社会保険の馬鹿

新入社員が入ったので、諸手続きをする。

基本は労働保険と社会保険。こういったのは自分でやっても大した手間ではないので、社労士とか頼むよりは自分でやった方がいい。ところがそうすると、いろいろ問題点を発見してしまう。

労働保険は悩む余地があまりない。掛金も知れているし、「万一」とか考えると効果も大きい。無条件で早めに入れるのがいい。困るのは健康保険の方だ。

健康保険は月単位だ。だから、1日(正確には給与計算期間の初日)に入社するという場合は何も悩むことはない。ところが、それ以外の日に入社しても掛金の日割計算はしてくれない。原理的には、国保の方は日割精算可能だから、そっちを調整すればいいじゃないかということになるのだが、この手続きは面倒臭い。しかも、保険や年金の掛金はそんなに小さくもないから、「とにかく入れとけ」というのも躊躇する。だから、入社日は「1日」にしておくのが、いろいろ楽でいい。そうでない日の入社は厄介になる。

さらに困るのは、

加入は入社後

ということになっていることだ。だから、最短であっても1日に入社するなら、1日に初めて申込が出来るわけだ。保険証が発行されるまでには数日かかるので、それまでは事実上保険がないのと同じだ。

もちろん、保険証がないだけで加入はされているわけだから、後から精算すれば返って来るのではあるけれど、それはそれで面倒臭い。医療機関だって困る。だから、本当は事前に手続きをしておいて、1日出社して来た時には渡せるようにしたいと思うのだけど、保険事務所がそれを許してくれない。

という実務の上の問題もさることながら、実は「保険証」には、

社員だということを第三者が認める事実上唯一の文書

という意味もあるのだ。保険証には本人の名前と共に会社の名前が書いてある。そして、それは「お上」が発行した文書だ。つまり、第三者が社員だということを認めているということになる。

「いや、そんなものなくてもいいだろう」というのは、運の良かった人だ。世の中には働かせておいてドロンする会社だって少なくない。その時に「まさに在籍した」ということを第三者が証明してくれるのは、保険証しかないのだ。会社が出す証明書なんて、基本的に「オレオレ」でしかないから、いつでもすっとぼけられる。「こんな人と労働契約結んでませんよ」と言ってしまえば、いくらでも搾取出来る。

だから保険証が発行されていれば、とりあえずその会社は「在籍」という点では信用していいということになる。逆に社会保険にも入らないような会社は、それだけでブラックと断定してもいい。

そんなわけで、「保険証」を手にするというのは、実務の上でも信用の上でも大事なことなのだ。それを「後から精算出来ますから」なんて理由で「入社後でないと申請出来ない」ということにしてしまう社会保険庁は、まるで加入者のことをわかってない。

まぁ入社直前でトンズラする奴もいて、それで面倒な手続きが発生するというリスクを避けるためだという説明も可能だけど、それは入社後に起きても同じこと。

社会保険の馬鹿” への10件のコメント

  1. 登記と登記簿抄本に依存する各種手続きにも近いものがあるように感じます。

  2. あー確かに。

    登記する時に電子公告用のURLを要求するのに、登記してないとco.jpは取れないんですよね。後から登記するのも面倒だし金かかるし。

  3. > 「まさに在籍した」ということを第三者が証明してくれる

    うちは雇用契約書作ってますねぇ.第三者じゃなくて二者間の証明ですけれど.

    そういや雇用契約書に給料を明記してあるんだけど,昇給したら再契約になるんだろうか?

    と,ここに書いてもしょうがいないですね.すみませんw

  4. > うちは雇用契約書作ってますねぇ.

    だからそれは「オレオレ」なんですよ。ちっこい会社なんて信用ないんだから。

  5. > ちっこい会社なんて信用ない
    あれ,読み違えてるかな,私?

    > 「こんな人と労働契約結んでませんよ」
    と会社側に言わせないことが目的なら,雇用契約書で十分なのでは?

    その「信用ないちっこい会社」に所属していることを,「お上」でない別の第三者に証明することが目的なら,保険証の記載事項は確かに良い証明書ですけどね.

    # しかしそれで,会社の信用度が上がるわけでは全然ない :-)

  6. こんにちはー。

    保険証は、新規とか再発行とかで発行されるまでの間、「社会保険加入証明書」「健康保険加入証明書」「資格取得証明書」というような証明書を発行した場合(病院によりますが)、「必ず出来次第保険証見せに持ってきてくださいね」で対応してくれる病院結構ありますよー。

    中身としては、

    ・被保険者の名前
    ・被保険者の住所
    ・被保険者の性別
    ・被保険者の生年月日(※被扶養者が必要な場合は被扶養者もそれぞれ併記)
    ・資格取得届に記入した記号・番号
    ・資格取得年月日
    を証明書に明記。

    —————–
    ●●(と氏名で書く)は、平成○年○月○日付けで当社社員として採用したため、健康保険等の資格取得にかかる(平成○年○月○日付けで・・・と書いても良い)諸手続を行ったことを証明いたします。
    ——————
    という一文を記載。

    会社の所在地(保険に届け出ている所在地)
    ・会社名
    ・代表者の役職
    ・代表者氏名
    を明記。

    代表印を押印。

    こんな感じで大丈夫です。ご参考まで。
    ではー。

  7. ピンバック: 今日の個人的なブレイク&おもしろ

  8. らぶちょさんのは参考にはなるんだけど、それこそが禁止的に面倒臭いということの傍証になっちゃうわけで。

    確定申告が苦にならない程度の人でないと、恩恵にあずかることは出来ませんね。

  9. 医療事務的にいうと、すでに保険の資格取得済みで、かつ月の半ばまでだったら場合は「忘れちゃった」で済ませることが可能な場合もあります。

    月末締め、翌月のレセプト提出に間に合うように保険証が提示されれば帳尻が合うので、忘れた日は全額払うことにして、次回保険証提示したときに、そのときの保険負担分を返金してもらうことが一般的のようです。

  10. 新入社員にとって、社会(雇用、年金、健康)保険は身分の証明と保険加入が絡んで重要ですよね。雇う側の、早く渡してあげたいという気持ちは貴重です。ただ、雇用契約と保険は別ものなのでは。(連動はしますが。)試用期間を設けて、雇用保険加入開始日(雇い入れ日)を、入社日に含めて、早めに手続きをすれば期間を縮めることは可能かもです。ぴったり、初日に渡したいのでしょうが日数は掛かりますねえ。住民票の写し等、履歴書、雇用契約書などを早めに提出してもらうことも大切でしょうか。

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