教会御飯(8)オムライス

教会のランチ、私は毎回違うものを作ることにしています。

どうせ私の当番は月に一度しか来ないので、評判の良かったものを毎回作れば良さそうなものなんですが、どうも「同じものを作る」のがあまり好きではないので、いろいろ頭をひねってメニューを考えています。日々の御飯も同じで、材料同じでも同じものを作るのは嫌で、いろいろ工夫することにしています。

考えたメニューは、前の1週間いろいろ試して、味付けの調整やオペレーションの検討をしています。「何もそこまで」と言う人もいると思うのですが、これは自分へのチャレンジでもあるのです。だって、チャレンジしなかったら、退屈な当番でしかないですから。

つまりまぁ、教会の御飯って、私にとっては「hack」なんですね。いろいろな制約事項をクリアして、新しいメニューを作って。

と言うことで、今回は「オムライス」です。それも、「キノコのデミグラスソース」です。うちの近所の洋食屋にあった定番メニューで、それを思い出しつつ設計します。オムライスは結構手間がかかるので、hackのしがいがあります。

1.チキンライス

まず、チキンライスを作ることを考えます。これは、前回と同じ原理を使って、「混ぜ御飯」で作ります。

材料は、

  • 鶏(モモ)
  • タマネギ
  • ピーマン

が主材料で、トマトピューレを色着け&味着けに使います。

鶏は子供の親指くらいの大きさに切ります。まぁ、大きさに難しいことを考える必要はありません。大きいと食べにくいし、小さいと寂しいというだけ。私の意識の中では、オムライスはあまり立派なご馳走ではなくて、どちらかと言えば「B級」だと思っているので、チープな感じで小さ目に。とは言え、1人分に50gくらい使いますから、そんなにケチケチするわけでもありません。あくまでも「感じ」です。切ったら塩振っておきます。面倒臭い人はミンチでやっても良いのですが、どうもミンチってのは(検閲)ということで、鶏については避けてます。

このタマネギは調味料です。程々の大きさに刻みます。一人分は1/8個くらいです。

ピーマンはあくまでも彩り。ちょっと入っていれば良いです。いっぱい入れても良いんですが、風味が夏っぽくなってしまう気がするので、抑えました。やっぱり秋ですから。とは言え、緑っぽい色がないと寂しいですからね。たいていこの「ピーマン」はグリーンピースが使われていると思います。でも、グリーンピースって案外好き嫌いがあるのと、あまりおいしいのに会ったことがないので、「あくまでも彩り」と割り切って、ピーマンにしました。ピーマンの方が嫌いな人が少ないというのも、昔の子供には不思議なのですが。

これらを炒めます。炒める順番は、タマネギ→鶏→ピーマンですが、あまり厳密に考える必要はありません。タマネギが最初なのは、油ハネを減らすのと水気飛ばしですし、鶏は多少焦げた方が良いので早い段階で。ピーマンは炒める時に入れるという以上の意味がありません。とは言え、煮詰めるところでピーマン入れても、ピーマンの風味はしっかりして良いのですが、こちらはそれを期待しているわけではないので、あまりおいしくありません。一緒に炒めるのが良いです。

炒める時に塩をするわけですが、塩はなるべく後の方が水気が出なくて良いです。とは言え、肉には塩がしてないと困るので、切ったところで塩をするわけです。みんなが程々炒まったあたりで塩をします。

適当に水気が減ったら、トマトピューレを入れます。私がいつも使うのは、ハナマサで売っている、イタリア産の「トマトパサータ」です。国産のものより色が濃くて安いので、重宝してます。ちなみに、近所のハナマサでは198円です。

これをいい感じの色になるくらい入れます。鶏モモ1枚あたり170gくらい… ってあくまでも適当に。少ないと色が薄くなるくらいで、味がそんなに変わるわけではありません。

入れたら、炒めるように混ぜます。とゆーか、適当に水分を飛ばして炒めている感じにします。実はこれが一番のキモで、トマトピューレを炒めると、なぜだかとってもおいしいものになるのです。炒めないでいると、単なるトマト風味でしかないのですが、炒めると別のものになります。

実はこれを発見したのは、「鶏モモ余ってるし食わなきゃいけないから、とりあえず焼くかな」と思って塩胡椒で焼いた時に、「そのままでも寂しいからトマトでも入れるかぁ」と思って余っていたトマトピューレを入れて炒めた時です。なんだか知らないんですが、単にトマトを炒めただけなのに、単にトマトを炒めただけとは思えないような、そんなおいしいものになっていました。トマトのフルーティーさをなくすと、こんなにソースになるのだなぁと感心しました。なので、「チキンライスの元」としてではなくて、「鶏のトマト焼き」といった応用もおいしいです。

でまぁ、そうやって具を作ります。これは炊いた御飯と混ぜてチキンライスです。御飯は教会で炊くので、この「チキンライスの元」を運びます。

この「チキンライスの元」は鶏皮とか入っているので、冷えると固まります。そのままでは混ぜにくいですし、御飯も冷たくなってしまうので、混ぜる前に温めます。

2.キノコのデミグラスソース

次は「キノコのデミグラスソース」です。これも難しいものじゃなくて、

  • タマネギ
  • キノコ

を炒めて塩味をつけたものに、市販のデミグラスソース

これを入れるだけです。たいして難しいことはしません。

まず、タマネギを刻みます。刻むと言っても、細かくする必要はなく、薄切りするだけです。別にミジンにしても味が変わるわけではないですが、それ程長時間煮つめるわけでもないので、形が崩れることはありません。となると、薄切りの方が見た目が綺麗ですね。中途半端なミジンだと、よけいに舌に当たっておいしくないです。

キノコは例によって「ブナシメジ」なんですが、これは適当に石突きの部分を除きます。あまりケチってギリギリにするよりは、多少切り過ぎたかなくらいにした方がバラしやすいですね。いっぱい切るとドキドキしてしまうケチん坊には、「分割して統治せよ」という言葉を授けます。試しに舞茸もちょっと入れてみたのですが、気がつく人が少なかったので、あってもなくても同じようです。ブナシメジの方が安いので、こっちを主にしちゃって良いと思います。椎茸は前回も書いてますが、嫌いな人も少なくないので、避けるのが無難でしょう。

炒める時は、まずタマネギを炒め、キノコを入れます。逆にするとキノコが油を吸ってしまって、油がなくなってしまいます。油は、こちらはオリーブ油を使いました。チキンライスの方は何でもいいですが、例によって重い油を使うと仕上りが重くなってしまうので、チキンライスには軽い油を使います。キノコの方はあくまでもソースですから、多少重くても平気なので、風味重視で良いかと思います。バターでも良いでしょう。

適当に火が通ったら赤ワインを入れます。これに凄い意味があるわけではないですが、酸味が加わることと、水分の補給になります。不思議なことに、ワインを入れると、キノコから水が出て来ます。

適当に塩味をつけたら、デミグラスソースを入れます。「適当に塩味」と言っても慣れない人はピンと来ないと思いますが、まずは

このまま食ったらおいしいけど、御飯のおかずには物足りないな

くらいの塩気にして下さい。デミグラスソース自体は入れても塩分が増えるものではないので、他の調味料みたいに「入れるのを見越して塩気を加減する」という必要はないのですが、結局塩気が変わらなくても味の感じは変わるので、デミグラスソースを入れてから微調整しましょう。最終的には「ソース」なので、多少塩辛くなっても構いませんし、その方がアクセントになって良いと思いますが、デミグラスソースは甘さの強いソースなので、あまり塩を多くしない方が良いと思います。あくまでもバランスです。どうしてもと思ったら、ウスターソースとか足す方が良いかも知れません。トマト系のもの、ピューレとかケチャップとかを使うレシピをよく見掛けるのですが、チキンライスと味がかぶってしまうので、あまり嬉しくないと思います。

後は味を見ながら、汁気を見ながら、混ぜたりします。水気が足りないなーと思ったら、水を追加して構いません。別にスープストックとかである必要はありません。当然入れ過ぎると、味が薄まります。それを塩で補うと、ケチ臭いソースになりますので、程々に。

3.玉子

オムライスを作る時のオペレーション上の最大の問題は、

玉子の扱い

です。教会のようなところで、オムライスを量産するのは、これが一番のハードルです。今回はこのブレークスルーがあったので、メニューに採用出来ました。

普通の「お子様オムライス」のように、薄焼き玉子で包むのは、オペレーション的に不可能です。限られた時間内で必要量の薄焼き玉子を作るなんてのは、それが商売の人でそれなりの用意のあるところなら可能かも知れませんが、

貧弱な腕貧弱な設備には無理

です。少人数であれば、玉子液を作っておいて、テフロンや銅のフライパンで… ってことがあるいは可能かも知れませんが、1つ作るのにかかる時間とか計ってみて、「人数分可能かどうか」という検討は事前にしておく必要があります。

では、あらかじめ作っておけば良いかと言えば、それ自体があまり容易でない上に、玉子を焼いてから時間が経過するということなので、いろいろな問題を孕みます(乾くし油回るし…)。そもそも、おいしくありません。諦めましょう。

そこで私が考えたのは、もっと高級オムライスにあるような「オムレツが乗っているオムライス」です。

実はオムレツを作るのは、薄焼き玉子を作るよりももっと難しいです。硬いオムレツなら、まぁちょっと練習すれば出来ますが、「おいしいオムレツ」は半熟でないといけません。それをそれなりに形を作って載せるのは、もっと不可能オペレーションになります。さらにこれを人数分とか、どこのレストランの修行かということになります。まぁ不可能だと思って良いです。

ところがここで、「どうせオムライスに載ってる玉子」という割り切りをしてしまうと、一気に話が簡単になります。「オムライスに載っている玉子」ということであれば、ある意味

形はどうでもいい

からです。形がどうであるかよりも、玉子が載っていることが重要だし、それが半熟であれば望外の幸せですね。そこで、

半熟のスクランブルエッグ

を作ることにします。これなら、適当な量をお玉ですくって載せれば済むので、オペレーション的にも簡単になります。しかも、半熟。

では、どうやってその都合の良いスクランブルエッグを作るかと言えば、

雪平に玉子液を入れて、湯煎する

ことです。湯煎はちょっと時間はかかりますが、温度が上がり過ぎないので、ガチガチのスクランブルエッグにはなりにくいのです。直火で半熟にするよりは、もうちょっと簡単です。

玉子液は溶き玉子に塩でちょっと味つけしたものにします。いろいろやりたい人はやっても構いませんが、手間が増えるだけです。牛乳をちょっと加えたりすると、もうちょっと簡単になるかも知れません。固くなるのがちょっとだけ遅らせられます。でも、固くなってしまうと牛乳が遊離してしまって残念ですし、やってみるとわかりますが、多分その必要はありません。

これを雪平(でなくてもいいんだけど)に入れて湯煎しながら、ひたすらかき混ぜます。当然鍋のところから固まって来るので、それをこそげ落とすような感じで混ぜましょう。しばらくやっていると、急に固まり始めるので、よく混ぜていい感じになったところでやめます。

これを放置すると、余熱でどんどん固くなってしまいますので、出来たらすぐチキンライスの上に載せて行きます。この余熱の部分は見越しておくと良いと思います。どうせ多少生っぽくても、御飯にしみこむだけです。いろいろこだわりたい人は、適当な器で形成すると良いかも知れません。ソース用のまん丸ではないお玉を使うと、「らしい」感じが簡単に出来るかも知れません。

この玉子の上に、2.のキノコソースを載せたら完成です。

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