スウィングガールズ

明るいうちから会社にいると鬱になるので、天気がイマイチだったが新宿に。アイ・ロボットを見ようかと思ったら微妙に遅刻だったので、隣りでスウィングガールズを見る。

邦画は女の子ウケがイマイチなので、どうしても見たい映画は一人で見ることになってしまう。と言っても、この映画は「どうしても見たい」とまで
思っていたわけではない。「見れたらいいな」という程度だった。だいたい邦画はすぐテレビでやるし、すぐDVDが出てしまうから、よけいに行きたくないの
だろうな。って私はテレビを見ないから見る気が起きるんだろうか?

見て正解だった。まぁストーリーは「ウォーターボーイズ」と似たようなもんで(監督同じだし)、ある種の青春もの。ただ、この素朴っぽい、それで
いて今っぽい青春ものというのが、妙に現代に迎合してない感じで好感が持てる。いろいろ良いところはあったが、一番良かったのは、

本仮屋ユイカの眼鏡っ娘

である。いい眼鏡っ娘の典形だよこれは。

私は映画でもドラマでも喜劇が好きで、あんまり挫折の多いのは好きでない。この映画はわりと何度も挫折しているので、そういった点では食傷気味。
全部見た後だと、「あの時のはいい挫折」とか思えるのだが、見ている最中はハラハラして、そのハラハラが不愉快なのだ。でも、まぁこの映画はみんなが笑顔
だという点が非常によろしい。現実世界がこれだけ悲劇的なんだから、映画の中くらいみんなが笑顔でもいいじゃないか。

さて、この映画の最後のステージシーンでは、わりとご都合主義的にスポットライトが当たる。半可通だと、「そんな都合良くあるわけないじゃーん」
とツッコムところだと思うので、「元プロ」として言っておくと、これくらいの仕込みは私はしていた。と言うか、自分でツッコみかけて、自分のことを思い出
したら「やってたちゃん。これくらい」ということを思い出した。

元々、この手の「素人のコンサート」といったステージでは、照明屋はあまりやることがない。スポットを当てるところはそんなにないし、台本がもら
えるわけでもないので(つーか、台本なんてない)、手を抜こうと思えばフレネル(フレネルレンズを使った灯体。光が拡がる)をずらーっと並べて、それを
ON/OFFすればとりあえず照明はできてギャラももらえる。と言うか、よほど考えておいたり、曲目だけでどうこうできるだけの技術がなければ、本当に
「入って来たらON、はけたらOFF」以上のことがやりようがない。ホールによっては、音響反射板にライトがついていたりするので、フレネルすらいらない
ことだってある。

とは言え、それではつまらないので、余った凸灯(いわゆるスポット)は、「だいたいこの辺がピアノ、だいたいこの辺がパーカッション」と思われる
ところに向けられるように仕込んでおく。この手のコンナートのステージ位置はだいたい決まっているし、決めたところにガムっておく(床にガムテープを貼っ
て目印にすること)ので、間違えることはない。と言うか、雛壇(バンドの乗る台)の都合もあって、そうでもしないと載り切らないということが起きる。なの
で、立ち位置はほぼ確定する。だから、大した打合せがなくても、実は仕込みが可能だ。

コンサート用のフレネルの仕込みなんてのは一瞬でできてしまう(明るくなるように並べるだけ)し、回路もそう取らずに済む(容量の問題がなければ
1回路でもいいくらいだ)ので、ついでにこういったオマケの仕込みをしておく。オマケの方は凸灯だから、しっかり回路はバラしておく(余ってるはずだ
し)。こういった時にフレネルの方にフィルタはあまり入れないから(もちろん入れるというのもアリだ)、フィルタも余っているので、適当な色を入れて凸灯
に。

というようにすると、「ここで気合入れたる!」な時用の仕込みができる。素人のコンサートにここまでやることは、本当のプロはあまりしないと思うのだが、私は「プロ手前」みたいなものだったので、自分の勉強も込みで気合入れた仕込みをしていた。

このようにしておけば、件の映画のラストシーンにあった照明なんてのは、簡単にできてしまう。本体のフレネルを落として裏に仕込んだ凸を入れるだ
けだ。照明室にはピンスポもあるから、そいつで狙ってやってもいい。映画の中の絵空事ではなくて、照明屋によってはちゃんとそこまで仕込んでることだって
あるのだ。仮に「ブラスバンドの他にジャズもある」ということがわかっていれば、私なら絶対仕込む。

私の場合、それをバシバシやっていた。弱小ホールの全灯体を気合入れて仕込んでおくのだ。そして、「ここぞ!」という時にそれを使ってやる。そりゃもう素人さん大喜び。お陰で指名かかりまくりで、今の会社を作ってからも時々お声がかかっていたくらいだ。

というわけで、あれは映画の中の絵空事だけというわけでもないのだよ。