「インターネット老人会」

しばしばネット上では、「インターネット老人会」なる話が展開される。

内容はいわゆる回顧なので微笑ましく見ているのだけど、話してる顔ぶれを見ていると、「それ最近の話だろ」とつっこみたくなることも多い。なんとゆーか、老人ぶってる。

何を持ってして「老人」を自称するかは文脈依存だ。小学生同士の会話なら、12歳にして「老人」を自称してもいいだろう。

「現代のネットコミュニティー」という文脈であれば、「2ちゃんねる」はもはや「老人」の話題だと言っても良いかも知れない。近頃の人に「オマエモナー」とか言っても「はぁ?」と言われるがオチだ。

ここで「インターネット」となると、何をモノサシにするべきか。「インターネット」と言ってもプロトコルのベース部分みたいな技術的な話になれば、産まれてこの方、大した変化はない。

とか考えると、社会的な部分、コミュニティー的な部分を見るべきだと思う。そこでは

商用化

の頃に、大きなギャップが存在すると思っている。

商用化それ自体は金にするかどうかだけなのであるが、ちょうどその事とその頃の以前と以後では、

  1. 商用化以前はインターネットは「参加」するものであった
    商用化以後は、金さえ払えばインターネットが使えるようになったし、単なる消費者という立場でいられた。しかし商用化以前は、金があってもコネの類がないとパケットすら通らなかったし、そういったネットワークを維持する一部となってもいたので、単なる消費者ではいられなかった
  2. 商用化以前はつまりはウェブ以前
    商用化以前だと、何でもかんでも独自のプロトコルかさもなくばメール。商用化以後だと、何でもかんでもHTTPが基本。
    商用化以前だと回線も細かったので、「近くのサイトから」みたいな不文律があったのだが、商用化以後だとそんなのお構いなし
  3. 商用化以前はインターネットは顕名
    インターネットが「参加」するものであったこともあって、ネット上のコミュニケーションでは顕名が基本だった。顕名であるだけではなく、所属も明らかであった。パソコン通信のような「半匿名」みたいなところから入ると、「得体の知れない胡散臭い奴が来た」みたいなことを言われたものだったし、パソコン通信のハンドルだと「変な名前の奴」とか言われていたし、ac.jp, co.jp, go.jp以外のドメインからのポストはブロックするみたいな議論もあった
  4. 商用化以前は法的にグレーだった
    商用化以前は電気通信事業者でもない者が第三者の通信を媒介することは、原則禁止であった。そのため、いろいろ屁理屈をつけて理論武装して、「これは問題ない行為なのだ」ということにしていた。法律が整備されたのは、ちょうどその頃
  5. 「ネットアイドル」の指すものがまるで違う
    商用化以前に「ネットアイドル」と呼ばれた人達は、「なんかネットで目立っていじられている人」だった。たとえば、「くさかべよういち」なる人とかがそうであった。他にもいろいろいたんだけど、今どうしてんだろ…

などのように、かなり大きな違いがある。特に3.は今のインターネットから見ると、180度反対だと言っても良いくらい違う。ネットで見掛ける「有名人」も、実名あるいはそれに近いところでやってる人は、「身バレをものとしない馬鹿」と言うよりは、3.の時代の習慣に過ぎない。私も商用化直前からインターネットにいるのと、それ以前からほぼ実名主義の「日経MIX」なるBBSにいたこともあって、実名にしているわけだ。

その時代の記憶があるから、「ネット上のトラブル」の時に「匿名」を理由とするのには違和感がある。その当時は、「所属付き実名」でガンガンやらかしていた。もちろんそれで職場に電凸する奴とかいたらしいが、それくらいでメゲたりしてもいなかった。

これ以後、「掲示板」なるものが出来たり「mixi」を始めとするSNSが出来たりということで、いろいろ舞台装置の違いはあっても、これらの違い程は大きくない。強いて言えば、mixi以後には女性が珍しいものではなくなった(と言うよりむしろ多いくらいだ)という変化があったのは大きいかも知れないけれど。

そんなわけで、「インターネットの文化」という観点だと、商用化以前にデビューした人達が「老人」であり、それ以前と以後では、それなりに大きな断絶があると思うのが妥当なんじゃないかなと思う。