「油で揚げておりません」

上野界隈のトンカツ屋を知ってる人には、表題のフレーズに記憶があるかも。隠れた迷店、平兵衛の口上だ。

とんかつ平兵衛

リンク先を見てもらうと、評価がいろいろ微妙。でも、先代はおいしかったらしいし、方向性が間違っているわけでもないと思うので、同じ方向性でもっとマシなものを作ってみた。

秋葉のハナマサは月曜日の夕方には豚ロースが安い。100gが70~80円くらいになっている。まぁ購入単位は2kg超なんだが。2kgって凄いなって話になるけど、鶏と違って豚は日持ちがするし、どうやっても食える簡単な食材なんで「1週間分」とか思えば悪いもんじゃない。

で、このブロックから適当に切り出す。薄いと作りにくいんで、厚さは5~7cmくらいか。

これに塩胡椒をする。塩は7cmくらいのブロックにプリンのスプーンで3杯くらい。まぁ適当なんだけど「多いかな?」くらいの量にする。胡椒も適当。分量はまぁいい加減でいいんだが、

絶対に塩を忘れない

こと。

これをしばらく置いてから、小麦粉をまぶして、しばらく置いておく。その後は玉子にパン粉… がトンカツなんだけど、パン粉はいつもあるわけじゃないので、玉子で小麦粉を固めに溶いてからめることにした。ちょっと塩味でもつけておくといい。まぁ要するにピカタみたいなもん。

これをオーブンで焼く。

コールドスタート(予熱なし)の120度で30分。その後ちょっと様子を見て時間を適当に調整する。150度くらいまで上げてもいいが、200度とかはありえない。コールドスタートから1時間弱くらいの時間、低温でゆっくり焼く。くれぐれも、「低温」でやること。

菜箸でも通してみて焼けてる感じだったら完成。多分、焼き上がりでも肉汁はほとんど出てないはず。これがキモだ。平兵衛の怪しいパンフレットにも「肉汁を保つ」という意味のことが書いてあった。そういった意味で衣をしっかりつけて、低温で焼くわけだ。

そのままでも食えるが、ソースを適当に作ってみる。うちで手軽にやるには、バスサミコ酢と紹興酒を醤油を等量くらい混ぜて煮詰めたもの。すぐ出来るし軽い酸味が脂っぽい肉に合う。

これを適当に切って出す。まぁ厚さ1cmくらいに切れば良いか。1つはそのまま、後は好みでソースでも。多分、切った時にピンク色をしていると思う。「豚はよく焼け」とか言われて来た人は怯むだろうが、これで問題ない。低温で豚をゆっくり焼くとこうなるものだ。見た目よりも、箸の感覚の方が正しい。

平兵衛に行ったことのない人にはわからないんだが、出来たものは、

綺麗な平兵衛

という感じだ。多分、旨かったとされる先代の味はこんなんだったんじゃないかと思う(話でしか知らんけど)。低温でゆっくり加熱しているので、肉は少しコンフィのような食感だ。現平兵衛の問題点とされる、

  • 油でギトギト
  • 水っぽい
  • パサパサしている

という問題は全て解消されている。

元々油なんてまるっきり使ってないからギトギトしようがないし、塩をちゃんと効かせているから水っぽくならない。実は、肉は後でいくら味をつけても、最初に塩を効かせておかないと、なんとなく味がもの足りなくなるものだ。あそこが不味いとか水っぽいとかdisられる原因は、実にこの「最初の塩」を忘れているからだ。「肉の質」なんてのは、こっちはハナマサの安売りなんだから凄く良いはずがない。それでもずっと旨く感じるのは、まさにこの塩の有無。当代の「科学的(笑)」な解説にもまるっきり出て来ないのは、その必要性を忘れているからだろう。

衣で肉汁が流出するのを封じ込めているので、パサパサにもならない。

「油で揚げておりません」” への3件のコメント

  1. ピンバック: Tweets that mention おごちゃんの雑文 » Blog Archive » 「油で揚げておりません」 -- Topsy.com

コメントは受け付けていません。