昨夜、上野ABABのダイソーで、治安の悪い青年に出くわしてしまった。
これは武勇伝であり、死体蹴りのエントリに過ぎない。
脚色はないつもりだが、エンタメの一種として読むのが良いと思う。
背景
弊社ではAmazonで「縞パン」を売っている。
元々の話は、id:temakiが
縞パンでモテてみようと試みる日記
なんてエントリで、
しかし、男子は知らんだろうが縞パンってうってない!
おらは下着とマンガには比較的MONEYをかける主義だので、ふんだんにレースをあしらった的な店にしかいかないから見かけないのか?とおもって今日しまむらとジャスコとヨーカドーみたけど、どこにもねえーーー!
いや、ないことはないんだけど、縞が一定の幅じゃなかったりなんか蛾の幼虫みたいな色だったりで、こう、グッとクルのがないんだよ!
もっと初音みくみたいなのくれよ!しっましまにしてくれよ!
なんてことを書いていて、「なるほど縞パンというものはあまり売ってないものなのか」ということが頭に留まっていた。
他方、弊社でちょっとコンシューマなものを開発しているので、コンシューマなものを売る技術も身につけるべきだと思っていた。何か適当な商材がないかと考えた時に、「縞パン」を売るということを思いついたというだけである。
実際、いわゆる「コスプレ用」でない「縞パン」というのは世間ではあまり売ってないようで、お陰様でそこそこ売れているのである。
商品が売れるようになると面白いもので、いろいろ売りたくなる。そこで「そういった感じのもの」からあまりかけ離れないものを売りたくなる。その中で、
こーゆーものを売ろうと思いついた。
プラスチックファイバーで作ったヘアエクステンションなので、ちょっと長い。この長い商品を入れる袋がないかなーと部下のあゆみちゃんとダイソーに出掛けたのである。
遭遇
うちの周囲の百均となると、「吉池の地下」「アメ横にあるセリア系」「マルイにあるセリア」「ABABのダイソー」、ちょっと離れて「南千住のダイソー」あたりによく行く。その中でも「ABABのダイソー」は近頃拡張されたので、100円ばかりじゃなくより高額なものを売っている。つまり、それくらい大きいのである。なので、「高々百均で揃うだろ」みたいなものを確実に手に入れたい時には重宝である。
広いダイソーであるが、「次の角を曲がれば梱包用のものを売っている」という角のところに、表題のおにーちゃんがいたのである。しかも、件のおにーちゃん、通路の真ん中にぼーっと立っている。
だいたいお店の通路でぼーっと立っている奴ってのは、軽く接触するように通れば気がついて道を空ける。とゆーか、そーゆープロトコルが存在しているとゆーフシがある。百均とか「ドンキホーテ」みたいな狭い店内は、「なんとなくそーゆーもの」だったりする。多少虫のいどころの悪い時でも、そーゆーことが起きると「すまんすまん」と思って道を空ける。少なくとも私がやられたらそう解釈する。いわゆる「ぶつかって来るおじさん」とは全く違うことである。
「ぶつかって来るおじさん」と言えば、人が通るところ、交通の隘路にぼーっと立っているのは、「パッシブ型ぶつかって来るおじさん」ではないかと思ってる。道を譲る気が全くないという点では同じである。下手に「どいて」と言うと「チッ」という目で見られたりするというのも、だいたい似ている。
まぁその時もいつもの調子で横をすり抜けようとした時に軽くぶつかった。そして、角を曲がって梱包用品の並んでいるところに着く。
ところが、曲がったあたりでおにーちゃんが「ちっ。ちっ。」とか舌を鳴らしながらこっちに来る。どうやら彼の気に障ったらしい。なかなか珍しい反応である。そこでいきなり
「お前、ぶつかって来ただろ」
とか言い始める。まぁ、嘘じゃないので否定はしない。こっちは冷静に(あくまでも冷静に)
「通路の真ん中につっ立っててぶつかったもないだろ」
と言い返す。そうすると、
「なに!」
と言いながら、右手を拡げたり閉じたりする。あー、これは殴ろうという意思があるとゆー意思表示(威嚇とも言う)だなと思って、とりあえず身構える。しょうがないので、こちらも身構えて
相手の目を睨みながら
会話をする。ついでに相手をいろいろ観察する。
見たところ、かわいいおにーちゃんである。多分、うちの倅より若い。そして、殺気があまりない。「イキリ」はあるのだが、怖さはない。そもそも、喧嘩慣れしてるかどうか以前に、喧嘩そのものをしたことがないんじゃないかと思う。そして、ただよう空気は
底辺
なのだ。
治安悪そうなおにーちゃんの世界には当然のように序列がある。直接の上下関係がない同志でも、「こいつはリーダーっぽい」「こいつは戦闘員っぽい」みたいなものがあり、またそういった空気がある。そういった中で彼のポジションは、どう見ても「底辺」なんだろうなって空気を感じた。素人のおっさん相手にはイキがれるのに、同種の人々の中では軽い。そういった気の毒な立場の奴だ。彼の容姿からは、「インターフェース誌」の連載マンガの「ミルノ」を連想してしまった。
そして、残念なことに彼の頭の中身は残念なようだ。しばらく適当に相手をしてたら
「ごめんなさいは?」
を繰り返し始めた。いや、そもそも、なんで俺がお前に「ごめんなさい」しなきゃいけないんだ? 合理的な説明がない。こっちがそんな態度だったら言い方変えるなり脅すなりすりゃいいと思うんだが、延々それである。
まぁそんなわけで、ダイソーの隅のあたりで、治安の悪いおにーちゃんとの対決となった。
対決
実のところ、こちらは喧嘩は素人である。てか、そんなもののプロだったら、いまごろこんなもの書いてない。
とは言え、ガキの頃は親父に散々殴られたし(親父の法事の時に坊さんに「何か思い出話でも」と言われた時に弟が「まさか死んでせいせいしたとは言えないですから」とか前置きしていた)、厨房の頃は殴りあいするハメになったこともあるので(理由はよく覚えてないが拳で殴りあってた)、多分今時の若者よりは「殴られる」「殴る」ということの意味はわかってるつもりだ。昔のガキはカジュアルに殴ったり殴られたりしたものだ。
たとえば、素人が至近距離から他人を殴る時、「顔パンチ」は隙だらけになる。身長差がそんなにあるわけではないから、顔を殴ろうと思うとふりかぶることになるし、そうなったら隙になる。別にこちらは反撃する気はない(手を出したら負けである)ので、「顔」のつもりが「頭」になってしまえば十分「勝ち」である(顔殴るつもりの拳が頭に当ったら突き指では済まないが、こちらはちょっと下向くだけでそうできる)。何しろこちらは「連れ」と一緒であるから、実際に手を出した時点で出した方の「負け」でしかない(通報したらそれまで)。
とは言え殴られるのは嫌なので、相手の目から目を逸らさない。人間の性質からして、何かアクションする時にはそのアクション向けの目線になる。喧嘩慣れしてる人であれば手だけで殴れるだろうが、素人はそうは行かない。となると、結果的にこちらは相手の目を見ることになる。別に睨むつもりはないんだが、多分相手にとっては睨まれてるような気になるだろう。いや、違うんだ、俺はてめーの目に注目してただけなんだよ。まぁ、野生動物でも目をじっと見られると殺気を感じるらしいので、野犬に襲われそうになったらそうするものなんだが(田舎の子供の知識)。気がつくと、彼の目は怯えているように見えた。まぁ、まさか「その辺のおっさん」を威嚇して睨みつけられるとは思ってなかっただろうからな。
また、こっちは「買い物」に来ているので、買い物カゴを持っている。当然ながら、相手との間に買い物カゴが来るようにする。てか、普通そうなる。
やったことがある人ならわかると思うが、買い物カゴを殴ると案外に痛い。また、買い物カゴなんて雑な射出形成品だから、こぶしで殴ったら多分怪我すると思う。つまり、こちらは
盾
を持っているも同然なのだ。彼はあくまでも素手なのだ。
そもそも、「素手」で誰かを殴って何とかするなんてのは、そうそう簡単なことじゃない。それこそ本気の「殺る気」で目でも狙わないと倒せないし、それが出来るのは喧嘩慣れしてる奴だろうし、そんな奴がいくら虫のいどころが悪くても「その辺のおっさん」相手に喧嘩売らないw 仮に一方的に殴るにしても、素手はあまりに無茶である。てか、殴りどころ次第では殴った手の方が痛い。
とゆーわけで、彼は必死に脅そうとするのであるが、持ち前の頭の悪さと、置かれた状況の悪さから、その脅しは効かない。とは言え、いくら効かないとは言え殴られでもしたら痛いので、こちらも変に刺激してもしょうがない。だから、あまりおちょくるようなことも言えず、冷静に(あくまでも冷静に)相手の言うことを「いなして」行くしかないのである。
彼の頭が残念なのはわかってしまっていたので、こちらが下手に論理的に言い負かせてしまったら逆上される。てか、場合によっちゃーそーゆー話自体が通じない(理解できない)だろう。だから、あまり言い負かせるような方向にやってもダメである。
そんなわけで、彼の
「ごめんなさいは?」
を延々聞くハメになってしまう。こちらも「ごめんなさい」してしまえば話は簡単かも知れないのだが、重要なのはここで
彼に成功体験を与えない
ことである。
百戦錬磨っぽい奴であれば、「ごめんなさい」して逃げてしまった方が低リスクであるし、それで特に害もない。ところが、彼はおそらく
零戦素人
なのである。イキるだけで喧嘩の類をしたことがないのだ。ましてや勝利体験なんぞない。それをここで「一勝」させると、それが成功体験となってしまう。そうすると、事ある毎にそういったことをやるようになるだろう(イキった素人がどんな行動に出るかはわかったことだ)。それは彼のためにならない… なんてことはどうでも良くて、未来に彼に遭遇した人が迷惑なのである。なので、彼に成功体験を与えるわけには行かない。
なので、こちらは彼の目を睨み(つもりはないんだが)つつ、「なんだこの怯えた目は」とか観察しつつ、「ごめんなさいは?」延々と聞くことになってしまった。
正直、あーゆー目は嫌いなんだよねー。元DQNだった… この話はやめておこう。彼も20年以上たってもうちょっとマシな牧師になってるだろうし。
そうしているうちに彼は
「早く謝れよ。俺10時には帰らなきゃいけないんだ」
とか泣き言を言い始めた。こっちは
「あ、そうご苦労だね」
としか言いようがないので、そう言った。そのうち、
「表に出ろ」
とか言い始めた。おや? 違うセリフも言えるんだな。とは言え、ここはABABの7階である。
どうやってこの「喧嘩状態」を維持しつつエスカレータで下りて… なんてことが出来るんだよ。そんなことやってみろ、途中退屈だから普通に世間話になってしまうじゃん。てか、俺はまだ買い物があるんだよ。精算もしなきゃいけないんだよ。だいたい、ついて行くのはこちらだから、こっちがエスカレータの上側になるんだぜ。
もうこの辺りで彼の「負け」は確定である。そこでダメ押しで、
「そう来るか。じゃ、その前に警察に電話するね」
とiPhone取り出したら、なんだかんだ言いながら消えて行った。めでたし、めでたし。
考察
個人的には絡まれ損である。
こちらは特に強い悪意があるわけでもなく、「いつものこと」をしたまでである。まぁそれが悪いんだと言われりゃそうだけど、だいたいいつもこちらもやられていることなので、私の中では「お互い様」のことでしかない。彼に成功体験を与えないとゆー狙いがなければ、別に「ごめんなさい」で構わないし、穏便な文脈であればそう言っただろう。「ごめんよ、ごめんよー」と言って通るのはよくあること。
まぁ結果として彼は絡み始めた。
彼の立場を考えると、
よくもそんなハイリスクな行為をしたな
と思う。まぁ、相手が私のように
善良で敬虔なるその辺のおっさん
だったから彼は何事もなかったと思うのだが、そうでなかったら彼は一方的に損なことになりかねない。人は見掛けによらないし、人はどんなつながりがあるかわからない。もしかしたら、私は
邪悪で危険なおっさん
だったかも知れないのだ。「返り撃ち」にあわなかったとゆー保証なぞない。てか、仮に彼が「こいつ、わざとその辺の奴にぶつかるヤバい奴」と認識していたのであれば、むしろそう思った方が安全だったと思う。「しょぼいおっさん」と思ってたら、怖い反社会勢力にお友達大勢かも知れないのだ。
我々がよく勘違いすることなのだが、「そこにいるショボそうなおっさん」が本当にショボいかどうかは、実はよくわからない。比較的身近にいる人ですら、どのような経歴とゆーか過去を持っているかはわからない。普段ぼーっとしてる「おっさん」が若い頃ヤバい人だったとか、普通はわからない。だいたい、「オレは昔はワルだったんだ」なんてことを自分語りする奴は、まぁ普通はいない。いることはいるが、そんなにはいない。ましてや実際そうであったなんてことは、言わない方が無難だし。
これは「高齢者」も同じで、「高齢者のグループが音楽会を開きました」というニュースを見れば、勝手に「おじーちゃんおばーちゃんが老人ホームでやっている奴」とか思ってしまうが、「ディープパープル(ABBAでもクラフトワークでもいいけど)」がロックコンサートをやっても、「高齢者のグループが音楽会を開きました」には違いないのだ。「子供」や「幼児」はそーゆー主語で語ってもそう大きな違いはないが、「おっさん」辺りになると、見えてない部分が大きいことは忘れてはならない。
という一般論もあるんだが、そもそも「金髪のおっさん」の時点で何か危険を感じろよ。リスク管理的には、そーゆーものには手を出さない方が間違いがない。まぁ、上述のように「ダークスーツのショボそうなおっさん」も油断ならないからうっかり手は出さん方がいいが。
もっとも
人は正義とゆー大義名分があれば何でも出来る
という面があるので、「ヤバい奴には対峙しなければならない」と思ったのかも知れない。人は「正義」に背中を押されると勇敢になる。
もっとも同じことは私にも言えるわけで、「こいつにチンピラ的成功体験を与えない」とゆー信念もまた「正義」に根差したものである。人は(ry
というわけで、「どっちもどっちだ」と解釈するなら、リスクが大きな行動を起こしてしまった時点で彼の負けは見えていたわけだ。
さらにマズかったのは、彼には
勝利条件
が設定されてなかった。つまり、「ゴールのない戦い」をしてしまった。彼がしつこく「ごめんなさいは?」と言っていたのを見ると、多分彼は謝罪が欲しかったのだろうと思う。とは言え、こちらは何も悪いことをしたと思ってないから、謝罪なぞする気がない。そこで謝罪が欲しければ、私がどれだけ悪いことをしたか納得させるための努力が必要である。その結果私が悪かったと思えば、あるいは謝罪したかも知れない。
たとえばここで、「てめーがぶつかったせいでポケモン獲れなかった」とか言われれば、それは大変悪いことなので、「ごめん」と言えるのである。その時彼は一生懸命スマホ見ていたようなので(だから「どけ」とも言えなかった)、あるいはそういう類の事情はあったかも知れないと想像がつく。
ところが、彼はそうしなかった。「お前が悪い」と納得させることなく、一方的に「お前が悪い」と言い立てるだけで、「知らんがな」と言われたら何も言えなくなってしまう。しょうがないから延々と「お前が悪い」とまくしたてるしかない。「勝利条件」が成立しないから、彼は引くことが出来なかった。
他方、こちらは勝利条件に満ちている。別に彼をやっつける必要性はないし、当初の目的である「梱包用品の売り場」には到達してしまっているので、何が起きても負けではない。強いて言えば、「ごめんなさい」を言えば負けなのであるが、それを言う理由がない。彼が逃げてしまえば「勝利」だし、彼がある程度以上脅してしまえば「勝利」だし(強要罪の成立)、彼が殴ってしまえば「勝利」だし(傷害暴行罪の成立)… 実に「楽」な勝負である。
たとえばここで彼が何らかの「落としどころ」を持っていれば、もしかしたらそこで双方納得することが出来たかも知れない(こちらも「未必の故意」的にぶつかっているのだから、彼に落としどころを探る余地はある)。「落としどころ」を持たずに戦う場合、「勝利」するしか終結させる方法はないので、彼にとってはハードルの高い戦いになってしまう。
そんなわけで、最後は彼が「逃げて」しまったので、このように私が「勝利宣言」をすることになってしまったw
またこれが、「表」でなかったことも彼の敗因である。いかに隅とは言え、煌々と照明のある人の多い店舗の、さらに連れと一緒にいる人が相手である。ここで勢いに任せて殴ろうもんなら、そこで試合終了である。通報されておしまいだ。いかに日本の警察が残念だと言っても、「白昼堂々」と暴力をやったら「10時に帰る」なんてことは「明日の10時」になってしまうだろう。もっとも後述するように、「表」だったら彼にとってはもっとハイリスクになっていたかも知れないが。
いろいろ考えると、彼の立場なら
「ぶつかんなゴラー」
と怒鳴ってそれだけにしておくのが、一番お得で間違いのないイキり方だっただろうし、リスクの最小化を目指すのであれば「通路の真ん中でつっ立ってる俺が悪かった」と素直に反省するのが一般市民として最良の行動だったんじゃないかと思う。
まぁ私としてはこーゆー「武勇伝」が書けただけオイシイことなんではあるが。
PS.
「昨日の話、ブログに書いたよ」と娘に話したら読んだ後に、「ダイソーでしょ。ああそこだったらそこらじゅうに防犯カメラあるから、何かあったら勝手に流出してネット民が特定しちゃうよ」とか言ってた。そう言えば、確かにダイソーにはそこらじゅうに防犯カメラがある。
よく考えたら、「表に出ろ」も防犯カメラの前まで行けば良かったわけで、そういった意味では「はいはい」と従っていたらもっと面白い展開があったのかも知れない。まぁ、とっさの時にそーゆー気の効いた行動は取れないので、普段からイメトレでもしておかないとダメだね。
PS2.
Quoraに面白い質問が。