「新卒で入社したホンダを3年で退職しました」

興味深いブログがあった。Twitterでちょっと言ったらバズったので、まとめておく。

この問題、随分と昔から言われている。実際これは既に私の時代(つまりバブル前就職)の頃から言われていた。

富士通で同期(私は富士通に勤めたことはないのだが、第二新卒での新人研修は富士通社員と一緒に受けた)の奴等のうち何割かは、技術者としての環境に不満を持って辞めていったようだ。他の同業の友人達(パソコン通信の友達とか)も、腕に自信のありそうな奴等ほど、メーカを辞めて行った。彼等の好むいわゆる「技術的仕事」が出来ず、「伝票書き」の日々だったからだ。

多分これはIT系とゆーかコの業界で顕著だったのだと思う。そもそもその頃からコンピュータは小型化していて、中小零細のベンチャーがお手軽に始められるようになっていたし、仕事もそれなりにあった。「伝票書き」が好きなら好きで、派遣業を始めることも出来た。だから、割と簡単に大企業をEXITすることが出来た。

他方、いわゆる製造業はそれはあまり簡単ではなかったし、仮にやったにしても大メーカの下請けになるしかなかった。薄給激務の世界であることは、そういった会社を管理していた人達は見て知っていただろうし、単なる下請けに技術的面白さは感じられないだろう。

しかし、時代は進んだ。

件のエントリにもあるし、実際に感じていることであるのだが、今や開発の「主体」が外注に移り始めた。大メーカは超上流だけを行い「伝票書き」だけをする。設備等は用意してあるが、実際にそれを使って研究や開発は外の会社がやる。それが製造業にまで広まっている。かつてコの業界で起きていたことが製造業でも起きる。それは何も不思議でもないし、おかしくもない。それが時代というものである。

コの業界から何10年か遅れて、製造業でそれが起きている。単にそれだけのことだ。それは「時代遅れ」の類の「遅れ」ではなくて、環境がそうなって来たというだけのこと。多分この流れは止まらないだろうし、それが商売というものである。

もちろんそうでないという会社も少なからずあるだろう。それはいろいろな事情、あるいは思想、その他諸々の個別の理由があってのことであって、それもコの業界のそれと大差なかろう。

ただ、そうなると「技術の主体」は外部に移る。「大メーカ」は看板だけのものとなり、技術者は「伝票書き」になってしまう。そうなれば「技術者」は楽しくない。だから辞めてかつての外注先に転職する。「技術」は流動化し、オープン化もするだろう。これもコの業界で起きていたことの再現に過ぎない。単にコの業界が早めに身軽になれたから早く起きたことであって、製造業もソフト化が進めば同じようなことになって行く。

それを以って、良いの悪いの言うことにはあまり意味はない。そういった時代の流れなのだ。期待や夢を持ってメーカに就職した人にとっては「残念だったね」ということになるが、それに気がついて嫌だと思えば転職すればいい。「プライベートでは一切勉強したくない」とか思う人にとっては都合良くなったかも知れない。そういった意味では、良いことだとも思う。

一部の例外を除けば、こういった流れは他の業界にも広まって行くだろう。それはより自由に仕事が選べるということであったり、より専門性を追求しやすくなって行くことでもあったりすることでもある。もちろん、そのためにはそれなりの苦労もセットになっているのは、これもまたコの業界が経験済みである。

まぁ既に老害を垂れ流すべき年齢になってしまっている身からすると、「そんな部署ばかりじゃないから、もうちょっと辛抱したら」と思わないでもない。大企業には大企業のメリットがあるからね。他方、「身近な人にモチベーション折られるような環境からは早く決別した方がいいよね」とも思う。どっちを選ぶかは、それぞれ考え方である。