紙メディアは「鮮度・深度・密度」のどれもネットの敵になれない

タケルンバ卿のエントリより。

鮮度・深度・密度

ロードはいい人なんで、一生懸命紙メディアの生きる道とか探ってくれているようなんだけど、ここに挙げられている、「鮮度・深度・密度」のどれもネットの敵にはなれないだろう。いずれ没落するメディアだ。なぜなら、

既にネットに負けている

からだ。

「鮮度」に関しては、既に書かれているので、重ねることもないと思う。ただ、鮮度に関して言えば、既にラヂオが世に出てから言われていたわけで、それでも滅びなかったのは、実はニュースにはあまり鮮度がいらなかったという傍証だと思う。確かにニュースは「new+s」だから、鮮度が大事なように見えるし、新しいニュースはみんな好きだけど、実はニュースの価値はその辺じゃない。また、鮮度が大事なものは最初からみんな紙メディアに期待していない。だから、ネットがどれだけ流行ろうと、「鮮度」は紙メディアが滅ぶ直接の原因にはなりえない。

ラジオやテレビという鮮度の高い情報を提供する手段が提供されてからでも、新聞や雑誌が滅びなかったのは、新聞や雑誌には、

情報を咀嚼する

という働きがあったからだ。事実だけでは面白くもなければ、理解も出来ないような情報を、「記者」が咀嚼してくれることにより、我々はわかりやすい「記事」を得て来た。それが紙メディアの価値だった。いくら鮮度が高くても、丸のままの魚は食えない。「料理」をしないと食えないということ。その「料理」をするのが、記者だったわけだ。

だから、紙メディアは「深度・密度」の部分で頑張って来たわけだ。ところが、今やその「記者」の地位が危うくなっている。

それは一言で言えば、

記者の器量や能力の不足

だ。紙メディアが一番の力としていた、「情報を咀嚼する」という機能を果たし切れなくなってしまったし、ネットに負けてしまったということだ。

非常にわかりやすい例で言えば、紙メディアの記者達は「科学」にも「経済」にも疎い。「医療」にも疎いし、「政治」にも疎い。「科学記者」と呼ばれる人達が、どれだけトンデモな記事を書くかは、科学な業界にいる人達は呆れるくらいわかっているだろう。同じように「経済」もよくわかっていない。今のバブル崩壊のことがちゃんとわかって記事の書ける記者なんていない。それが「日本経済新聞」の記者であっても、大差ない。いわゆる「専門分野」のことを、読者にわかりやすく咀嚼して記事にする能力に不足しているのだ。

これはある意味仕方がない。「記者」は記者であって、「専門分野」の専門家じゃない。「科学記者」と言っても、たいていは文系の人だし、理系の人であっても「記者」であってバリバリの研究者であることはありえない。記者達はせいぜい自分の専門分野のジェネラリストであってもスペシャリストではない。おまけに、記事は資本の原理で書かれる。

これが専門雑誌だと、もうちょっとマシだ。記者のかなりの人達は元々その分野の専門家だったりするからだ。とは言え、あくまでも「元々」であって、「現職」ではない。「かつて一線バリバリ」だった人も、時が経てばなまじバリバリだったがゆえに、素人よりもタチが悪くなるという例は、「会社の上司」あたりでよく見ているはずだ。

これが、「ネット上の人々」だと、そうではない。もちろん「経済のわかってない経済評論家」が経済記事を書いているなんていう例もあるけれど、そういったものは他の同分野の専門家の手によってdisられる。「嘘を嘘と見分ける」ことは、素人には難しいけれど、いろんな専門家の意見を見ればもうちょっと出来る。そう。ネットで書かれている解説は、しばしば

現職の一線バリバリ

の人達によって書かれているわけだ。もちろんそういった人達の中には、文章の下手くそな人もいれば、誤解をしている人もいる。でも、専門家達は大勢いる。よくわからなかったら「多数決」にしてしまってもいいくらいいるのだ。メディアの見解は1つに集約されていて、それゆえストレートにわかりやすくて良いのだが、「メディアの見解」と言えども少数の記者の理解を元にしたものに過ぎない。現役バリバリじゃない、あまり勉強もしていない、非専門家の書いたものに過ぎない。

とかゴチャゴチャ書くまでもなく、メディアのトンデモな理解解説の類につっこんでいるネット上の文書はいくらでもあることは、先刻御承知だろう。つまりはそういったことなのだ。元々紙メディアが得意としていた、「情報を咀嚼する」という機能はネットの方が勝ってしまったのだ。

今やネット上にいるのは、単なる「ネットヲタク」だけじゃないし、「IT専門家」だけじゃない。様々な分野の専門家がウヨウヨいるのだ。また、そういった人達は切磋琢磨している。ある人はアクセスという「報酬」を求め、またある人はアクセスなんかどうでもいいから「良いものを書きたい」というモチベーションで、書いているわけだ。

では、紙メディアは全てにおいて負けているかと言えば、今のところそうではない。その「マスコミにあってネットに足りない何か」の補完に必要なものはそこだ。

PS.

ダメだ。オ㍗ル…

【誰?】週刊ポスト「年金連続テロの犯行声明文を入手したよー\(^o^)/」

より、

年金連続テロ「平成の2・26 天誅の時代」
犯行声明文入手!

PS2.

なんであんな馬鹿自慢ブコメがあるかなぁ。「専門家には見えないものがある」って、そりゃ当然そうだけど、別に「ネットには専門家しかいない」なんて言ってないわけで。「専門家」の方はあるいは専門性の高い記者を用意する努力をすれば良いかも知れないけど、逆に「専門家には見えないものがある」の方の記者はどうしようもなく絶望的だと思うんだが。そういった意味でも「いろいろある」ネットの方がずっと有利でしょう。