正しいことが正しいとは限らない

ニワンゴニュースより。

クリプトン社様からの着うた配信の経緯(2)に関して

案の定2ちゃんあたりでは「お前が言うな」の連続だ。

とは言え一連の騒動とドワンゴの対応を見ていると、「間違っている」とまでは言えない。単に「頭の悪い法務がコンプライアンスだけを考えて対応したな」というように見える。また、一連のドワンゴの対応は、「株主向けだなぁ」という気もする。つまりまぁ、彼等としては「法的には問題のないことを」「法的には正しい手続きに従って」やっただけだということだ。

楽曲が「ほぼパブリックドメイン」の状態がマズいということは、昨日書いた通り。そういったものを使って商売をするということは、コンプライアンス的に都合が悪い。そこで無理やりにでも何らかの権利者を設定して、JASRAC登録をした。ドワンゴ的にはそういったことに過ぎないわけだ。メディア絡みの世界、契約というのは結構いい加減なところがあり、口約束が全てで契約書すらない… というのが珍しくないので、そういったことに「手慣れた法務担当」がよしなにやったのだろう。「法務担当者」にしてみれば、ことさらに文句を言われるスジアイのものではなく、「業界慣習」に従いつつ、法的に正しい手続きをしただけだということ。それにゴチャゴチャ文句を言われるのは納得が行かんというのが、ドワンゴの声明なんだろう(*1)。

双方の「声明文」だけから事実関係はわからないが、契約というのは相手のあることだし、双方公開の場で発言出来るわけだから、少なくとも一連の事実関係は嘘捏造の類ではないだろうと思う。ドワンゴの言い分は、少なくとも「ドワンゴの解釈において」は正当なことを言っているのだろう。表現は稚拙だし、「言わなくてもいいこと」まで言っているという点でアレレなのだが、完全な事実歪曲ではないだろうと想像する。私がよく喩えで使う「茶筒の形」みたいなものだ。そういった意味では、少なくともドワンゴは「嘘に嘘を重ねて糊塗している」という類ではないだろう。彼等は「茶筒を横から見て矩形だと言っている」というだけだ。

じゃ、それは「正しいか」と言われると、少なくとも我々の目には正しいように見えない。多くのネット上の人達は、「茶筒を上から見て円形だと言っている」のだ。●と■では、まるっきり形が違う。同じ事実がありながら、まるっきり違うわけだ。でも、どちらも正しいと言えば正しい。世間は「●」だと言っていて、ドワンゴの主張する「■」とは違うというだけのこと。

一連の問題でドワンゴの対応を見ている限り、根本的な間違いは、そういった

視点

がコンシューマの側を向いてないということではないかと思う。いくら「法的に正しい」ことであっても、大衆の支持が得られないことは「世間的に正しい」わけではないということに、「法務担当」が気がついていないというところが痛々しい。

またそもそも、「ニコ動」の運営者は「株式会社ニワンゴ」であって、「株式会社ドワンゴ」ではない。だから、「株式会社ドワンゴ」が「ニコ動」のトップページからのリンクで「声明文」を出してしまっているという時点で、一連のことは「大人の事情」だけで動いていて、コンシューマを向いていないということが見て取れる。「大株主の言うことを聞け」という態度であり、またそれは「法的には問題ない」ことだからだ。

いくら子会社(調べてもわからなかったけど、多分ほぼ100%だろう)であっても、株主である親会社の私物ではない。確かに「経営」としてはそれで「正しい」のであるが、それぞれの会社にはそれぞれの顧客がいるわけで、そういったものも含めて会社と考えれば、そこまでは親会社の私物ではない — というのが、「世間の常識」のはずだ。

そういった「世間の常識とズレた対応」は、いくらコンプライアンス的に正しくても、世間的には正しいと認められない。そういった

感覚のズレ

が今回の問題を大きくしているように見えてならない。

PS.

*1 この件については、

たけくまメモ
クリプトン伊藤社長の「態度」

に詳しい。私も言われてみれば「出版契約」って締切の後に交換したような気がする。また、放送や新聞のシステム作ってた時には「契約書」というものを扱った覚えがない。

正しいことが正しいとは限らない” への1件のコメント

  1. 全くもって同感です。
    これまでのニワンゴは長い時間をかけて、時にはアメとムチを上手く使い分けながら、ユーザとの間にある種の信頼関係を築くことにまずまず成功していたと思います。
    でも、今回の声明はその危うい信頼関係を一気にぶち壊しにしかねない。ニコニコ動画という場とクリプトンとの問題は切り離して、自社のサイトのプレスリリースか何かで主張していれば大分マシだった気がするんですけどね…。

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