「ホワイトカラー」がオフィスソフトとメール以外に何のソフトが必要なんだ?

NBonlineより。

使うのはオフィスソフトとメールだけ?
低いホワイトカラーの労働生産性

この手の標題はたいてい背景に「それでいいのか?」というニュアンスがある。しかし、「ホワイトカラー」にそれ以外の何が必要なんだろう? 私は肯定的な答えを持たない。

私はほとんどの時間がPCの前だ。寝てる時、風呂や飯の時、打合せの時以外は、たいていPCの前にいる。動かしているソフトと言えば、

  • Evolution(メール)
  • Firefox(ブラウザ)
  • loqui(IRC)
  • PeraPeraPrv(twitter)
  • Liferea(RSSリーダ)

あたりが基本で、それ以外は、

  • Emacs
  • kterm等
  • オフィス類(OOo,Excel…)

とかだ。仕事が主に文章を書いたりプログラムを書いたりだから、ほとんどがエディタの上にいる。ブラウザと言ってもなんか凄いことをしてる訳でもなく、ほとんどは普通に調べもの。つまりまぁ「知的生産性の向上」みたいなことに使うツールなんてのはないから、「オフィスソフトとメール」の状態と大差ないと思う。少なくともやっていることの次元は同じだ。

「ホワイトカラー」というものが何物であるかということには、いろいろ考えがあるだろうけど、「知的生産者」という意味で見れば、定型的な業務の比率は低いはずだ。つまり、それをサポートするソフトウェアにはあまり用はない。旅費計算だの工数管理だのというようなことは、比率として低ければ低い程いいだろうし、それはそれらの「効率を上げる」よりは「しないで済む」方がいいと思う。だから、その辺のソフトが充実して「知的精算性」が向上することは、「知的生産」とはあまり関係がない。あくまでも「従」に過ぎない。

私が自分の仕事で知的生産だなぁと思う行為と言えば、

  • 仕事のメール
  • プログラムや文書といった書きもの
  • いろんな数字のこねくり回し

あたりなのだが、結局こいつらは(広義の)「オフィスソフトとメール」で足りてしまう。と言うか、

知的生産とは非定型なもの

のはずだから、結局のところこいつらだけで足りてしまうし、他のソフトウェアの出番はないわけだ。おまけに、そういった作業を支援するものとされたソフトウェア(たとえばアイディアプロセッサの類)の機能は、「オフィスソフトとメール」に統合されてしまっている。

というようなことを思うと、元の記事がいったい何を主張したいのか良くわからなくなって来る。「日本のホワイトカラーはITと馴染まない」とわざわざ書いているけど、別に日本でなくても「知的生産とは非定型なもの」だとするなら、これ以上何が必要だと言うのだろう。2ページ目あたりでしきりに「業務のデジタル化」と言っているけれど、その辺の話を読めば読むほど、

ホワイトカラーのブルーカラー化

を言っているようにしか見えないし、「ホワイトカラーはいろんなソフトを使いこなせ」というIT屋の手先みたいなことを言っているようにしか見えない。

でもね。「いろんなソフトを使いこなす」ってのは聞こえはいいんだけど、これは見方を変えると「いろんなソフトに使われている」ということと表裏なんだよ。「新しいソフト」は使い方を覚えなきゃいけないし、使いこなせなきゃいけない。また、ソフトウェアはわりと人間を型にハメようとする。そういった意味では、実は「いろんなソフト」があるってのは厄介なことでもある。だからこそオフィスソフトが高機能化して、「いろんなソフト」の機能を吸収して行くわけでもある。プログラマがEmacs(Eclipseも同じだ)ばかりを使いたがるのも同じ理由だ。

とか思うと、元記事の著者の持っている危機感というのは、

知的生産に対するニーズを理解していない結果

だとも思われる。本当に知的生産というのは、基本はあくまでも「紙と鉛筆」であって、いろんなツールはその延長に過ぎない。

思考のパターンが「親父IT評論家」臭いっつーか野口悠紀雄スメルだなーと思って読んでいたら「30代前半という私の世代」とか書いてるし。ぉぃぉぃ、私より若いんだから、もっと柔軟なこと書こうよ。思わず「勘弁してくれ」と叫びたくなる。

PS.

「システムの差」というつっこみが複数ルートからあったのだけど、私は確かに「システムの差」は思うのだけど、それが「ITの差」ではないと思う。「これで十分です」と言う気は更々ないし、「オフィスソフトとメール」も今後ずっと進化して行くだろうし、それを期待はしている。でも、いろんな補助手段(たとえばブラウザなんてそうだ)が出て来ても、仕事の中心は「オフィスソフトとメール」から大きく離れないだろう。

ファットなアプリケーションへの批判は常について回るのだけど、結局のところそういったものを好む人は多数派だと言ってもいいし、人の求めるものは「より便利」という方向だから、アーリーアダプタにとっての「いろいろなソフト」は、早晩「オフィスソフトとメール」に吸収されるのではないか、という意味もある。まぁそーゆーソフトを作り中だという話もあるんだが。

「ホワイトカラー」がオフィスソフトとメール以外に何のソフトが必要なんだ?” への2件のコメント

  1.  『知的生産は非定型』とは、名言です。わたしはずっと、まわりから冷やかされながらも、ロータスのドミノを使っています。R8になってからは、オフィスもいっしょになっているので、これだけで結構用事が済んでしまいます。ドキュメントを整理することも、あまりしていません。紙の書類は分類してファイルしていますが、それ以外は、すべてドミノに放り込んで、『あれれ、なんだっかな?』になると、思いつくまま検索して、取り出しています。
     ある事柄を整理してしまっていると、その事柄が違う連関で浮かび上がってくるとき、探しにくくなります。

  2. 『オフィスソフト』の定義にもよりますが、官公庁ではネットの活用に問題がある場合がありますね。

    以前は私の事務所がネットに接続していなかったので自前でパソコンごと持ち込み、情報を取得したり、意見交換用の匿名掲示板作ったり、別事務所の人と共有フォルダ作ったりしていたのですが、所属庁のIT促進により使用者権限の管理が始まり、私は使用権限を失いましたw

    まぁ、課長以上は一応持ってはいるのですが、関係省庁以外へのアクセスには事前申請が必要だったりします(苦笑)

    そう言う訳で、公務員等の『生産しないホワイトカラー』にとっては、情報の共有化や、意見交換の場の提供等のインターネットの活用はもう少し考えて欲しいですねぇ。

    とは言え、官公庁は管理のしやすさが至上命題なので、問題が発生するたびに規制が強化されるばかりで、生産性は低下する一方ですが(苦笑)

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