「分散的にネット上に存在する数ある性風俗の一つへと成り下がる」

開沼博 闇の中の社会学 「あってはならぬもの」が漂白される時代に

第2回
「売春島」の花火の先にある未来

時々読んでいる連載。表題はこの記事の中にあるフレーズ

「客は何でもネットで探す。女のコの質、料金、なんでも出てくる」(同)。それによって、安易に旅先として明かせない秘境となる一方で、分散的にネット上に存在する数ある性風俗の一つへと成り下がることとなり、島の潜在顧客を絞ってしまった。

という話。

ここでは「性風俗産業」ということで書かれているのだけど、別に「性風俗産業」に限った話ではなくて、世の中のあらゆるビジネスはこうなっている。この辺は「楽天」で買いたいものを先に決めて検索していると気がつく。いつも言うことなのだけど、ネットでショップを検索する時には、「安く」「速く」ということをモノサシとして探すものだから、全ての店舗は「ネット上に存在する数ある」になってしまう。

ネットでない場合、お店や商品を探す時にどうするかと言えば、まずは「近く」とか「馴染み」とかで探していたはず。もちろん「安い」とかも重要だけど、同じ商品を持っている店舗をくまなく探して最安店を… なんてことは、学生や主婦ならいざ知らず、普通の社会人には難しい。休日の秋葉でそんなことやっている人もいるけど、そうやって手間かけて探しても、数1000円のパーツが数10円安いとかその程度の違いだったりするので、それならまとめて揃う店で割引きしてもらった方が良かったりする。実店舗の場合、「安く」は意味がないわけじゃないけど、そんなに重点を置くファクターではない。

ネットの場合、まとめて買うと送料が安くついたりするので、そういったまとめ方をすることはあっても、それにしても結局「安く」のモノサシは変わらない。チャリンコ系のショップにひっかかると面倒だから、「1円でも安く」はしない人が多いけど、出来るだけ安いところで。そして、早く手に入れたいとか、チャリンコ系を避けるためには、納期が短いとかってのも大事… ってことで探す。ある店でしか扱ってないものを買う時は、以前購入してどうだったとか、いわゆる「口コミ」的なものを気にすることはあるけど、どこでも手に入るものなら、「安く」「速く」だ。つまり、全ての店舗はそういったもので表現される、

ネット上に存在するデータ

に成り下がる。

これについてどうだこうだ言うことはしないし、言ったところで解決が思いつくわけでもないのだけど、「ネット上に存在するデータ」を越えた何かにならないことには、単なる優勝劣敗な世界になって終わる。

件の記事を見ていると、もしかしたら「物語り性」と言うものが鍵なのかなーとゆー気がしないでもない。まぁ、件の記事は「性風俗産業」なので、それゆえに「物語り性」に意味があるからそう思うのかも知れないけど。