「個人」「非商用」に意味はない

CookPadのリンクポリシーが盛り上がっていたようだ。

既にブログでいろいろ書かれてるので、公式見解が発表された。

COOKPADレシピは「直リンOK」 ネットの“誤解”でリンクポリシー表記を修正

まぁ元ネタの事件は「なんやらショボいなぁ」とか思いつつ、この見解には疑問を感じている。それが表題のこと。

そもそも何がおかしいか、件の記事から言えば、

ブログなど個人サイトでのリンクや、はてなブックマークなどへの登録もOK

ということ。COOKPADのページで言えば、

リンクしていただくにあたり、以下の条件をお守りください

リンクを貼りたい場合は、クックパッドトップページをご指定の上、ご自由にご利用ください。営利を目的としたサイトでの利用の際はかならずこちらからご連絡をお願いいたします。リンクの仕方やページの内容によってはお断りする場合がございます。

この部分。この条文で、元の事件のrecipe growlerが禁止されることが説明出来ないのだ。あるいは「はてなブックマーク」が許容されることも説明出来ないのだ。

recipe growlerは私の目には「個人サイト」に見える。ドメインを見ればわかるように、「bayashi.net」の一部であり、「bayashi.net」は私の目には「個人サイト」にしか見えない。また、「営利」と言ってもアフィリエイトがちょっと貼ってあるだけで、そんなに儲かっているようには見えない。

「はてなブックマーク」は「株式会社はてな」の行なっているサービスであり、営利法人の「事業」だ。儲かってるかどうかは知らないが商売だ。個々のリンクは営利目的ではないかも知れないが、ページの総体としては営利目的のはずである。

そう考えると、もうこの時点で既にCOOKPADの主張と、結果には矛盾がある。語るに落ちる。

とは言え、これはもう一段メタに見れば、このような区別は実は意味がないということでもある。

ウェブサイトの運営主体が個人であるか法人であるかは、客観的にはわからない。法人運用のサイトが個人運用のサイトよりもショボいことなんていくらでもある。それはむしろウェブ世界では当然のことであり、だからこそいろいろなチャンスがある。個人が法人に、小法人が大法人に打ち勝つ可能性がある。ウェブ世界は素晴しい。

また、ウェブの世界は「営利目的」の基準をあいまいにして来た。私は「ウェブ2.0の財源は広告」ということには必ずしも賛成ではないけれど、「広告媒体を持つ」「広告媒体を金にする」という観点で言えば、誰でも「営利目的」を持つことが出来るようになった。それで実際に儲かるかどうか、労力に見合うかどうかは知らないけれど、目的と結果がイコールでないのは世の常だ。ウェブはいつでも「商用」になることが出来るのだ。

だから、ウェブ世界で「個人か法人か」ということや、「商用か非商用か」ということは、区別する意味がない。また、これらの境界をあいまいにしてしまったのがウェブ世界だとも言える。

もっとも、このことはウェブ以前にもあった。「フリーソフト」もそうだった。「商用禁止のソフトをCD-ROMに入れて商業誌の付録につける」という類のことを思うとわかるだろう。厳しい人は「これは商用だ!」と目くじら立てるし、緩い人は「配布方法の一つでしょ」と許容する。ウェブ時代と違うのは「商用禁止」で自縄自縛してしまって、「フリーソフトでも金になる」という発展が出来なかったことだ。お影で、「フリーソフト作家」がそれで食えるようにはならかったとも言える。

まぁそんなふうに、歴史的にもウェブ的にも、「個人か法人か」ということや、「商用か非商用か」ということは、区別する意味がない。むしろ、これを区別することによって、「誰もが金を手にすること」は難しくなるし、様々な「判断」が面倒臭くなる。もしかしたら、「胴元」が短期的に儲けるのには助けになるのだろうけど、マッシュアップとかが面倒臭いということで敬遠されれば、長期的には損になるだろう。まぁ、今はまだ競合がない世界だからいいんだろうけど。

だから、長期的にはあまり嬉しくない方向に導くために、区別が難しいことを無理に区別することは意味がない。COOKPADが長く愛されるサービスになりたかったら、こういった制限はやめた方がいいし、もっと別の方法で自分達のバリューを確保するべきだ。

PS.

「bayashi」直しました^^
「growler」直しました。

「個人」「非商用」に意味はない” への6件のコメント

  1. ピンバック: Tweets that mention おごちゃんの雑文 » Blog Archive » 「個人」「非商用」に意味はない -- Topsy.com

  2. この訴訟を読むと営利目的だと厳しいように思います。
    http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/10/27/9645.html
    >知財高裁の控訴審判決では、記事見出しについて著作物性は認められないとしながらも、
    >デジタルアライアンスが行なった記事見出しの無断配信は不法行為にあたるとして、
    >一審判決を一部変更し、デジタルアライアンスに対して約24万円の損害賠償を命じた。
    >使用差し止め請求や、不正競争防止法違反行為については認めなかった。
    ただこの判決は個人的には玉虫色の判決だなぁと思いますね。これ相手が零細企業だからこれで終わってしまっていますが。

  3. てか、「営利目的」って何よってのが主題です。その辺の線引きって、もう不可能ですよね。ウェブに関して言えば。

  4. ピンバック: おごちゃんの雑文 » Blog Archive » 「個人」「非商用」に意味はない « とっても! ちゅどん(雑記帳)

  5. 上の判決だと「新聞社が多大な労力をかけて作成した見出しを、無断で自己の営業に使ったのは、社会的に許容されず、不法行為に当たる」だそうなので、これは営利目的ということかと。ただ法律がらみの話で、上のHPを読んでもいまいち判然としません。上のHPの論者は判決は妥当でないと思っているようですし・・・

  6. もう一つこちらも直して下さい..
    recipe grow_l_erは私の目には「個人サイト」…

コメントは受け付けていません。