うどん

この前合羽橋に行った時に麺棒を買って来たので、うどんを作ってみた。

「手打ちうどん」と書いてしまうと、なんだかたいそうなものに見える。職人が技術の粋を尽して作る… というイメージがないわけでもない。そりゃまぁお客に出すにはそういったものかも知れないが、家で作る分には、まるっきりたいそうなものじゃなく、手間だって知れたもの。

小麦粉(薄力粉)を用意する。スパゲティの乾麺が1人分100gが目安であることを考えると、1人分100gという気がするのだが、これは食べ方次第。うどんばかりで食ってしまえば、粉状態で200gでも食える。まぁその辺を基本に小麦粉の量を考える。とは言え、あまり少なくても多くても作りにくいので、家で作るには500〜1000gくらいにしておく。あまり少ないと伸ばすだけの量にならないし、あまり多いとこねるのが大変だ。

水の量は、粉1000に対して水400〜450くらい。いろんな情報をあたると、いろいろ細かい数字が書いてあるが、粉の具合やら季節やらこね方でいろいろになるので、あんまり厳密に考えてもしょうがない。この水に塩を溶かすのだが、これも私は「ヨーグルトについて来る匙に1杯」という大雑把な見当でやっている。この塩は味をつけるためではなく、こねてグルテンを出すためのものなのだが、仮に倍になっても「深刻な事態」にはならないので、適当だ。塩は水に溶かしておく。

粉を器に入れて塩水をちょっとづつ加えながら、よく混ぜる。一気に入れるとムラになりやすいので、ちょっとづつだ。私は5回以上に分けるが、あまり神経質になることもない。だいじなのは、「水分をまんべんなく行きわたらせる」ことだ。

水を全部入れても、かなり粉っぽいはずだ。とゆーか、「これでいいのか?」と心配になるくらい粉っぽい。つい「水不足」などという言葉が頭に浮かぶが、ここでぐっと我慢して手でこねる。「こねる」と言ってもそんなに気合を入れることもなく、「まとめる」ことを主眼にし、かつ「水分まんべんなく」と心掛けながらこねればいい。とは言え、それでもかなり粉っぽいので「水、水…」という気持ちになる。しかしそれは絶対に禁物だ。大丈夫。

適当にまとまったところで、ラップにくるむなり、ビニール袋に入れるなりして寝かせる。寝かせる時間もいろいろ書かれているが、私は半日くらい寝かせる。つまり、昼飯時くらいにこねて、晩飯に食うくらい。その日たまたま外食でもしてしまったら、次の日になる。この工程ではあまりいろんなことに神経質にならなくてもいい。注意すべきは、寝かせてる間に乾燥させないこと。乾燥すると表面に皮のようなものが出来て、これが邪魔になる。

寝かせてから小麦粉の塊を見ると、粉っぽさもなくなり、「うどんの生地」という感じになっている。これをこねる。

麺生地をこねる時の基本は「伸ばす」ことにある。何らかの形で伸ばす。讃岐うどんだと、生地を踏みつけて伸びたところを折り畳み… の繰り返しでやるのだが、この「踏む」というのは私はあまり好きでない。もちろんビニール袋に入れてやるのだが、どうも床にああいったものを置いていろいろやると、ゴミが入りそうで嫌なのだ。だから、大きなボールの中で手で押して伸ばし、それを半分に折って… を繰り返す。どっちが楽かと言えば、踏む方が断然楽なので、台所が綺麗な人は踏んだ方がいいかもだ。

生越家に「うどんを打つ」ということが入ったのは、親父がムチ打ちになった時だ。ムチ打ちで手が痺れるということで何かいい治療はないかと思っていたところに「うどんを打つとその作業がリハビリになる」という話があって、それで家でうどんを打つようになった。効果があったかどうかは知らないが。

こねたら延ばす。どれくらいこねればいいかというのは、「見当」でしかないのだが、「折り曲げて伸ばす」をやっていると、あるところで急に力がいるようになる。どうやらその頃に生地が完成しているように思われる。

延ばすには、平らな台を使うのだが、これは別に何でもいい。うちでは卓袱台がうどんを延ばす台だ。綺麗に拭いて、片栗粉を撒いておく。たいてい撒く粉は小麦粉と書かれているのだが、片栗粉はいつまでもさらさらしているし、茹でる時に湯を粘らせにくいので、私はこっちの方がいいと思う。

麺棒でゴロゴロと延ばして、3〜5mmくらいの厚さにする。この厚さも適当で、厚けりゃ太い麺になるし、薄けりゃ細い麺になる。だいたいに暑い季節には細い麺が好まれるのと、「茹でると麺は太くなる」ということを把握しつつ適当に。

延ばす時の注意は、「手早くする」ことと「なるべく方形にする」ことだ。「手早く」というのは、あまり時間をかけると、生地が乾燥してしまい、表面や縁が荒れてしまうからだ。ただ、あまり急いで延ばしても同じことになるので、その辺は何度かやって経験を積むしかない。

「なるべく方形に」というのは、うどんはこの延ばした生地を切って作るわけだから、丸いと麺の長さがマチマチになってしまうからだ。まぁ麺が短くても死ぬようなことはないので、これは「心掛ける」くらいで良いのではあるが。

延びたら包丁で生地を切る。そのためには、麺棒に生地を巻きつけて、それを垂らしながら蛇腹状に重ねて行く。その前に生地にはよく粉をつけておくことを忘れずに。忘れると切った麺がくっついてしまう。

切る幅が麺の太さだ。ここでうまく一定に並行に切らないと、太さがマチマチの麺になってしまう。また、厚さに対して幅が広いと「きしめん」みたいになってしまう。なるべく断面が正方形になるような感じで切る方が、綺麗な麺になる。切った麺は非常にくっつきやすいので、すぐ粉がまびれるようにしておく。ちょっと切ってはほぐして粉をまぶして… というようにするといい。

切ったら茹でる。茹でものの湯は多い程いい。一番デカい鍋を用意して、いっぱいに湯をわかす。茹でる時、あまり火勢が強いと麺が切れたり表面が荒れたりするので、程々の強さがいいのだが、麺を入れてから再沸騰するまでの時間は短い方がいいらしいので、強火に。だから、強火で茹で始め、沸騰したら弱める。「びっくり水」はあってもなくてもいい。とは言え、沸騰してどうしようもなくなった時のために用意はしておく。

茹でる時間は麺の太さによるので、一概には言えない。短いと粉っぽさが消えないし、長いと伸びる。私の見当のつけ方は、茹でている麺を噛み切ってみて、「断面の粉っぽさが消え、透明感が出たところ」ということにしている。ここまでに10分くらいかかる。実はうどんを茹でるのは、意外に時間がかかるものなのだ。「釜揚げ」にする時には、もうちょっと短めがいいらしい。

茹で上がったら流水で冷やす。私は麺の中の気泡を消すために、すぐに冷やさないで、ちょっと(1分くらい)火を止めて放置してから冷やすことにしているのだが、効果があるのかどうなのかはわからじ。それをするにしろしないにしろ、冷やし始めたら一気に冷やす方が良いようだ。

麺が出来たらあとはお好きなように。私はあれこれするのも面倒なんで、醤油やポン酢だけで食う。胡麻なんぞを振ってみるのもいい。