新卒の就職

マイミクの姪御さんがそれなりに良い学歴でありながら、とてもブラックな会社にとてもブラックな身分で雇用されているとのこと。ブラックと言えど上場企業ではあるのだけど。

私に言わせりゃ「同情の余地なしの自業自得」である。そんなブラック企業に就職しようとしないで、上場してない中小企業でも優良企業はいくらでもある。もちろん中小にもブラックは少なくないわけで(むしろ多いくらい)、中小を選んだところでブラック企業に捕まらないという保証はないが、選択肢を拡げれば優良企業に当たる可能性も拡がるはずである。そういった選択をしないで「上場ブラック企業」に就職なんてのは、同情の余地はない。

という趣旨のコメントをしたわけだが、実はこの論理はちょっとおかしいことに気がついた。と言うのも、誰も彼女に「働くということ」とか「優良企業とは何か」ということを教えて来なかったのではないかということを忘れているからだ。

「そんなもん自分で学ぶものであって習うものじゃない」という見方も正しいが、「学ぶ」というのは一種の才能である。ところが就職は誰もがしなければならない。となれば、「教える」必要があることでもある。

2ちゃんの就職板なり、mixiの就職系コミュなりを見ていれば、「なんと幼稚な見解」と思うことは少なくない。「やっぱり上場企業でしょ」みたいなのや、「××はブラック企業」みたいなのばかりだ。ところが、そこそこ働いていれば、「上場企業」がイコール「優良企業」ではないし、「ブラック企業」は本人との相性である部分も少なくないことがわかるはずだ。本来そういったことが前提知識としてあって、「どこに就職するか」という決定があるはずなのだが、そういったことはまるでないわけだ。そういった前提知識もなく、「上場企業」だの「ブラック企業」だのと言うことは、数学を知らないで物理を語るようなものだろう。

前にタバコについても同じことを書いたのだが、どうもそういった「大人の常識」を習う機会は少ない。たいていは、周囲の(多くは根拠の薄い)評判であったり、先輩(という名の素人)の教えだったりする。あるいは情報誌(という名の広告)からだったり。つまり、「正しい知識を基礎から教える」ということがないのだ。そのくせ、ある一定の年齢になれば「大人」として扱われる。

「社会的な知識」は社会に揉まれることによって学ぶものだという考えもある。もちろんそれは正しい。ところが、「新卒」となると、そういった揉まれるべき「社会」がない。学生のうちから学外活動に参加していれば、いわゆる「大人社会」を知る機会もあるが、アルバイトくらいしかしていなければ、「斜」から見た社会しか知らなかったりもする。昔なら、子供も学生も社会の一員であり、社会の一員としての教育を受けただろうが、今は「子供」「学生」「大人」は別々の社会なのだ。

そう考えると、件の姪御さんみたいな人を出さないためには、「ちゃんとした就職のための教育」というのは必要だろう。今時の就職問題の何割かは、それだけで解決するのではなかろうか。