい。成分的にはむしろ植物の脂に近いと言ってもいい。でも、脂が高カロリーであることには変わりはないし、そんなものをいっぱい食えば成分に関係なく身体に良くない。
多くの場合、脂身はよく煮たり焼いたりする。そうやって脂を落として食うのだけど、この過程で大量の油が採れる。たいていはそのまま食うか捨てるかなんだけど、そのまま食うにはちょっと抵抗があるし、捨てると言っても下水に良くないし、もったいない。そこでラードとして再利用することを考える。
煮物をした時にはあく取りをすると思う。この時に油も一緒に掬ってしまう。ボールに水を入れておいて、そこに掬ったあくと油の混ざったものを落とす。そうやって油を集めて来る。茶漉しのようなものを使って、固形物は取っておいた方がいい。
このボールを冷蔵庫に入れて冷やすと、油が固まって水と分離するので、水を捨てる。次にこれにお湯を入れて再度油を溶かし、
ペットボトル
に移す。ペットボトルでは、油とお湯が同量になるくらいのお湯を入れて、よく振って混ぜる。この時に塩を飽和量入れると良い(臭いとか汚れが取れやすいとか)とゆー話があるのだけど、この効果はよくわからない。とにかくそうやって集めた油を「水洗い」してやる。
ペットボトルは蓋を閉め、口を下にしてしばらく放置して、十分冷めたら冷蔵庫に入れて固める(急冷は汚れが取れにくくなる)。固まったら蓋を外すと、水が簡単に捨てられる。口を上にしていると、水を捨てるのに苦労するのだ。
再度これにお湯を注ぎ、電子レンジにかけたりして油を溶かして、また同様に「水洗い」をする。これを数回繰り返すと、綺麗なラードになる。最後に水を捨てたものを電子レンジなり湯煎なりで溶かして、広口の瓶に入れて出来上がり。
神経質な人は、ここで一度100度以上に熱してやると、水分が飛ぶと共に、油に溶けている不純物も分離出来る。まー、あんまり気にすることもないとは思うけど。
要するに「集めた油を水洗い」するだけなんだけど、大事なポイントは
- 洗う容器をペットボトルにする
- 油を凍らせて水と分離する
- ペットボトルは逆向きにして凍らせる
ということ。ラードを自作することは、主に手作り石鹸方面の人がやっていることのようだけど、みんなこの「洗う」のに苦労しているようだ。ペットボトルを応用すれば、とても簡単に洗える。同じことはガラス瓶でも出来るんだけど、ペットボトルだと
使い捨て
に出来るので、使った後の容器を洗う必要がない。ラードのついた瓶を綺麗に洗うのは、なかなか大変だからね。まぁ、「使い捨て」と言っても、本当にもう捨てるものになってしまうので、リサイクルには出さない方がいいだろう。
注意する点として、ペットボトルには低温用と高温用とあるので、高温用を使うこと。低温用のペットボトルを使うと、加熱した時に溶けてしまう。高温用のペットボトルとは、一言で言えば「お茶やコーヒー」の容器。普通はやや厚手のペットボトルだ。これなら100度くらいなら耐えられる。もっとも「油と水を入れて電子レンジ」なんてことをすると、やり方によっては簡単に100度以上の部分が出来てしまうので、「加熱」と言っても70度くらいまでにしておくのがいい。
広口の瓶に入れて加熱する時も、水が残っていると「天ぷら鍋に水」みたいなことが起きるので、十分水を除いてから、ゆっくり加熱すること。むしろ、瓶に入れて加熱じゃなくて、鍋とかで加熱する方が良いかも知れない。それでも跳ねたりするので注意が必要だけど。
こうやって集めた油は、元になった料理の臭いが移っているので、残念ながらお菓子作りとかには向いてない。炒めものの油として使うのが良いだろう。葱を一緒に炒めれば、あまり気にもならんだろうし、元の臭いとうまく合っていれば、むしろいいくらいだ。
「ラードは集めて作るもの」と思うようになると、どんどんたまって来て処理に困るくらいになる。そんな時には、
コンフィ
でも作るといい。コンフィは買って来たラードで作ると、あまりに大量に使うのでドキドキしてしまうんだけど、こうやって作ったラードだと遠慮なく使えるのがいい。