「挑む力 世界一を獲った富士通の流儀」

著者の一人、田島さんより戴く。

私も「同期」に富士通社員は大勢いるし、富士通と関わりは深かったので、いろいろ期待して読んだのだけど、ちょっと微妙。60点くらいかな。

献本してもらって「60点」はちょっと酷いかなと思うのだけど、理由は後述。

内容は、最近の富士通の気の効いたプロジェクト8つについてのお話。主には関係者のインタビューを元にしたもの。まぁ大雑把に言えば、

富士通のプチプロジェクトX

だと思えば、だいたい当ってる。

今まで何度か書いているのだけど、「プロジェクトX」的な文書は、もっと書かれるべきだし、そうやって頑張った技術者はもっと称えられるべきだ。

「プロジェクトX」をもっと称えよ!

そういった意味では、このような本が出ることは大変喜ばしい。また、かつて「池田俊雄」の伝記とか、わくわくしながら読んだこと、また自分が富士通に関わりが深かったこともあって、「古き良き富士通」を思いつつ期待をして読んだ。

まぁそういった意味では、悪い本ではない。1冊に8本も話が出ているので、ある意味

お得

でもある。取り上げられているプロジェクトもかなり網羅的で結構泥臭い話が出て来るので、今時のウェブサービスとかしか知らないエンジニアは、ぜひ読んでおくといい。

「プチプロジェクトX」なので、かなりブラックな話も出て来る。とゆーより、最後の方に書いてあるのだが、

泥臭い

話が多い。泥臭く、ブラックで、ある意味浪花節。または昭和の臭い。そういったのを嫌いな人、プロジェクトXが嫌いな人には受けつけないものがあるだろう。また、そのブラック臭がする世界を、美化して書いている部分もあるので、嫌いな人は嫌いだろう。でも、その「泥臭さ」はロジックの世界に生きるエンジニアにこそ知っておいて欲しい。スマートな「なんとかスタートアップ」みたいな、そういったものとある意味対局な世界。いや、そういったものが通じない「気合い一発」みたいなことも往々にして必要なんだとゆーことを嫌悪しつつ読み、いつの間にか

おっしゃー!

とゆー気分になってしまうのが、たまにこの手の本を読むことの価値だ。「プロジェクトの方法論」的なものに疲れてしまった時には、いい薬になると思う。

と言うことで、悪い本ではないのだけど、非常に残念なことがある。それは、A5 200ページ強の本に話題が8つもあるものだから、

個々の話が薄い

のだ。時間がなくても一気に読めるのは良いとしても、「そこもっとkwsk」と思うことが多々ある。読む限り取材が甘いわけではないのだが、なぜだかこの分量にしてしまったものだから、読み応えがない。いい話が並んでいるし、それぞれから得るものがあるのだけど、何せ分量が少ないものだから、感動も少ない。何ももっと盛り上げろとか言うつもりはないのだけど、あまりにも残念である。まぁそれも「忙しい人」にとってはちょうどいいかも知れないので、あくまでも「私が読むものとして」は60点だということなのだけど。

そういった「残念感」とこの本の意義を考えると、こういった話は

シリーズもの

として出してくれると良いなぁと思う。プロジェクトの数だけドラマはあるし、その「ドラマ」は成功であっても失敗であっても学ぶものがある。オヤジ達には「いい思い出」になるだろうし、若者には励みになる。おそらくは企業にとってはいいPRにもなる。そういったものが出てくれるといいなぁとゆーことを思わせてくれる。